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パイオツワールドに転生したぜ! ジーハー!

「ジーハー!」


 現実では自他八朗じたはちろうを名乗る俺はトラクターに轢かれ、VRMMO・パイオツワールドへ転生した。

 目の前の空間は白く、どうやら雲の上にいるようだな。

 全身から溢れ出るチートパワーを感じながら俺は興奮した。

 最近出来た、無口彼女から勧められて読んでるウェブ小説だと死んでから転生すればスゲー力を持って、その世界でNAISEIとかハーレムとかチートパワーで無双とか、とにかく俺TUEEEEEEEEEEE! で世界の王になれる、正に俺のような男に相応しい世界で活躍できるようパワーを与えられる設定だった。


「……」


 グッ……と拳を握り締める今の俺にはそれがある。

 俺は今の気分を叫んでやった。


「VRMMO最高! 風呂に入る必要も無いし、セックルしても妊娠の心配も無いし、色んな女の子のオッパイ揉みまくれるぜ! 何せここには法律が無いからな! ジーハー!」


 ヒャッハー! な感じとたまに冷静になる情熱と冷静を使い分ける、最強中二病少年の童貞キングは彼女が出来てデートに誘ったらトラクターに轢かれて転生しちまった。

 普通トラクターじゃなくてトラックだろ……と思いつつ、その彼女に悪い事したなオッパイ揉めなくて……と激しくオッパイへの未練を残して俺は異世界へ転生しちまった。

 スゲー、チートパワーを神だか誰かに与えられてな。

 いや、むしろ俺が初めから持ってた力だな。

 基本的に俺は女の子に百回フラれてるが、彼女出来たわけだし!

 その彼女は無口でオッパイでかくて勉強が出来て俺が話しかけると消しゴムを貸してくれるいい奴だ。

 俺はその子に手紙でデートの日付と時間帯を指定してたんだが、今思うと結構強引だな俺は。

 まぁ、チートだから仕方ない。

 さて、このVRMMOを俺様のチートパワーでジーハー! してやるぜ!


「さーて、俺の初期ステータスってのを見てみるか……ん?」


 身体のどこを探してもメニューウィンドゥは無く、ゲームの感覚がしねぇ……。

 あれ? これVRMMOじゃなくね?

 あの無口彼女に買わされたゲームだ。

 でも、俺はゲームは詳しくないからよくわからん。

 なわけで、異世界パイオツワールドの冒険が始まるぜ!


「ジーハー!」


「のほほ! うるさい男だのぅ。アイス美味い」


「アイスを持った幼女か……」


「ワシは神じゃ。ナローじゃ! アイス美味い」


 どうやら神のお出ましだ。

 白い髪の幼女でオーバーオールを着てる。

 そして片手にバニラアイスを持ってペロペロしてやがる。

 神なら感謝しなきゃいけねーのかな?

 目の前の白髪の幼女はぶつぶつと何か言ってやがる。

 それよりも、この世界がVRMMOじゃない事に気づいちまった俺は流石に混乱し出した。


「この世界はゲームじゃないならどうしたらいいんだナロー? 普通に活躍できるのか?」


「のほほ! 問題ない。このパイオツワールドを元にしたゲームがVRMMOのパイオツワールドじゃ。この異世界こそが真のパイオツワールドなのじゃぞ」


「そうか。ならいい。俺を転生させてくれて感謝するぜナロー」


「感謝せい。そしてアイスショップを作るのじゃ!」


「すぐには無理だろ。この世界はまだ知らない事が多すぎるからな。材料とか人間とかの面もあるからアイスショップは後だ」


「……中々冷静じゃの。もっと単純かと思ったわい」


「俺は冷静と情熱の間なのさ」


 とりあえずナローはチートパワーをくれた。

 だから俺はこの世界に慣れたらアイスショップを作る約束をした。

 にしてもこの神、ただの子供にしか見えないぜ。

 鼻たらしてるし。


「鼻たれてるぞ」


「すまんのぅ」


 とりあえずハンカチで拭いてやる。

 口の周りのアイスも拭き取る。

 手のかかる神だぜまったく。

 でも、チートなら最強になって超サイコーだぜ!

 ジーハー!


「じゃあ早くパイオツワールドに降りようぜ。ここ空だろ?」


「ナローは神だから世界を見て回らねばならんので忙しいのだ。一人で行くがいい」


「マジかよ。お前本当は暇なんだろ?」


「のほほ! 暇ではない。ワシはアイスを食べるのに忙しいのだ!」


「忙しくねーだろ! アホかオメー!」


「なぬ! 神を侮辱するかジーハー!」


「お前がアホだからだナロー!」


 俺とナローはほっぺをツネりあう。

 こいつのパワーは強いな。

 腐っても神か。

 幼女と戦っても仕方ねーから俺から手を引こう。


「じゃあ、俺のハーレムワールドを築いてからアイスショップを作ってやるぜ。じゃーな」


 地上に降りようと雲の下の世界を見る俺にナローは抱きついてきた。

 けっこう良い感触じゃねーかナロー。

 まずはこいつをハーレム要員の一人にすっか?


「待て、待てジーハー。この世界はハーレムを築いている王は多い。だからこそお前はこの世界を安定させる王になるのだ」


「えー……いいじゃねーかよ。何で俺がハーレムしちゃいけねーの?」


「お前のチートパワーでハーレム作ったら世界は大混乱だぞ? わかるだろ?」


「わからねぇな。たとえこのパイオツワールドがゲームじゃなくても、俺のハーレムは邪魔出来ねぇよ。何せチートパワーがあんなら俺がルールだからな!」


「……どうやらこの男を転生させたのは問題だったのではないか? ワシの意思ではないといえ……」


「何だ? 何か言ったか?」


「のほほ! 言ったわい。これから言ってやるわい!」


 ペロリとアイスを舐め、このナローはおかしな事を言い出した。

 俺にとって最悪な事を!


「セックルしたら、チートパワー無しだからね!」


「はっ!? しるかボケ!」


 驚愕する俺はそのまま地上に落ちそうになるが踏みとどまる。

 このままじゃヤバイ!

 だって童貞卒業してーし!


「一回セックルしたらチートパワーは剥奪! じゃーのー!」


 ズズズ……とナローは上空に小さな城を生み出しそこに帰るらしい。

 スー……とナローは上昇し出した。


「のほほ! ワシはナローキャッスルに帰る。じゃーのー!」


「待てナロー!」


 俺はずっと俺を見つめながら上昇するナローを見る。


「上、上!」


「運営? ワシは運営ではないぞ! 幼女乳神・ナローじゃ!」


「運営? 何の事だ? だから上! 上!」


「だから運営ではな……ほげぇ!」


 ナローは自分の城に頭をぶつけて半泣きになってる。

 つか、気付けよ上に城があるのを。

 自分で生み出したんだし。

 そして俺は最後に怒られた。


「お前! セックルしたらBANしてやるからな! じゃーのー!」


「BAN? バンバン撃ちたかったが、パイオツだけで我慢してやるぜ。じゃーなー!」


 城に入り、どこかに消えるナローと俺は別れた。

 そのナローは自分の城でアイスをペロペロしながらこんな事を言ってたようだ。


「のほほ! 妹は絶対にこの世界を変えるようだ。ワシは神だから見届けるのみだがのぅ」


 そんな事を言ってたのは知らず、俺は地上に降り立った。


「ここが……パイオツワールド」


 そこは異世界ファンタジーでよく見る荒野だった。

 今から俺は勇者だ。

 パイオツチートだ。

 すると、一枚の手紙が落ちてきた。


「全部平仮名じゃねーか。ナロー……サンキュ」


 俺はナローが書いた、このパイオツワールドの簡単な説明書きを読んだ。

 今の俺は完全なチートじゃないらしい。

 パイオツワールドにいる英雄、豪傑、女王などを倒し、パイオツを揉んで、揉んで、揉みまくる事で新しいパワーを得る。

 そして真の敵はただの魔王じゃないみてーだな。

 このパイオツワールド特有の魔王だ。

 その名も乳魔王にゅうまおう

 いいねぇ。

 それはもう、素晴らしい乳なんだろうよ。

 俄然ヤル気が出てきたね。

 勿論、違うヤル気も出ちまうがそれはまだ抑えないとならん。

 あの神はセックルしたらチートパワーが消えるって言ってたからな。

 完全なパイオツチートになるまで我慢だぜ!

 そして俺は俺の為に澄み渡る青空に向けて叫んだ。


「パイオツチートに俺はなる! ジーハー!」



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