2話 かわいい犬
俺は親友だと思っていたやつに裏切られたせいでギルドを追放されて、現在街中をさまよい中だ。
「普通にやばい......」
所持金無し、食べ物無し、所持品無し、無し無し無し無し......。
「あ、なんかあった」
なんだこれは?
ポケットに手を突っ込むとそこには紫色の石と笛が入っていた。
確かこの石は前のクエスト中に見つけて拾って、笛は買ったんだよな。
でもこんなもの持ってても意味がないんだよ......。
いや、意味あるぞ!
もしかしたらこれ、売れるんじゃね!?
俺は藁にも縋る思いで近くで買い取りを行っている店に駆け込んだ。
ポケットから勢いよく石を取り出し、店主の前の机にたたきつける。
これでしばらくは暮らせるな。
と思ったが。
「買いとれないね」
「そんなぁ!」
何度頼み込んでも、店主は絶対に買い取ろうとしてくれない。
それもそうか......。
こんな価値のない石ころに金なんて払いたくないよな。
「最悪だ。これから俺はどうすればいいんだ...」
「お兄さん。もしかして一文無しかい?」
鑑定屋のおじさんが声をかけてきた。
「今さっき一文無しになったばっかです...」
「そうかい。よし!じゃあこの笛を買い取ってやる!」
「本当ですか!?」
「流石に一文無しからなにも買い取らねぇなんて俺にはできないからよ!この石は買い取れねーが笛は買い取らせてもらうぜ。」
「あ、ありがとうございます!」
なんだこのおじさんは。神か。いやもう神以外の何者でもない。
「はい、五バースね」
五バースか。少なくとも食料は確保できるな。
仕方ない。
市場にでも行ってなんか買うか。
◇◆◇
「これだけしか買えなかった......」
俺が買ったのは小さいパンを二つだ。
「たったこれだけでどうしろと......」
なんでか少し気持ちが悪くなってきた。
体調が悪いわけでもないのに。
そういえば、朝からなにも食べてなかったな。
今食べるのはもったいない気がするけど仕方ないか......。
俺は人気がいなさそうな場所へ行き、パンを食べることにした。
「よいしょ」
小さな段差に腰を下ろして袋からパンを取り出す。
「じゃあ、いただき____」
「クゥ〜ン......」
「ん?」
俺がパンを食べようとした瞬間、暗い場所から犬が現れた。
結構痩せてるな。
急に現れた犬は俺のパンを見つめて尻尾を振っている。
でも許せ。今の俺にはお前にパンを分けてやれるほど余裕はないんだ。
「クゥ〜ン」
気にするな、気にするな。
「クゥ〜ン」
気にするな...気にす____。
「クゥ〜ン...」
「あー! もう! わかったよ! ほらやるよ!」
俺は袋に入っていた最後のパンを取り出して犬に与えた。
「美味しそうに食うなー、お前」
俺は犬の頭を撫でた。
凄いふわふわしてるな。
残念ながら今の俺はパンを味わって食べるほど心に余裕はない。
「さー、これからどうしようかな」
武器も全部取られちゃったから討伐クエストを受けることもできないし。お金がないから武器も買えないし。
仕方ない。もらえる報酬は少ないけど採取クエストでも受けるか。
俺はパンを口に押し込んで立ち上がった。
「じゃあ行くか」
「ワン!」
「なんだ?もうパンはないぞ?」
なんで俺のことをずっと見てくるんだ?もしかして一緒に来たいのか?
「一緒に来たいのか?」
「ワン!」
尻尾をふってめっちゃ喜んでいるようだ。
うーん、名前をつけないと不便だな。
「よし、じゃあお前の名前はカロスだ」
名付けてもらったのが嬉しかったのか、俺の周りを勢いよく回り始めた。
「わかった、わかったからもう大人しく...」
「ワウォーーーーーーン!!!」
「うるさーーい!!!」




