友へ捧ぐ誓い
魔王討伐から1月後、ニダヴェリア王国の首都である「スヴァルト」には世界各国から様々な種族が集まっていた。
貴族、冒険者など身分も多種にわたっていた。
ニダヴェリア王国
エッダ大陸の北西にに位置し、人口のほとんどが技人族の国である。鉱山資源に恵まれた土地でもあり、また技人族は物を生み出すことに優れた種族であるため鍛冶や魔道具などを中心に栄えている。
なぜこの町にこれだけ人が集まったのはなぜか。
それはニダヴェリア王とある冒険者が今後のことについての話したいことがあると世界各地に呼びかけたからだ。
一国の王とはいえ、話したいことがあるといって「はいそうですかいきます」いってくる者はそういない。しかも命令でもないし、ましてや他国の貴族なども来る理由はあまりない。彼らが応じた理由はこの呼びかけしたのがもう一人である冒険者、「武器の奇術師」である。
魔王討伐と彼がともに倒れたという知らせはすでに知らぬ者はいないほどに広まっていた。そう死んだはず英雄がニダヴェリア王とともに呼びかけている。誰もが不思議に思い、そしてその真意を確かめるためにスヴァルトに集まった。
「さて、皆様方に集まってもらえてうれしく思う。堅苦しいのは嫌いだから気楽に話させてもらうよ」
そういって城門の上から話を始めるニダヴェリアの王 ダリウス・ニダヴェリア12世
その姿は王というには若すぎた。年は数えて18になる青年。ダークブラウンの髪に同じ色の右目と金色の左目をした技人族の王である。
技人族は身体的特徴として左右の目の色が違っている。金色の目を持つものは王族の血筋のものだけである。
「まず、はじめにいっておくが彼は魔王と共にこの世去っている。」
にわかに城内の中庭に集めた貴族たちと城門の外にある大広場の冒険者たちが騒ぎ始める。
ダリウスはその騒ぎを無視しつつ話を続ける。
「ここに彼が残した魔道具がある。『びでおれたー』というものらしい。一回限りしか使えないらしいから静かにしてもらえるかな」
ダリウスの右手には青い正八面体の結晶が握られていた。
「効果は声の出る手紙だといっていた。魔王が倒れて、彼自身が死んだらできるだけ多くの冒険者や偉いやつらに聞かせてほしいと頼まれた。」
あたりは静かになった。
「よろしい。では使うよ。えーと『メッセージ再生』ッ」
ダリウスは結晶に魔力流し、真上へと高く放り投げた。放り投げた結晶は空中でまばゆい青い輝きを放ち静止した。
青い光が収まったそこにはボロボロのフードを纏った青年が姿を現した。
「さて、これが再生されているってことは僕は死んだってことですね。」
誰もが予想しなかった。そこにいたのは死んだはずの武器の奇術師だった。
「呼んでもらえるのは嬉しいですけど時間がないですし、一回しか言えないからしっかり聞いてくださいね。」
彼との縁があるものは彼へと呼びかける。 それに対する彼の答え。あくまで映像であり彼自身ではない。誰もが武器の奇術師本人だと思った。この場にいるものでこのような魔法は見たことがなかったからだ。
「話したいことは二つ。一つは予言、もうひとつはお願いです。まず予言、いつになるかまでは分からないけどで再び魔王が現れます。あと3体の魔王が現れます。信じるも信じないのも勝手ですが、これは間違いないです。」
再び騒ぎ始めた人々。死んだはずの人間が突如魔王が再び現れるといったのだからしかたがない。
「はいはい。騒がないください。最後まで話をきいくださいね。」
本当に映像なのか疑うほど彼の虚象は騒ぎを鎮める。
「でどうするかなんだすけれども答えはいたって簡単で魔王を倒せる人材を育てればいいだけです。」
あっさりといいのける彼にダリウスは笑った。なるほどあの話はこのための布石だったのかと
「で、もうひとつの話なんですけど、皆さん仲良くして下さい。」
「くっあははははははははははは、まったくお前って奴は面白い死んでまで俺を笑わせるのかよ」
ダリウスは腹を抱えて笑った。完全に彼の手のひらに踊らされていたのがわかったからだ。
「笑いこけてるダリウスはほっとくとして、はっきりいって魔王を200年近く倒すことができなかったのは皆が手を取り合い助け合うことをしなかったからです。我先に魔王を倒して名をあげるだとか、魔王を倒してわが国が大陸の覇者だとかそんなくだらない考えをもっていて、自分とは違う人種だからといって拒絶し、差別していたりするからです。」
誰もが黙っている。この世界の住人はあまり他国や他の種族と交わるのを嫌う。
しかしながら魔王を倒したパーティーであるグリモワールは獣人族・技人族・精人族の混合パーティーであった。彼のパーティーによって倒された強大な魔物は数知れず、数多くの人々を種族や国を関係なく救ってきた。
武器の奇術師は種族や身分差別を一切しない人物であった。そして様々な身分や種族の者たちに好かれていた。時には種族間の争いなどにも身を投じ、自らを楯にし人同士の争いで血が流れることがないように尽力してきた。
「それに顔も見せない、名前だって言わない僕と仲良くできる人がたくさんいrのだから、顔も名前も分かる人と仲良kするのは簡単でsよね?」
突如彼の姿にノイズが走る。いたる所から彼を呼び止める声があがる。
「おっとそろそr時間だ。あとはダリウス頼mよ。」
「あとはまかせておけ。友よ。」
ダリウスは亡き友に誓いを立てる。
そして彼は振り返り一点を見つめる。スヴェルト城のあるひとつテラスへと
「最gに、フェムス、リリアン、ミウ!」
テラスにいたのはグリモワールのメンバーの3人だった。全員嗚咽を漏らしていた。
「つtえたいkと、はnしたいkと、いっぱいあtた。みnとのたbたのsかった。bくはしあわsものdったよ。ありgとう。bイバイ」
「いかないでっ!」
「おいてくんじゃねぇよ」
「つらいよぉ」
彼女たちに手を振りながら彼の姿は消え、浮かんでいた結晶は粉々に砕け散った。
「さてと、ここからは俺のはなしだ。さっきあいつが言ったが、今後また魔王が現れると言った。そしてその対策も。」
ダリウスは彼との別れを振り切るように話を始める。貴族や冒険者達からすすり泣く声や嗚咽などが聞こえてくる。
「魔王を倒せるだけの人材を育てるそのために私はアルフレギア森国とムスペル共和国と協力して「学園」なるものを作り上げる。」
ダリウスの横にはアルフレギア森国の巫女長ナルシアとムスペル共和国の最高議長ナージャがたっていた。
「学園とは様々な種族を集め、様々な知識、技術を教え、学ぶ場所」
「そして此度数多くの貴族、冒険者に集まってもらったのは学園を作り上げるための助力を請う為である」
ナルシアとナージャの澄んだ力強い声が響く。その声で集まったすべての人たちは彼らたちへ視線を向ける。
「「「魔王を打ち倒した英雄の願いを叶える為、我らの未来の為に皆の力をあわせようではないか」」」
三国の指導者の声が青空高く、まるで彼へ聞かせるかのように響き渡った。
いろいろありまして大幅に投稿がおくれました;
申し訳ございません。間章が一話の後本章がスタートいたします。