第二十二話
出発してから三日間は特に何の問題もなく進行していた。いや、強いていうならキャンプの時に寝不足っぽいチンピラが人を見るなりビクッってしてたりしたけど。そんなに酷いことしたっけか?大げさなやつだ。やっぱりランク金なんてあてにならんな、うん。
今のところ一度だけ夜中起こされて見張りをしたが、それ以外は日中にニ、三回進行方向の魔物を俺が蹴散らしただけだ。そんなに整備された道でもないし、もっと魔物が襲ってくるのかとも思ったがそんなことなかったぜ。見張り中になんの会話も無かったけど、きっと見張りに集中してたんだよな。しかたないか。
まあ森のなかを進行とか砂漠を越える、山を行くなんてこともなく、のどかな平原を行ってるだけだし、そんな魔物の大群なんて来るはずないか。あれ?若干フラグっぽいかな?まあ大丈夫だろ。問題ない。無いったら無い。
移動中は護衛が馬車に何人かずつ別れて乗っているんだが、商人の人は明るく話しているのに、護衛の人たちはチラチラとこっちを見たりしながらそれに答える程度しかしていない。まあ空気が死んでるわけでもないし問題ないか。護衛依頼を受けたんですが馬車の空気が最悪です、なんて事になってないのは良いことだ。
「……でねぇ?今回の商売が上手くいったら、彼女にプロポーズをする予定なんですよ。店を持てるだけの利益が出るはずですし、もう物件の候補も絞ってありまして。」
「それはいい話ですねぇ。私らももっと安定した仕事とかにした方がいいんですかねぇ。ちょっと自信なくしちゃって。」
「いやいや、冒険者の方々がいるから、こうして安全に……」
……空気重くなってきてない?それに変なコト言ってる商人さん居なかったか?聞かなかったことにしよう。出来るだけ目を離さないほうがいいかもしれんが、即死じゃなければ助けれるよな?
ガタゴトと揺れる馬車を、まだしばらくドワーフの国までこのフラグ付きで行くと思うと、ため息が出た。おい、なんで人のため息に反応するんだよ。もっと違うところに気を配れよ!
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「そこで止まれぇ!」
正面から大きな声が聞こえてきたのは、それから二日後の昼だった。外を覗くと商隊の周りをぐるっとTHE・山賊が囲んでいた。いや、山じゃないし盗賊か?馬車は止まった。まあ仕方ないか。
それにしても、さっきまで人なんて居なかったと思うんだが、なんで囲まれてるんだ?ちょっとうたた寝しかかってたかもしれんが、それは馬車の御者やってる人には関係ないだろうし、普通わかるよな?
「いきなりどうしっ!」
ケインさんだったか、馬車から出てきたと思ったら周りを見てびっくりしてる。他の護衛の人達も突然……とか言ってるし、突然出てきたんだろう。
「よし、えぇっと……てめぇらは完全にほーいされている!武器を捨ててすみやかにいてぇ、何するんすか先生!」
「ええっとって何!練習したでしょうが!それに包囲が棒読みじゃん!」
「んなこと言ったって、覚えにくいっすよ。」
「ああもう、台無しだよ。この後どうやってかっこ良く強奪するのさ。」
ガタイのいいでかい山賊の親玉が、横にいるローブを着てる奴と漫才を繰り広げている。
というかあの言動って……まさか。
「まあいいよ。そこの馬車に乗ってるやつら、よく見ておきなさい!」
若干くぐもっている声からは、どんなやつか分かりづらい。多分結構若いと思うんだけどなぁ。どうだろうか。
ローブの中身について考えていると、ローブの奴がぶつぶつと何かを言った後、片手を上に上げる。すると、空中に人が二、三人分ほどの大きさの火の玉が現れた。魔法か。
ローブが何もない方向に手を振り下ろすと、火の玉がそちらの方に飛んでいき……爆発した。うわー、普通の人間が食らったらひとたまりもなさそうだ。でもアレだと連射は出来なさそうかな?MPとか大丈夫なんだろうか?
「それと、隙がでかいって思ったやつがいても無駄だよ!」
またぶつぶつと言った後、ローブの周りに大量の火の玉が現れた。今度はこぶし大って所だが、それにしても結構な数だ。これだけの能力を持っているとなれば、やっぱり魔法系のチートを持っているトリッパーだろうか。
「これでわかったでしょう。抵抗は無駄だ!おとなしく出てきて、最寄りの街までの食料と水を残して身ぐるみ全部置いていきなさい!」
あ、なんかいいやつっぽいな。あれだ、甘さを捨てきれないってやつ。まあ日本人で皆殺しヒャッハーとか言う奴は頭がオカシイかよっぽどの子供みたいな自分が何をしているか考えてないやつだろうし、当然か。
それにしても、運の悪いやつだ。だって、俺が護衛依頼を受けた馬車を襲ったんだからな。アレが最大火力なら、たとえトリッパーだとしても負ける理由はねぇな。さて、まずはどうしてくれようか。




