【第十四話】二度目
崩れた地下区画は、まだ煙の匂いを残している。
床の奥に露出したシャフト。
赤いランプが、規則的に点滅していた。
ヒマリが端末を握る。
「……深部にまだ因子反応がある。消えてない。」
トキヤが舌打ちする。
「マジで根っこあるじゃんかよ。」
俺は黙って立っていた。
視線の先には青い残滓がわずかに揺れている。
その瞬間。
背後で、足音が止まった。
振り返らなくても分かる、獅子さんだ。
視線が、青い残滓に落ちている。
ほんの一瞬だけ。
ほんの一瞬。
呼吸が止まった。
「……波形。」
低い声。
立花さんが端末を見ている。
「二十年前と一致。」
空気が、重くなる。
トキヤが言いかける。
「二十年前って───」
「聞くな。」
獅子さんの声が、わずかに荒い。
俺は、青い残滓を見つめる。
燃やす炎。
止められなかった炎。
「俺が止めます。」
自然と口から出た。
獅子さんがこちらを見て目が合う。
何かを測るような視線。
「絶対に燃やせさずに、俺が止めてみせます。」
沈黙。
地下の奥で、金属が軋む。
立花さんが、小さく呟く。
「……分岐点。」
その言葉に、獅子さんの目が揺れた。
ほんのわずか。
誰にも気付かれないほどの。
「……二度目は、させない。」
独り言みたいな低い声に、俺は拳を握る。
青い残滓が、わずかに揺れた。
それは挑発か。
それとも───願いか。
地下は静かだった。
だが、何かが動き始めている。




