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第四十二話

次の日、朝から街を見て回る。昨日の狩りの報酬を貰いにギルドに行くのもアリかと思ったけど、ヒトの国の王都のギルドでの事を思い出し、あそこだけで報酬を貰うことにしようと思った。


シエルと二人で街を歩く。この街はなんというか、江戸時代の日本にファンタジーを足した感じで、東の果てではないけどこういうのもあるんだなーと考えさせられた。獣人の国はみんなこうなんだろうか? まあ、そんな町並みと多種多様で様々なレベルのケモノを楽しみながら見て回るだけで、あっという間に時間が流れていった。


昼頃になって、俺はその辺の店で買った串や肉料理を、シエルは俺が生活魔法で調理した料理を食べた。魔力でおいしさが変わる可能性を考慮して、レベルが上がった事がばれないように抑えてやったが、昇の料理は凄くおいしいと満足していても、何かに気が付いた様子は無かったので成功だろう。


見ていて飽きない光景を見ながら散歩していると、人だかりが出来ている所を見つけた。何か面白いものでもあるのかと一番外側にいる人に声をかけてみる。


「どうしたんですか? 何か催し物?」

「ん? ああ、催し物というか、聞こえる感じ喧嘩って話だぞ。ここからじゃよく見えないし、正確ではないかもしれんがな」

「そうですか、ありがとうございます」


喧嘩か。こうも人だかりが出来るほど派手だったり目を引くものなんだろうか。まあ興味が無いので立ち去ろうとすると、中心辺りの会話に聞き覚えのある声が聞こえた。


「ああ? だからチート貰ってる俺たちゃ選ばれた者なんだから、何やっても許されるだろうが!」

「じゃあやっぱり悪人ですね?」

「人の話を聞かねぇガキだな! 糞が、現実ってもんを教えてやるよ!」


武器でも抜いたのか、人ごみが騒がしくなる。というかあの声はとつか少年だよな? 会話から察するに相手もトリッパーか。


またあいつか、とか聞こえてきたが、とつか少年は俺たちの後から街に来ていたし、相手のトリッパーの方はそういうことを何度もやっているらしい。発言といいあれだな。


まあ今のところ俺には関係ないし、とつか少年に見つかる前にさっさとここを離れよう。


「そこにいますよね、お兄さん。少し待っていてくれませんか?」


立ち去ろうというタイミングでばれてーら。人だかりが割れ、こちらに指を差しているとつか少年と最前列でかぶりついているミナさん、それにやたらでかい大剣を構えている黒髪のおにいさんを少し出そうな人がいた。


「なんだお前、このガキの仲間か? いいぜ、まとめて相手してやる」


うわ、ただでさえ面倒臭いのに余計なのに勘違いされた。あわてて首と手を横に振り違うとアピールする。


「あの人は仲間ではないですよ。それに、相手してやる? 昇さんに会っていなければそれも良かったかもしれませんが、今はもう必要ありません。練習台になってくれれば結構です」

「ああ? 調子乗ってんじゃねぇぞ。俺のチート、反射能力の前にはなにもかも無駄だ! 後悔しながら泣いて死ね!」


やたら挑発めいたとつか少年の発言に、自分の能力をばらしながら突っ込んでいくおにいさん。色々と突っ込み所満載だ。


勝負は一瞬でついた。突然動きを止めるおにいさん。他の誰にも見えなかっただろうと思う。俺にもただ魔眼が有ったから、軌跡が見えたに過ぎない。刀は腰に刺さったまま、しかし弧を描くような斬撃の跡がおにいさんの体を通っている。


ゆっくりと滑り落ちる上半身、ぽとりと落ちる腕。どさっ、びちゃっと音がしたかと思うと、光になって消えていく。地面にぽつんと残るカードだけが、さっきまでそこに人がいた事を示す。


「殺……した、のか」


なぜ? そこまでする必要はあったのか? 考えている間にも周りの人達から声が上がる。


「すげぇじゃねえか坊主」

「ありがとよ、あいつにゃ迷惑してたんだ」

「よくやったな」


耳を疑った。聞こえてくるのは殺人が起きた事への悲鳴や殺人者への声ではなく、感謝や賞賛だった。次いでとつか少年に頭を下げる、しっぽを見るにたぬきの女の子が目に入る。


目の前の光景を理解するまでに、しばらく時間がかかった。その間に人だかりは解散し、とつか少年がこちらに近づいてきていた。刀のリーチに入る直前、反射的に後ろに下がる。


「警戒してるんですか? 戦いたいんですから、いきなり襲ったりはしませんよ」

「なんで……なんで殺したんだ?」

「殺した? なんでって……その話少し長くなりそうですし、隣の立ったままで気絶している彼女さんも連れて、茶屋にでも行きませんか?」


言われて隣を見ると、シエルが目を開けて立ったまま意識を失っている。まあ確かに介抱も必要だし、話も聞きたいから付き合うとしよう。

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