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(1)オープニング

よろしくお願いします。

最初は三話分まとめて投稿しています。

 仕事を終えて帰宅。

 少し遅めの夕飯を食べた後は、シャワーを浴びる。

 本来なら風呂にゆっくり入りたいのだが、独り身の上で毎日入るのはお湯が勿体ないので我慢している。

 とかいいつつ風呂好きの身としては、気にせず毎日入るときもあるので、気分次第とも言える。

 シャワーから上がったら、後はパソコンに向かってネットサーフィン。

 これが伊藤いとう はじめの一日の最後の作業だった。

 いつものように、小説投稿サイトでお気に入りの小説が更新されていないかチェックした。

「おっ。あれが更新されてる」

 当然更新されている小説は、しっかりとチェックをする。

 その後は、ランキングを見ながら何か面白そうな作品が無いかをチェックした。

「・・・ん? なんだこれ?」

 そんなことをしながらふと気になったのは、広告バナーだ。

 ゲームの広告だと思うのだが、よくわからない。

 何せ表示されているのが、「新しい人生はじめてみませんか?」という一文だけだった。

 こんなので広告になるのか、と思わず心の中で突っ込んでみたが、実際にハジメ自身が惹かれているので、それなりに効果があるのかもしれない。

 気になる広告バナーはいつもクリックすることにしているので、ポチッとクリックしてみた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 開いてきたのは今時珍しく、ほとんどイラストのないゲーム紹介ページ。

 戦士や魔法使いと言った定番の職業が書かれていて、先ほどのバナーと同じ「新しい人生はじめてみませんか」という文言の下に「スタート」というボタンがあった。

 そのボタンをクリックすると出て来たのが、「本当に今の人生を止めますか?」というメッセージ。

「何だこりゃ?」

 ゲームを新しく始めるのに、今の人生を止めるというのはどういう事だろう、と一瞬だけ考える。

 考えても運営の意図などわかるはずもないので、すぐに「Yes」をクリックする。

 すると再び「本当に今の人生を止めますか?」と言うメッセージが出てくる。

 バグったかと思いもう一度「Yes」を押すと、再び同じメッセージが出力された。

「なんだ。バグかよ」

 イラストを使わない硬派(?)なメーカーかと思っていたのだが、単に予算が無くてイラストが書けなかったのかという考えがよぎった。

 三度目の正直、ともう一度「Yes」をクリックした。

「お? 進んだか?」

 先程とは違うメッセージが出て来た。

 続いて出て来たのは、よくある性格診断テストのような文言。

 ポチポチとそれを進めていく。

 進めてみたはいいが、その性格診断テストが全く終わる気配がない。

 十分ほど経過したが、さっぱり終わる気配がなく、一瞬ブラウザを閉じてしまおうかと思うが、せっかくここまで進めたのだからと続けることにした。

 さらに十分ほど続けるが終わる気配がない。ここまで来るともはや意地になっていた。

 絶対に終わりを見てやると、既にゲームの事はそっちのけ。性格診断テストの結果を見ることが目的になっていた。

 そもそも今やっているのが、性格診断テストかどうかも分からないのだが。

 

 マウスと格闘すること三十分。

 ようやく出て来たメッセージは、「貴方の適職は<作成師クリエイター>です」という一文だった。

「なんだそりゃ?」

 この三十分は何だったんだ、と脱力したが、嘆いてみても結果は変わらない。

 溜息を吐きつつ「次へ」をクリックすると、出て来たのは「新しい人生を始めますか?」という新しいメッセージ。

 当然のように「Yes」をクリックして、次の結果が出てくるかと思った瞬間。

 モニターから強い光が出て来た。

「いや、ちょっと待て。ここで故障かよ。てか、モニターから光が出てくる故障なんてあるのか?」

 混乱する頭で何とかモニターを見ようとするが、光は既に直視できない程の強さになっていた。

 思わず視線をそらすが、光はさらに強くなっていき十畳の部屋が光で満たされることになった。

「なんだよこれ?」

 とても目を開けていられずに、既に目は閉じていた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そろそろ光が収まったかと、恐る恐る目を開けて見ると、見慣れた部屋とは違う場所にいた。

「マジかよ・・・!?」

 直前まで普通に自分の部屋にいたのに、全く違う場所にいることに愕然とした。

 しばらく呆然としていたが、いつまでも混乱していてもしょうがないと、今いる場所を確認することにした。

 

 十五畳ほどの広さの部屋に、ちょっとしたスペースにキッチンが一つ。

 一人用の質素なベットが一つと、机の上にパソコンらしきものが乗っていた。

 その空間にあるのはそれだけで、他には何もない。

 ちなみにパソコンらしきもの(・・・・・)と考えたのは、モニターとキーボードとマウスくらいしかなかったからだ。

 モニターと一体型の物かと考えたのだが、そもそも電源らしきものが見当たらない。

 取りあえずパソコンもどきは放置して、部屋の中を見ることにした。

 といっても先程確認した以上の物はなかった。

 キッチンに行ってみたが、水はきちんと出て来た。

 コンロも一般的な物が付いている。火も点けることが出来た。

 最初見た時には気づかなかったが、キッチンのすぐそばに扉があったので開けてみると、トイレがあった。

 ちゃんとした水洗トイレだった。トイレットペーパーも備え付けの物があった。

 それを確認してホッとしたハジメは、ふとあることに気付いた。

「・・・窓がない?」

 窓どころか、外に出られる扉さえもない。

 唯一ある扉は、トイレに行くための物だ。

 残念ながらトイレから先に行けるような扉さえもなかった。

 窓がないのに、部屋が明るく感じるが、なぜ明るいのかはさっぱりわからない。

 ふとコンロがあったことを思い出して、ガスがどこから来ているのか確認したが、見事にチューブの先が切れていた。

 それにもかかわらず、きっちり火をつけることが出来た。

「どうなってるんだよ?」

 思わず頭を抱えてしまったが、すぐに立ち直った。

 こんな状況になっているにもかかわらず、なぜか意外に落ち着いている自分にホッとした。

 自分一人しかいないのに、パニックにならなくてよかったと安堵したのだ。

 

 結局一通り部屋の中を見渡したが、特にこの状況を改善できる物は見つからなかった。

 あと残されているのは、あえて無視していたパソコンもどきである。

 椅子に腰かけて動かそうと思ったが、最初に確認したように電源が見つからない。

「・・・どうやって動かすんだ?」

 そんなことを呟いてみるが、動く気配がない。

 もしやマウスにスイッチが隠されているのかと、触っていなかったマウスを持ちあげてみると、モニターから起動した音が響いた。

 単にマウスを動かすかキーボードのキーを押せばよかったらしい。

「・・・傍から見れば、何に使うかわからない道具を持たされた猿みたいだったんだろうな」

 若干へこみつつモニターを確認した。

 そこには「ようこそ<箱庭>の世界へ」というメッセージが出ていた。

 マウスをクリックすると、別の画面が表示されてオープニングもどきの説明が始まった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ようやく終わったオープニングを確認したハジメは、今見た物を整理することにした。

 ハジメが今いる場所は、<箱庭>と呼ばれる世界の一部らしい。

 今のままだと外に出ることも出来ないので、プレイヤーとして様々なクエストを進めていくしかない。

 受けられるクエストは、人によって千差万別。

 オープニングが終わった後で、出来るようになるキャラメイキングの職業によって、受けられるクエストは変わる。

 <箱庭>の世界は、剣と魔法の世界で、ハジメがいた現代兵器の類は規制がかかっているそうだ。

 なぜこんな説明があるのかと言うと、職業の中には当然ながら鍛冶師などの兵器を作れる物もあるからということだった。

 同じように世界観を壊すような物は、作れない。

 だったらハジメのいる部屋にあるコンロはどうなんだと思わなくもなかったが、せっかく慣れた物があるのに文句を付けるつもりもないので、それ以上の突っ込みは止めておいた。

 後々解放されるエリアで、他のプレイヤーとの交流もできる。

 勿論解放するためには、条件を満たさないといけないのだが。

 最終的には、それぞれ用意されたクエストを達成すると<箱庭>の世界とは、別の世界に行ける。

 最後の選択を逃せば、元の世界には戻れないらしい。

 

 オープニングを確認したハジメは、一息つくように溜息を吐いた。

 最後の選択が、モニター上に出ていた。

 メッセージは、「新しい人生を始めますか?」という物だった。

 選択肢は、「Yes or No」のどちらか。

 これが、オープニングでも出ていた最後の選択なのだろう。

 いいことなのか悪いことなのか、タイマーのような物は無いので、ゆっくり考える時間があるらしい。

 だが、ハジメは悩むことなく「Yes」の方を選択した。

 元の世界に全く戻りたくないと言えば嘘になるが、それでもこのチャンスは逃したくなかった。

 彼女なり奥さんなりがいれば、当然選択は違っていたのだろうが、残念ながらそんな者はいない。

 近しいものと言えば、親兄弟の血のつながった家族くらいだ。

 両親には申し訳ないと思わなくもなかったが、それでも新しい人生を歩んでみたかった。

 

 ハジメが「Yes」をクリックすると、モニターには「これが最後のチャンスです。本当によろしいですか?」と出て来た。

 最後に若干震えた気がしたが、それでもしっかりと「Yes」をクリックしたところで、ピロリンという効果音が流れた。

 あちらの世界とお別れするには随分と軽い音だなと苦笑する。

 モニターを見ると、「オープニングをクリアしました。納品箱と受領箱を設置しました」と表示されていた。

 部屋の中を見ると、机のわきに木で出来た箱が二つ並んでいた。

 手前側にそれぞれ<納品箱>と<受領箱>と記載されている。

 メッセージの納品箱と受領箱がリンクになっていたので、クリックしてみると説明文が出て来た。

 

 <納品箱>:クエスト用の商品を納品する際に使用する箱

 <受領箱>:クエスト完了時の報酬アイテムを受け取る箱

 

 どちらもクエストに関係する物なので、必須アイテムと言える。

 なぜ最初から設置していなかったと思ったが、戻ることを決断した場合には、見せないようになっていたのかもしれない。

 まあ中には何も入っていないので、特に見せても問題は無かったと思わなくもなかったが。

 メッセージを見ると「次へ」というリンクがあったので、クリックする。

 続いて出て来たのが「ステータスを確認しよう」というタイトルだった。

「おお、ステータスあったのか」

 ようやくゲームらしくなってきたと思うハジメであった。

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