番外編:フルボッコの返り討ちされた側
楽しい時間はあっという間、嫌な時間は長く続くといいますね。
じゃあ、人生最大の嫌な時間って、どれほど長く続くのでしょうかね?
俺はキース、これでもちったぁ名の知れたランク金の冒険者だ。普段はこの王都からしばらく行った所で、ケインやエルボア、エリーやベネッタのパーティーで狩りをしてらぁ。
それで久しぶりに王都に帰ってきて、装備の新調や補給なんかをしていたら、ケインが割のいい護衛依頼を見つけてきた。
「どうだいみんな、ただの護衛依頼にしては条件が厳しいけど、経路や目的地にしては報酬がいいだろ?」
「む、そうか。ワシとしてはもう少し王都でのんびりしていたかったんだが……」
エルボアがそんな爺めいたことを言う。確かに帰ってきたばかりだが、これだけ割のいい依頼なら受けるに決まってる。
「あたしもエルボアに賛成かな。ずーっと野営ばっかりだったし、しばらくはベットを使いたいもの。」
「そうですねぇ、今回の狩りでしばらくはお金もありますし、ゆっくり過ごすのも悪くないんじゃありません?」
エリーもベネッタも乗り気じゃねぇようだ。稼げる時に稼いだほうが良ぃじゃねぇかよ。
「俺ぁ乗るぜ。別にパーティー単位での募集じゃねぇんだろ?」
「ああ、じゃあ俺とキースは依頼を受けるから、その間三人は王都でのんびりしててくれ。」
ケインがそう言うと、三人共頷いてくつろぎ始めた。けっ、報酬は分けねーからなっ!
依頼の待ち合わせ場所の南門につく。まだ依頼中のことの話し合いはしてねぇみてぇだ。
「おーい、護衛依頼を受けた奴らは集まってくれ!」
ケインが声を張り上げる。ったく、こいつはいつもまとめ役をやってっかんな。
ざっとあっつまった辺りで、一人のガキが来た。こいつも依頼を受けてんのか?
「今回の護衛依頼を受けたのはこれで全員かな?早速だが役割分担や夜のローテーションについて話し合いたいんだが。」
「その前によぉ、あのガキは何だケイン?この依頼は金以上推奨の銀以上の依頼だろぉ?なんでガキがいんだよぉ。」
当然の事を言ったつもりだったが、ガキが呆れたような顔つきをしやがった。そういえば昨日ギルドで、最近ギルマスの爺さんと話してた子供がいるっつ-話を聞いたが、黒髪で黒目っつーとあのガキか?
「え、いや俺に言われてもなぁ……おい坊主、ランクはいくつなんだ?」
ケインがガキに聞くが、そんなの考えればすぐに分からぁ。
「ギルマスのお気に入りだからって、見た感じ行ってて黒か銀だろぉ?なんでこの依頼受けてんだっつーの。調子乗ってんのかよぉ、あぁ?」
ガキはこっちを睨んだかと思うと、納得したような顔でカードを出してきた。
「これで文句あるっすか?」
「あぁ?ってこりゃぁ……」
いくつかの色が混じったような角度が変わると色も変わるキラキラしたそれは、前にギルマスの爺さんに見せてもらったことのあるカードと同じ色だった。このガキが?このカードを?
「に、虹?本物……のようだね。済まなかった。俺はケイン、ランクは金だ。よろしく。」
「ああはい、俺は昇っす。ランクは見ての通りっす、よろしくっす。」
驚きで固まっていたら、ケインがそんなことを言っていた。おいおい、まてよ。おかしいだろ。
「てめえ見てぇなガキが虹ぃ?そんなわきゃねぇだろぉ、何のイカサマだ?ギルマスと話してたってこたぁなんかのコネか?」
「おいキース、言いすぎだろ。それにカードは偽装なんて出来るもんでもな」
ケインが横槍を入れてくるが、関係ねぇ。
「んだよケイン!こんなガキが俺よりランクが高いなんて認めねぇぞ!おいガキ!」
「なんすか?」
「どんなインチキしたんだ?ぶちのめされたくねぇんなら言えよ!」
すると、考えてますよ-とでも言わんばかりに首を捻った後、呆れたような声でガキが言った。
「って言われてもなぁ、実力としか言いようが……」
実力だと?こんなチンケなガキが虹ランク?
「俺がてめぇみたいなガキより弱いってか?ナメんじゃねぇぞ!」
ガキに現実っつーもんを教えてやろうと剣を抜く。大口叩いたんだ、自業自得っつーやつだよなぁ。
まだ何か考えているようだがもう遅ぇ、一気に意識を戦闘状態に持って行き、突っ込む。
「らぁあぁあぁぁ」
剣を振り下ろすと、何の偶然か横に避けていやがった。まあいい、このまま足を切っちまえば……
手に受けたものすげぇ衝撃に剣を取り落とす。見ればガキの足が剣を踏んでやがった。何が起こった?だが剣がなくとも、ぶん殴ってやりゃぁ身の程っつーもんを
直後死ぬほどの衝撃が体を襲った。昔受けたアングリーベアーよりも更に、というか今までで一番の痛みと衝撃に意識が持って行かれそうになる。というよりも、持って行かれた意識が痛みで無理やり戻される。
あばらがどうとかそんなもんじゃねぇ、おれはいきているのか?なんだこのいたみは、なにかにひきつぶされているとでもいうのか。いたいいたいいたいいたいぁぁぁぁぁぁ……コノママジャシンジマウ。
「うぁぁぁぁぁぁいてぇぇぇぁぁぁ」
口から勝手に溢れる声。正直に言えば声が出ているのがびっくりだ。声が出たことでまだ生きているとわかりなんとか考えられているが、胴体が残っているのか怪しいくらいの痛みが襲ってくる。
「自分より弱いと思ったガキに突っ込んだ挙句フルボッコの返り討ちとか、ねえ今どんな気持ち?ねえ今どんな気持ち?」
グリグリと俺を踏みつけているのが痛みでわかる。これだけ痛てぇのになんでまだ生きているんだ?
「やめてくれぇ!死ぬぅ!死んじまうぅ!」
しかし奴は、心底楽しそうな声で俺の頼みを無視する。
「大丈夫!死ぬ前に回復してやっから。」
痛みのあまりどれだけ時間が経ったかわからない。踏まれてからどれだけ時間が経ってるんだ?それに回復してやるって、この痛みが終わらねぇってことかよ。そんなのは嫌だ!
「済まなかったぁ!頼むからやめてくれぇ!」
もはや恥も外聞もねぇ。この痛みから開放されるってんならなんだってする。神でも悪魔でも何でもいい、たすけてくれぇ。
すると祈りが通じたのか、足をどけられたのが分かった。少しずつ痛みが小さくなっている気がする。助かった……のか?まだ生きてるのか?
その後ケインとガキ……いや、あれはそんなもんじゃねぇ、最早人の皮を被ったナニカだ。がなにか話していたが、俺はそれどころじゃなかった。ただひたすら生きていることに感謝していた。
なんとか落ち着いてからになったが、話し合いもまとまった。夜番は二人一組が基本だからか、ナニカと二人で夜起きてようってやつが少ねェ為かナニカの回数は少なかった。常識があるならあたりめぇの話だ。そもそもアレが居るのに寝れるかどうか怪しい。
だが、俺も金の冒険者だ。一度受けた依頼の放棄なんてありえねぇ。あのナニカが味方なら何があっても安心だとなんとか理性で持ち直す。
……依頼の条件が厳しいのはあのナニカが必要なほどだったとしたら、死ぬかも知れねぇな。なんて思いながら。
痛すぎる場合痛みで脳がシャットダウンするそうですが、それって人間の防御機構ですよね。防御……あっ(察し)
もしかしなくても:人に向けて暴力を振るってはイケマセン(迫真)
一応トップクラスというか、一流冒険者なんで、死線も何度か抜けてきたキースさんです。最ってほどでもありませんが狩りの前線地帯みたいな所で頼れる仲間と冒険!て感じの人です。それ故になんとか廃人なんかにはなってませんね。
もし後一分も踏まれていたら?ご想像にお任せします。




