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【第六話】あの夜の波形
この街は、かつて血で栄えた。
そして今も、誰かが自分の血を燃やしている。
彼は爆発犯だ、罪人だ。
それでも一部の人間は、彼をこう呼ぶ。
――仮面の英雄、と。
俺の仕事は、その男を止めることだ。
解析モニターの青が、揺れる。
立花ミカは、画面を見つめたまま動かない。
同じ波形。
二十年前と、寸分違わない。
脳裏に焼き付いている。
崩れた地下施設。
血を抜かれ続けた人間。
天井を突き破る青い炎。
あの日、初めて見た。
白い仮面は、まだなかった。
ただ、震える少年がいた。
炎を見つめていた。
「……止めなきゃ。」
自分が言ったのか。
レイジが言ったのか。
覚えていない。
だが、止められなかった。
燃やされたのは、地下だけじゃない。
あの日から、A都はA市へとゆっくり崩れ始めた。
「……変わらないね。」
無意識に零れた声。
背後でレイジが止まる。
「まだ、背負っている。」
短い言葉を紡ぎながら、ミカは端末を閉じる。
「消耗が進んでる。次の爆発は、もっと弱いかもしれない。」
それは希望か。
それとも、終わりの兆しか。
青い波形が、ゆっくりと揺れた。
【登場人物】
上司1:獅子レイジ
上司2:立花ミカ
仮面の男:???




