(7)サポートキャラ(前編)
本日二話投稿一話目です。
二話目は21時に投稿されます。
何日か掛けて拠点の周辺を散策した結果、近場に限ってだが周辺の状況が分かって来た。
東側・・・ヘミール湖有:薬草が豊富、香草類若干有、毒草類はまれ、他
西側・・・岩場あり:香草類若干あり、毒草類そこそこ有、他
南側・・・森あり、ヘミール川有(下流):薬草類有、香草類豊富、他
北側・・・森あり、ヘミール川有(上流):薬草類有、香草類有、毒草類若干あり、他
やはり場所によって分布している草の種類が全く違っていた。
ヘミール湖は、異世界の不思議パワーで湖だけで存在しているわけではなく、きちんと川と繋がっている。
北側が川の上流になっていた。
こうしてみると水が豊富な所が薬草が多く、そうでない所が毒草類が多いという感じを受けた。
毒草類で新たに作った物は、毒薬、麻痺薬の二種類だ。
毒草、麻痺草を薬草と同じようにすりつぶして水と調合を行って作成する。
調査した範囲は、片道で三時間以内の場所に限っている。
遠出の準備をしていない上に、今のところ特に必要性を感じなかったためだ。
更に特記すべきところは、西側から北側にかけて、若干モンスターとの遭遇率が上がっていた。
上がったと言っても、多くて一日に数度戦闘になると言った感じだったが。
それでも戦闘の結果か、ルフのレベルが上がっていた。
名前:ルフ
種族:フェンリル(子)
職業:子狼LV5(4up)
体力 :1050(+550)
魔力 :90(+70)
力 :42(+22)
素早さ:30(+15)
器用 :10(+5)
知力 :18(+8)
精神力:13(+5)
運 :10
スキル:噛みつきLV4(2up)、威圧LV2(1up)、俊敏LV2(1up)、気配察知LV3(2up)
固有スキル:鋭敏な鼻
レベルが四つ上がっただけで、かなり成長していた。
どう考えてもハジメよりもステータスの伸びがいい。
落ち込みそうになったが、作成師は大器晩成型なんだと無理やり納得することにした。
ちなみに戦闘は、ハジメはほとんど手を出せずに終わっていた。
出て来たのが単体のゴブリンとオイリオブタだけだったので、手を出すまでもなかったのだ。
わざとハジメ自身が出て経験にしようかとも考えてはいたのだが、どの場合も何かしらの作業をしていて先にルフが終わらせてしまったのだ。
勿論ハジメが言い置けば、ルフは手を出さなかっただろうが、そこまでする必要性も感じなかったという事もある。
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ルフも順調にレベルが上がっていたが、ハジメのレベルも上がっていた。
四方向の探索をしている間に、目標のLV10に到達した。
名前:ハジメ
種族:ヒューマン(人間)
職業:作成師LV10(5up)
体力 :770(+300)
魔力 :1280(+500)
力 :14(+7)
素早さ:16(+8)
器用 :43(+20)
知力 :25(+11)
精神力:20(+3)
運 :9
スキル:調合LV6(2up)、鑑定LV5(2up)、俊敏LV2(1up)、短剣術LV1、風魔法LV1、空き×2(New!)
相変わらず器用の伸びが素晴らしい。
魔力は四ケタ台を超えていた。
ただしこれだけでは、魔力の伸びがいいのか、体力の伸びが悪いのかは分からない。
ルフと比べれば明らかに体力の伸びが悪いのだが、作成師と言う職業のせいとも言えるので何ともいない。
スキルも調合と鑑定は順調に伸びている。
最初は職業レベルに合わせて、調合も上がっていくかと考えていたのだが、そう言うわけでもないらしい。
鑑定の分も職業レベルの経験値として入っているのだろうか。
この辺に関しては、掲示板でも検証されていたが、よくわからないということになっていた。
同じ職業でも個人個人でステータスが伸びが全く変わっているとか。
ステータスは普段の行動でも伸びるとあったので、そのせいだという意見もあるのだが、それだけでは説明できないというの主流の意見だった。
ついでにスキルの空き枠が二つになっている。
LV5、LV10と来たので、次はLV15だろうと読みがされているが、いまのところLV15になっているプレイヤーはいないらしい。
少なくとも掲示板上では報告は挙がっていなかった。
これで次のスキルを設定することが出来る。
LV10でさらに空き枠が増えることは分かっていたので、既に何をセットするかは決めてある。
だが、その前に重要なことを決める作業が待っている。
そう、新しいサポートキャラを決める必要があるのだ。
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「さて、どーするか」
そもそも最初のサポートキャラは、システムに頼ってしまってハジメ自身では何も決定していない。
サポートキャラを決める際は、ゲームのキャラメイキングのように細かく指定できるようになっている。
ただし、ステータスとスキルの二つは、プレイヤーが決めることはできない。
サポートキャラの作成を終えて了承する段階では、この二つは見えていないので、良いステータスのキャラが出てくるまで選び続けることもできないようになっている。
もっとも作成の段階で、よほどのことをしない限りステータスの低いキャラが出来ることは無いとのことだった。
例えば、アンデットなのに聖属性を持たせたりと言った場合には、そういったことになるらしい。
ただし、それが駄目という事ではなく、言い方は悪いが、育てるのに苦労すると言った意味だと掲示板では解釈されていた。
参考までに、ルフの初期ステータスは、平均値よりもかなり高めだという事も分かっている。
これは別にルフだけではなく、<幸運のチケット>をサポートキャラに使ったプレイヤーは似たり寄ったりのステータスだった。
箱庭世界が始まってから半月以上が経っているが、既にかなりの分析が進んでいるのだ。
ちなみに、プレイヤーの初期ステータスも全員が同じ値からスタートしていることは初日に判明していた。
当然ながら、その後の行動でステータスは変わっているので、その後の変化は千差万別になっている。
掲示板の住人達の名称であるキャラメイキングの画面で、ハジメは悩んでいた。
サポートキャラが、今後の生活に影響を当たるのだから当然なのだが、それ以上に選択肢が多すぎてなかなか決められないのだ。
「まずは、方向性をどうするか、か・・・」
生産に力を入れて生産特化になるか、あるいは戦闘もこなせるようになるか。
両方こなすように目指すには、作成師の説明で戦闘が苦手とあるのが引っかかるが、この状況なので冒険もしてみたいのだ。
だとすれば、生産で引きこもっているわけにはいかない。
冒険をしたいという願望がある時点で、生産特化になるのは却下だ。
当然それに合わせて、サポートキャラを考えなければならないわけで・・・と、グダグダと考えている間に時間はどんどん消費されていく。
「あー、もういいや。どうせ、グダグダ考えていても一緒だ」
しばらく考えて、悩むのに疲れてしまった。
結局どの道を選んだとしても、一度や二度は失敗することもあるだろう。
ハジメは結局、バランス型で行くことに決めた。
となるとサポートキャラもある程度方向が決まってくる。
一番目のルフが、特殊な鼻を持っている以外は、完全に戦闘型なので今度は生産型を選ぶことにした。
なぜ方向性が決めるのに時間をかけたかと言うと、種族が戦闘型か生産型かで分かれているからだ。
というわけで、生産型と決めたので、その中から種族を選ぶことにした。
生産型をクリックすると、ずらずらと種族が出て来た。
「・・・・・・もう勘弁してください」
机に突っ伏したハジメに気付いたルフが近づいてきて、ぶら下がっている手をペロペロと舐めてくれた。
もう既に気力を失ったハジメだが、一番下にある選択肢がある事に気付いた。
『ハジメさんに、おすすめの生産型種族はこれ!!』
まさしく今のハジメにぴったりの選択肢なのだが、それをクリックするのは一瞬ためらった。
何故なら掲示板情報では、「地雷だわ」「全然おすすめじゃない!」「どういう基準で出してるんだ?」等々、散々な評価だったからだ。
勿論、「そんなに悪くはなかった」「確かに良いとは言えないが、そこまで言うほどのものでもないだろ」という意見もあるのだが、それはごく一部だ。
ただ、一度クリックしただけでは、決定されないことも分かっていたので、取りあえず駄目だったら戻ろうと考えて、念のため確認してみる。
結果出て来たのが次の種族だった。
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名前:なし
種族:牛獣人(女性型・18歳)
職業:農婦(駆け出し)
ステータス、スキル:未決定
種族説明:牛型の獣人。ただし、他の獣人と比べてヒューマンとの差異はほどんどない。
ヒューマンと比べて力が強いが、反面動きは鈍い。
農夫(農婦)説明:農産物全般の生産者。極めると生産品に様々なボーナスが付く。
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情報としてはこれしか出ていないので、掲示板での情報通りに、使えるのか使えないのかは分からない。
ただし、一つだけ引っかかる情報があった。
「・・・ファーマーって職業一覧に出てたっけ?」
記憶にある限りでは、職業にも掲示板にも情報が出てなかった気がする。
気がするだけで、実際には見逃している可能性も十分にあるのだが。
種族はともかくとして、職業はハジメにとっては十分能力を発揮できる物だ。
何しろ、薬草やら香草類を栽培できる可能性があるのだ。
拠点では、畑を用意することもできるので、もしファーマーがレア職業だったら、今のハジメにとっては、最高のサポートキャラとなり得る。
ステータスとスキルに関しては、職業と種族から自動で割り振られるようになっているので、プレイヤー側が決定することはできない。
できれば戻って職業一覧を確認してみたいが、残念ながら戻ると二度と同じ組み合わせは出てこないと掲示板には書かれていた。
「うーん・・・もうこれでいいか」
ただの勘だが、牛獣人とファーマーと言うのも組み合わせとしては悪くない気がする。
もう悩むのもつかれてしまったというのもある。
また一からあれだけたくさんある選択肢から選ぶよりも、今の組み合わせの方がましな気がするのだ。
「よし、決定!」
結局、おすすめのもので決定することにした。
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「初めまして。これからどうぞよろしくお願いいたします」
「あ、ああ・・・よろしく」
折角挨拶してもらったのに、返事がおざなりになってしまった。
おすすめの状態で、決定をしてからすぐにサポートキャラが現れた。
現れたのが女性だったのはいい。
そもそも情報として出ていたので問題はない。
問題があったとすれば、ハジメの側だ。
現れたサポートキャラは、今までハジメがあったことが無いような美女(美少女?)だったのだ。
黒い髪に白い肌。ハッキリした目鼻立ちに、小ぶりな唇。
スタイルも抜群、というよりも、彼女が持つ女性の象徴は、はっきりと自己主張していた。
確実に、ハジメが今まで会った女性の中では一番の大きさだった。
「あ、あの・・・あまり見られると、流石に恥ずかしいです」
うわーい、ばれてーら、と思ったが、時既に遅し。
彼女は、恥ずかしがるように、両腕で胸の部分を隠してしまった。
「い・・・・・・いや。すまん」
「い、いえ。いいんです。・・・・・・一応言っておきますが、胸が大きいのは牛獣人の特徴です」
唐突な告白に、ハジメは思わず目が点になった。
「・・・・・・へ? そうなの?」
「はい」
「へー。そうなのか」
どうでもいい情報と言えば、どうでもいい情報だったが、微妙だった空気を換えるには、ちょうどいい役割を果たしてくれた。
「あれ? 大きいのが特徴って、男は?」
「牛獣人に男性は存在しません」
「えっ!? そうなの?」
これまた意外な情報に、ハジメは驚いた。
いや、こちらこと驚きの情報だ。
「はい。私達から生まれてくる子は、すべて女の子です。ですので私達が子を成すには、どうしても他種族の男性と交わる必要が出てきます」
またしても微妙な話になってきたが、ここで話を切ると余計おかしな空気になると考えて、普通を装って話を続けた。
普通に興味があると言うのもある。
「他種族の男と出来る子供が牛獣人になるのか?」
「いいえ。牛獣人の子供が出来るのは、ヒューマンと交わった時だけです」
「それはまた極端だな。よく種として存続できるもんだ」
ハジメの感想に、目の前の女性はクスリと笑った。
「幸いにして、私達はヒューマンの男性を惹きつける部分を持っているようですから」
何のことかは言葉にしていなかったが、つい先ほど自分も惹きつけられたばかりなので、何とも言えない表情になるハジメであった。
「おすすめキャラ」の考察については、後ほどの話で行っています。




