第三十三話
王都に着くと、なんというか異常を感じざるをえなかった。昨日の野営地点の時点でなんか爆発音とか聞こえていたから絶対におかしいとは思っていたが、何箇所か周りの壁が穴が開いたり崩れているし、壁の周りに大量のクレーターが出来ている辺りおかしいとかそういうレベルじゃない。幸い今はある程度遠くで爆発音が出ているが。
王都に入るときに門番のドワーフに睨まれたり、依頼が終了って事で皆さんと別れた後ギルドに行く途中めっちゃ睨まれたりと、むしろ憎まれてるってレベルの歓迎を受けた。そこまでか。そこまで酷いのか。確かにさっき聞こえてきた爆発音が日常的なら仕方ない気もするけど。
「はい、ではこれが依頼の報酬です」
「ありがとうございます。ところで、やたら憎まれているような視線を感じるんすが、なんでっすかね?」
「ええ、それがですね……」
ギルドに入ったったときはヘイト成分が含まれていたが、カードを出してみたら普通になった受付のおじょうさん(24らしい。全くそうは見えない)に聞いてみると、詳しく教えてくれた。
「始まりは一ヶ月ほど前でしょうか、生産ならドワーフの国だよね、ロリっ娘サイコーなどの発言と金属を自由に操る様から変態と呼ばれる男が最初に来ました」
変態って呼ばれるほどなんかしたのか。どう考えても絵が犯罪だから、やめたほうがいいとか無かったんだろうか。異世界だからOKだよねとか言ってそうだ。
「それからも似たような人たちが来たんです。見たことも無い技法や物を見て、最初は言動や態度以外は歓迎していたのですが……」
いくら天才でも変態はだめって事か。いや、変態でも技術は認めてたっていう話なんだろうけどね。
「ある日突然爆発物や魔法みたいな破壊……兵器? でしたか、とにかく危なくて迷惑な物を作り出して……街に被害が出始めたのでなんとか街から遠くで実験するよう説得したのです」
兵器って、そんなもの作ってたのか。なんでファンタジーに科学持ち込もうとしてるんだ? 剣とか槍とか、 武器や防具でも作ってれば良かったのに。
「それで、そいつらの特徴が共通して黒い髪と黒い目だった、と」
「その通りです。たぶん皆またあいつらの仲間かと思ってたんだと……」
そんな集団の同類と思われてたわけか。まあ確かに同じような外見の集団が変態ぞろいなら、似たような奴もそうだと思われるのか。オタクの一人が事件を起こしたら世間からこれだからオタクは、って言われるようなものか。
「まあそれなら仕方が無い。教えてくれてありがとうっす」
「いえいえ、虹の冒険者の方に不快な状況ですみません」
あわてて頭を下げるおじょうさん。多分街の住人内の問題のせいだと思っているんだろう。でもね、トリッパーのせいだと知ってると、こっちが悪いことしてるみたいな気分にしかならないから、気にしなくてもいいよ。
話を終えると、掲示板を見ていたシエルがやってきた。
「報酬はどうだった? ……って、なんだか申し訳なさそうな顔してるよ?」
「いや、まあ実際申し訳ないっていうか……」
聞いた話をシエルにも教える。
「うわぁ、それは……でもさ、どうしようもないよね。」
「へ?」
「だってさ、ボク達って神様でも正義のヒーローでもないでしょ?そういう人たちって話を聞いてくれないし、だからって……殺せば解決、そんな短絡的な手段に訴えるのもさ、駄目じゃないかな」
なんでそこまで飛んで行ったし。もっとこう説得とか相手の要求を聞くとか踏むべき順序があるよね?
「……シエルって俺のこと何だと思ってるん? もっとこう常識的に説得手段とか考えるところから始まるよ?」
「え、えぇっと……そ、そうだね! 暴力は駄目だよね!」
ごまかすように笑うシエル。
「それにさ、せっかくの異世界だし、俺は楽しく生きたいんだよ。解決できるかもしれない問題をほっといたら、楽しくないだろ?」
「……そっか、それもそうだね。困ってる人を見捨てるなんて、目覚めが悪いもんね!」
いや、別に人助けがしたいわけじゃなくて、気持ちよく観光できるようにしたいだけなんだけど……まあいいか。
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「アパム! アパム! 弾! 弾持ってこい! アパーーーム!」
「誰がアパムだ! その辺の弾薬適当に使ってろ!」
「ほんとファンタジーは地獄やでー。ヒャッハー、魔物は蜂の巣だー!」
「そのポンコツ使えねぇのか?」
「ポンコツ? おい、おい! おちょくってんのか? せんしゃだぜ、 せ・ん・しゃ!」
「まあガソリンがなくてただの砲台だけどな」
「「はっはっは」」
「使えねー」
「電気使える奴あまってる? レールガンチャージしたいんだけど」
「たしかレーザーのほうでMP切らしてたぞ」
「まじかよ、じゃあミサイルの改良と実験でもやるか」
「あれうっせーから他の事やれよ」
「レールガン以外は爆発物しかねーんだよいわせんなはずかしい」
「っしゃー完成したー」
「おお、なんかロボットじゃん」
「ロボじゃなくてパワースーツもどき! 体の動きをクランクで増幅する奴だよ」
「へー、すげーじゃん」
「まあパワーアシストはないからこれを一人で持ち上げれるほどの力がないと動きゃしねーけど」
「だめじゃん!」
「うーし、ミサイル撃ったぞー」
「「「撃つ前に言えー」」」
音を頼りに見に来たんだが、爆音に加え、爆風で何人か吹っ飛んでいる。ナニコレ? 状況がカオス過ぎるだろ。何なの? フリーダムなの? 大人の形した子供に危ないおもちゃを好きなだけ与えるとこうなるの?




