エピソード0.5 とある道具屋の一日?
あれーおまけ話なのに一番長い
う~ん。本日は晴天なり。今日もいい仕事日和だぜ。
俺の名はマニカっていうんだ。ニダヴェリア王国にあるかなり田舎の「ムルミ」って町で道具屋をやっている。ムスペル共和国の国境に近いこの町は肥沃な平野があり、近くに川があるもんだから稲作が盛んだ。8年ほど前までは米は作られていなかった。というが誰も米が食いもんだとは考えていなかった。家畜の餌程度だと思っていたがあの坊主が調理法を伝えてからいうもの世界中に米が広がった。そんなわけでムルミは世界有数の米の産地でちょっと有名になったんだ。まぁこの町についてはこんなんものでいいか
次は俺の店についてだな。
俺の店は「マニカのコンビニ」っていうんだ。この名をつけたのはまぁ坊主なんだがな。
んで店には、日常生活や旅などの必需品販売や農具の販売修理なんかもやっている。
「あなた、そんなところでなにやっているの?」
「んぁ、いやちょっと説明をな」
「?どこにも人はいませんよ。」
首をかしげる一人目の嫁である精人族であるサニアだ。出るとこ出てて引っ込むところは引っ込むなんとも素敵な嫁だ。精人族は身体的特徴として耳がとんがっているんだ。精人族は魔力の扱いに長けていて、精霊と会話することができる種族だ。
「こまけぇこたぁきにすんナ!」
さてとそろそろ10の刻になるな店の準備しないとな。
店へ入るとあたりにディアンの香りがあたりに充満している。
ディアンっていうのは傷薬や解熱剤なんかに使われる薬草でスーッとするような香りがする。ちなみにものすげー苦い。
「お、ちょうどイイトコネ。手伝ってほしいネ。そこにあるアルーチェとてほしいネ」
奥から二人目の嫁であるシュラが顔をだす。アルーチェってのは樹の名でその樹液で作った薄い膜のことも指す。この膜は人肌ぐらい温度の水で溶けてしまう。これが結構便利なもので薬を包むものとしてよく利用されている。
さっきいったディアンを煎じたのを包んで俺のところは解熱剤として売っている。
おっとシュラは獣人族で飛翔種で小柄で出る出ないかわいそうな子だ。でもかわいいんだこれが。
おっとちなみに俺は技人族だぜ。え、そんなことはどうでもいいって?なんで嫁が二人もいるかって?
うらやましいか?ちなみに言うが俺はこれでも嫁さんは少ないんだぜ。普通は5、6人多いところでは2桁とか当たり前だぜ。基本的にこの世界は一夫多妻制なんだぜ。理由は簡単で世界の男女比が1対8ぐらいなんだよ。そんなもんだから回りは基本女性ばかり、男としては結構嬉しいようで結構大変だぜ女が多いってことは必然的に
「これぐらいでいいかしらシュラ?」
「ありがとネ。マニカは役立たないネ。耳は飾りであるネ。」
「仕事してくださいね。あなた?」
そう。割かし男の立場は弱い。・・・仕事始めっか。
カランコロン
店の出入り口についてる鐘がなった。早速お客さんか
「いらっしゃい。何のようだいお嬢ちゃん」
店に入ってきたのは金髪をアップでまとめた160cmぐらいの嬢ちゃんだった。無愛想なのが非常に残念
「・・・珍しい武器を売ってる聞いた。」
ほう。なるほどそっちの客か。
「確かに扱っているが何が欲しいんだい。」
腰からあるものを引き抜きカウンターにのせた
置かれたものは木製のトンファーだった。先端と腹には軽鉄を被せている。
「この武器が欲しい。」
「触ってもいいかい?」
かすかに頷くのを確認してトンファーを手にとる。ざっと見ても素人の仕事だな。
「こいつはどこで手に入れた。そこらへんでは扱いはないはずだ。というよりこの形状の武器を使っていたのは坊主・・・武器の奇術師だけだと思ったが」
トンファーは武器の奇術師が使用した武器のひとつであり、この大陸では存在しなかった武器だ。
「嬢ちゃん。どうしてこの武器が欲しいんだい。」
正直この武器を欲しがる連中は一部のマニアぐらいだ。実戦で使うにはかなり難しい。しかし嬢ちゃんもっていたものはかなり使い込まれている。実戦でだ。
「私の一族はその武器であの方に救われた。あの方の願いをかなえるため、私はその武器で戦う。」
なるほどいい目だ。この嬢ちゃんならいいだろう。
「まってろ。」
俺は奥にしまってある空白シリーズの中のひとつをもってくる
「名はセクメト。金はいらねぇ。その代わりに坊主の意思を貫いていけ。」
「おじさんに言われなくても。」
「くはははははは。いいねぇ嬢ちゃん気に入った機会があったらまた来るといい。」
「ありがとう。」
カランコロン
無愛想のまま嬢ちゃんは店を出て行った。
「よかったわね。こんな嬉しそうなあなた久々にみたわ。」
「そうネ。彼と飲んだ日以来ネ。」
「あぁ、いい日だ。」
坊主に助かれた者同士、こんな風な日がくるとはな。
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ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
俺は口に含んだ握り飯を噴出した。口に入れた瞬間気が遠のきかけた。辛いようで苦いようで甘いようですっぱいようで・・・。見た目はまともなのに味がひどすぎる。
「シュラ!なんだこの握り飯はものすごくまずい。」
「あなた。みっともないですよ。」
「ひどいネ。丹精こめた薬草おにぎりあるネ。」
薬草おにぎりだと・・・。またなのか。
「頼むから俺で実験台にするのはやめてくれ。せっかくの昼飯が台無しになっちまうだろ。」
「いいではありませんか。これもあなたの健康を考えてつくってくれたものですよ。」
「そんなので毎度気絶させられそうになる俺の身になってくれよ・・・。」
「うむ。やっぱりだめあるネ。サニアこっちのたべてみてほしいネ。」
「いただきます・・・あらちょっとつーんとする感じがするけれどおいしいです。」
「!よかったネ。ワサビっていう野草なんだけどネ。なツーンなるのがすごくいいと思ったのネ。」
なんだろう。ものすごい扱いの差が・・・。
カランコロン
今日は客がすくないなぁ本日二目の客だ。
「おう、なんのごよ・・うだ?」
190cmをほどの長身の女だった。紅い髪を右サイドポニーにしている。別に長身の女性はいないわけではないが俺が驚いたのはその背に担ぐハルバードだった。
ハルバード。これも武器の奇術師が用いた武器だった。基本的には装飾品として扱われているもので武器として使うものはまずいない代物だった。理由として長い柄の先には広い斧部と槍、そして金槌がついた武器である。常人の膂力では扱いきれるしろものではないし、三つの獲物がついた武器である。これもまたトンファーと同じく扱いが難し過ぎた。
「珍しい武器が扱っていると聞いてまいりました。実戦で扱うことのできるハルバートを探しています。」
思わずにやけてしまった。
「あるぜ、とっておきの一本がな。だがその前になぜそんな武器を欲しがる理由が知りたい。正直それを振えるなら他の武器のほうがいいだろう。」
女は目を細め俺を見つめてきた。
「憧れなんです。・・・この武器を振るう方に私は助けられた。その姿はどんな生き物よりも凛々しく美しかった。あの方のようになるため私はこの武器を振るう。そしてあの方の意思が集う場所へ向かいたい。」
合格だ。あぁ何て日だ!おれは高鳴る胸を押さえ、空白シリーズなかの一つをもってカウンターに置いた。
「名はホルス。金はいらねぇ。その代わり坊主の意思を貫けよ。」
「よいのですか。こんなすばらしいものは見たことないです。」
「あぁ気にするな。坊主に助けられたもの同士だ。かまわねぇさ。」
「ありがとうございます。」
女は深々と頭をさげた。
「夢をみているようネ。」
「ええ、信じられない日ですね。」
二人の嫁も驚いているようだ。
「今日は店じまいにしよう。酒をもってきてくれるかい!」
「あらあら。仕方ない人ですね。」
「今日はいい日ネ。特別にネ。」
こんな明るいときから酒を飲むのは案時以来だなぁ
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カランコロン
すでに表に店じまいの看板は出していたのに客が入ってきた。もう日は落ちていた。もう18の刻だ。
「あら、こんな時間に、私がいきますね。」
サニアが店へ向かっていった。
もうあたりには酒ビンがいくつか転がっていた。
シュラはとっくに酔いつぶれテーブルにすっぽんぽんでねている。酔っ払うとこいつは暑いといって脱ぎだす癖がある。基本人前では絶対飲ませない。こいつは俺の嫁だからな。しっかし、サニアは俺より飲んでるはずなんだけどなぁ。酔ったところは見たことがない。・・・一回だけ酔っ払った振りをされたことがあるがな。
「あなたッ!すぐ店にきてください。あ、アトゥムを受け取りに来たという人が来てます。」
一瞬にして酔いが覚めた
「・・・今行く。」
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カウンターの前にいるのは150cmあるかないかのガキンチョだった。
くすんだ黒短髪、かなり中性的顔立ちだ
「先にいっておきますが男です。」
いきなりかよ。まぁそんなのはどうでもいい。なぜこのガキンチョがアトゥムを知っているかだ。
「なぜ、その名を知ってる。」
「ある人との約束でアトゥムを受け取りに来たんです。」
・・・まさか坊主の知り合いか。
「・・・正直渡すつもりはない。あれは俺たちの最高傑作だ見ず知らずガキンチョに渡すつもりない。」
「それは困った約束が果たせない。どうすればいいですかね。」
飄々としていやがる。まるで坊主みたいだ。
「アトゥムを持つにはそれなりの実力が必要だ。それにいったい何モンだ。」
「う~ん、そうですね。・・・武器の奇術師の素顔を知ってるモノとでもいっておきましょうか。」
「なッ!そんあ馬鹿な!坊主の素顔は誰も知らないはずだ!あのダリウスだって見たことがないんだぞ!」
「そうですね。まぁ僕は彼と同じ町の出身ですから。」
「オイオイ。冗談は休み休み言えよ。いくらガキだからって大人をからかうんじゃねぞ。」
いつの間にかサニアとシュラがそれぞれの得物を構えている。
「・・・あまりふざけたことをいわないでいただけますか。」
「いたずらにしては悪質ネ。」
「・・・だそうだ小僧帰ってもらえるか。」
最高の日かと思ったらとんでもない最低な日だ。中へ戻ろうとした。
・・・・でも体を動かすことが出来なかった。
魔法をかけられたわけではないし、縄で簀巻きにされたわけでもない。
俺は、いや俺たちは誰一人体を動かすことは叶わなかった。とてつもない闘志が俺たちを動けなくした。
「人は見た目で判断してはならないと彼はいっていませんでした?よろしければアトゥムを持つにふさわしいか試していただけませんか。こちらも約束を果たさないといけないので。」
雷に打たれるとはこんなときに使うんじゃのかと思った。こんなに体が重いと思ったのは初めてだ。俺はガキへと振り返る。
あぁ。坊主はきっとこんな力強い眼をしていたんだろうなぁと思った。強い強い意志がこもった眼だ。
アトゥムは俺が使うと。眼が語っている。合格だ。あんたならアトゥムを持つにふさわしいよ。
「・・・時間がかかる。そこでまってろ。サニア、シュラきてくれ。」
「・・・・あ、はい。」
「・・・・わかったネ」
「いくらでも待ちますから。」
そういってガキはまるで太陽のように笑った。
アトゥムの保管庫は三人がけで施錠を施していた。一人ずつ封印を解除していく。サニアは魔力による封印。シュラは特殊な薬剤による鍵穴をふさいでいた。そして俺は鍵を作っていた。保管庫の鍵は施錠した際に壊した。だから鍵はない。唯一鍵の作り方を知っているのは俺だけだ。
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日付が変わりすでに4の刻。鍵は仕上がった。すでにサニアの封印、シュラの封印は解かれていた。後は俺の鍵だけだ。
ガキン ゴゴゴゴ
保管庫が開いた。そこには俺たちの最高傑作「アトゥム」があった。
「待たせたな。これがアトゥムだ。」
カウンターに置いたのは120cmの一本の棒だ。ガキはそれを手に取り眼を閉じた。
「そろそろ夜明けですね。どうでしょうアルクトの丘で朝日でも見ませんか?」
俺たちはその言葉に頷いていた。
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「うーん。いいですねここは。」
ガキは伸びをしていたあたりはうっすら明るくなっていた。そろそろ夜明けだな。
「さて、大事なアトゥムをいただいたわけですから、ちゃんと僕が扱えるか見ていただきましょうか。」
一陣の風が吹き近くのアルーチェの樹から葉が舞い落ちる。ガキは葉に対してアトゥムを振るい始めた。
ただただ美しかった。俺たちが作り上げた最高傑作を完璧に扱いこなしていた。
舞い落ちる葉を撃ち―払い―突き―
その姿を朝日が照らし、その動作ひとつひとつが幻想的で俺たちはただただ見つめるだけだった。
気づけはガキはお辞儀をしてた。
夢のような時間だった。
ガキは歩き出した。
「約束は果たしたよ。マニカ。」
俺とすれ違うときガキは俺にそう呟いた。
ちなみに時間は現実の時間と同じ設定です。
24時間で順に0の刻、1の刻と言っていきます。
長さの単位は・・・。面倒なのっでそのままにしてしまいました。
そして本編スタートします。。ながかったよー