第六話
初心者と言えば薬草採取、そう思っていた時期が俺にも有りました……
どうやら専門家でもない人間に採取依頼するより、専門家の護衛でもする方が良いらしい。よって最初から討伐依頼だ。
と言っても報酬はしょっぱくて、コボルト十匹五十ゴールドとかお小遣い稼ぎにくらいにしかならない気がする。
上位の依頼はドラゴン捜索、討伐のセットで百万ゴールドとかだった。一ゴールド百円だとして一億円か。差があり過ぎて怖いわ。何で受諾下限が無いのか不思議だ。
ともかく、依頼のある魔物で知っているのがコボルト位なので、しょっぱくても諦める。無いよりはマシだ。
という訳で、十匹討伐してはギルド、討伐してはギルドのマラソンで、1レベアップと千七十二ゴールド、一回5ポイントのギルドポイントを20ポイント手に入れた。
・名前 ヒラヤス ショウ
・種族 ヒト
・レベル 9 (5/100)
・HP 1872/1872
・MP 936/936
・力 112 (6×19) ■□□□□
・体力 93 (5×19) □□□□□
・器用 74 (4×19) ■□□□□
・俊敏 93 (5×19) ■□□□□
・魔力 37 (2×19) □□□□□
レベル1の時から約十九倍、この調子なら本気でチートだ。といっても身体の感覚は前とほとんど同じで、むしろ周りがどんどんスローモーションになっていっている。あ、指先が今までよりもイメージ通りに動かせるってのはあるな。今なら木彫でもキャラクターのフィギュアとか作れそうだ。
スキルは狩に便利な魔物を探せるスキルを探して、結局生命探知のスキルを3レベルまで取った。1レベルで半径百メートル、3レベルで三百メートルの生き物を大体判別、探知出来るいいスキルだ。
金は合計で千三百八十ゴールドになった。これなら金の心配をしなくても良くなりそうだ。金の余裕は心の余裕って感じだ。ゆとりってやつだ。
……問題はもらえる経験値が1になった事と、普通の一日分の仕事量を超えているというこれ(コボルトマラソン)が昼前に終わったせいでまたいらん注目を集めている事位だ。随分遠巻きだが。
宿で昼御飯が食べれるかわからないし、街を見て回りたいのでギルドを出る。初日はテンプレイベントがあったのに、受付の可愛い娘と仲良くなるとか、最高クラスの冒険者と会ったりとか、仲間が増えたりは無かった。
と言うより、イベントはおろか業務以外の会話すら無かった。こんなのぜったいおかしいよ!……そう言えば忘れてたけど、エルフとかドワーフとか獣人とかも見てないな。
ブツブツと口から思考を漏らしつつ、美味しそうな肉料理屋に入る。十ゴールドのステーキは何の肉かわからなかったが、そこそこ美味かった。
午後はぶらぶらと街を散策しつつ、今後の事を考える。
取り敢えず生活基盤は確保できたよな。一日ニ、三時間労働で生活出来るとか、ホワイト過ぎて嬉しい。異世界はブラックなんかじゃ無かったよ。
巧だが、ぶっちゃけ探さなくてもいいんじゃないだろうか?あいつだってチート持ってるわけだし、わざわざ探して一緒に行動する必要が無い気がする。
まあ会えたらいいなぁ程度で考えておこう。そうしよう。そしたらば、これからどうしようか。
そして俺は、この世界の事を考え……ようとして、ほとんど何も知らない事に気がつく。
生きるにしても、楽しむにしても、まずは知ることが大切じゃ無いだろうか。偉い人も情報は大事って言ってた気がするし。
かと言って一般常識なんかをその辺の人に尋ねるとか、色々とめんどくさかったり、危なかったりするんじゃないだろうか。主に精神のHPとかが。
都合のいいチュートリアルやらなんやらも無いし、半日調べて次の事が分かった~なんて事、小説じゃあるまいし起きはしないだろう。
会話と文字は大丈夫だし、何かこう図書館的な施設とか探すべきだろうか。この街に有ったらいいなぁ。
無かったら有る街に行くべきだろうか。レベルとか先に上げた方がいいよなぁ。この街の周辺の魔物は弱くて、だんだんと強くなるとかならまだ何とかなるけど、いきなりポーンと強くなりそうだしな。レベルと成長的に考えて。
あと旅の準備とかもいるかな。食料とか水とかテントとか……やっぱり金が必要かな。差し当たって一万ゴールド位を目標に頑張りますか。