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縁界《ーENKAIー》  作者: 玲皇


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第2話:魔神王の死の噂

異質な魔物。意思がある弱き魔物。


ラグナードは今日もまた、深淵の森の奥で息を潜めていた。




ゴゴゴゴッ…… ドドドドッ……




遠くで地響きのような音が響く。 ラグナードは腰を低くし、音の方向を慎重に探った。




逃げ足には自信がある。 逃げ続けることで鍛え上げられた脚力だ。 だが、今回は違った。音はまっすぐこちらに向かってくる。




息を殺し、気配を消し、植物が密集した茂みに身を沈める。 体は小さい。魔神のような巨大な生物と遭遇すれば、逃げるだけでも命がけだ。




胸の中では警戒の警笛が鳴り響いていた。 全力で森の外へ逃げることも考えたが、この森は隠れる場所が多い。 外へ出るほうが危険だと判断し、ここに留まることにした。




しかし、近づく足音に違和感があった。




……2つ。 ……3つ。 ……4つ。




複数の魔神の足音だ。




ラグナードの中で二つの思考が交錯する。




「なぜ同じ方向に複数の魔神が?争っているのか?」


「魔神同士は意思疎通して一緒に行動できるのか?」




前者は防衛本能。 後者は、ずっと心の奥にあった“誰かと意思を通わせたい”という願い。




魔神ほどの存在に近づく勇気がなく、ただ逃げてきた。 だからこそ、複数の魔神が群れで動く姿に、ラグナードはまだ諦めきれないものを感じていた。




もちろん、一歩間違えば餌になるだけだ。 それでも、ほんのわずかな期待を胸に、近くで様子を見ることにした。




やがて、3体の魔神がラグナードの前を通り過ぎた。 先頭の魔神は4本脚で、他の2体よりも一回り大きい。 後ろの1体は何かを担いでいる。




「……!」




ラグナードの全身が強張った。 担がれていたのは、上半身を失った魔神だった。




4つ聞こえていた足音のうち1つは、逃げていた魔神のもの。 そして、そいつは捕まり、食われた。




だが、おかしい。 なぜ3体は食い争わない? 魔神は本来、同族すら喰らうはずだ。




通り過ぎた魔神たちの気配が遠ざかり、ラグナードは小さく息を吐いた。




その瞬間。




ズザザザザ……




4本脚の魔神が立ち止まり、こちらを振り返った。 遠くからじっと見つめている。 まだラグナードの姿は見えていないが、気配を探っているのが分かった。




「全力で逃げるべきか……このままやり過ごすか……」




木に登るか、川に飛び込むか。 生き延びる手段を必死に考えるが、恐怖で足が震えて動かない。




くるな……くるな…… ラグナードは祈るように気配を消した。




ドカッ。




音がして、そっと視線を向けると、3体の魔神がその場に座り込み、残った餌を食べ始めていた。




息をすることすら怖い。 見つかれば死ぬ。




緊張を切らさず見つめていると、4本脚の魔神が低く呟いた。




「……魔神王……死んだ……次は……俺……」




残りの2体は荒い息を吐き、興奮しているようだった。




食べ終えると、4本脚の魔神は立ち上がり、森の出口へ走り去った。




ラグナードは大きく息を吐き、震える足を押さえた。 そして、先ほどの言葉を思い返す。




魔神王が……死んだ?




そんなはずはない。 魔界最大の巨体を持ち、炎の鎧をまとう絶対王。 勝てる魔神など存在しない。




……存在するはずがない。




だが、もし本当なら?




ラグナードの胸の奥で、恐怖とは別の何かが灯った。




あの強大な魔神王が? どうやって? 誰が?




気がつけば、ラグナードは立ち上がっていた。 警戒心は消えていない。 だが、好奇心がそれを上回っていた。




その衝動に逆らえず、森の入口へと歩き出した。

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