第42話 プレイヤーランクを上げよう
「『乾燥魔法』……生産以外に使い道が思い浮かびません! 恐らく僕じゃ、無用の長物になることでしょう……」
じゃあ取らないのかな?
「──でも取得します! 魔法なんで!!」
……あ、取るんだ。でも、ヨツバくんのことだから、何かしら良い使い道を編み出せそうだよね。
「スキルポイントは5と重ためですか……。でも、『洗浄魔法』は6だったはずなので、それよりは少ないんですね。魔法でもスキルポイントに違いがあるなんて新発見です」
「……スキルポイントの数なんてよく覚えてますね??」
「魔法系は印象強くって……」
あはは、と照れくさそうに笑っている。かわいい。
「よし取得っと。──かっんそうっ、かっんそうっ、かっかか、かっかか、かっんそうっ!」
「ヨツバくん!?」
「わ、ぁ……。『乾燥魔法』って使用すると、自動で歌い出すんですね。ちょっと恥ずかしいです……」
「……俺はかなり恥ずかしかったです」
出来るなら、もう歌いたくない……!
ヨツバくんは美少女なのも相まって、歌ってても可愛らしいけどね、ネイビーくんはキャラ崩壊です。……まぁキャラ崩壊関係なく、恥ずかしいのでもう歌いたくないはないんだけどね。
でも、『乾燥魔法』ってドライフラワーとかドライフルーツを作るのにも使えそう、と思ってて……。ヨツバくんが言っていたように、生産にならかなり使い道がありそうなんだよね。だから、これからも歌うはめになるんだろうなぁ。
あぁ……『ル』とか『ラ』とかで魔法を覚えたかったよ……。
「あ! それで、花壇にお花は植えるんですか?」
「お花は、明日の花祭りイベントが開催してから植えようと思ってます」
「なるほど! そうした方が、ポイントももらえますもんね〜! 因みにお花はなんのお花を植えるんですか?」
なんのお花……。
「……植えるお花を決めるの忘れてました。プラムさんから20種類の花の種をもらったので、その中から植えていこう、とは思ってるんですが…………。なんの種をもらったかの確認もちゃんとしてないんですよね」
「そうなんですね。じゃあ、どんな花壇になるかは咲くまでの楽しみにしてますっ」
「ありがとうございます。頑張ります」
後で花の種を確認して植えるものを吟味しよう。
「あ、ネイビーさん、忘れる前に渡しときますね」
そう言ったヨツバくんから譲渡されたものは『洗浄液』だった。数は3個。
昨日リタくんから99個もらったけど、『応急処置』でみんなを回復して3個減っていたから、また99個に戻ったことになる。
「今日、あの薬屋の女性に洗浄液の作り方を教えてもらってきたんです。頑張ったんですけど、30個作って、完成が3個……というシビアさでした」
「30個作って3個……!? そんな貴重な物を頂いちゃっていいんですか?」
「はい! 僕は洗浄液使いませんし、失敗はしましたが無駄にするのは無料の水だけなので元手タダです!」
「そうなんですね。ありがたく使わせてもらいます」
30個作って3個しか完成しないなんて大変すぎる……。そりゃあ値段も高くなるよね。
「なんか作り方なんですけど……、まず水に『洗浄魔法』を普通にかけて、その後に『洗浄魔法』を水に込めていくんですよね。魔法を水に込めるのが難しくって……、失敗するとですね、何故か水が濁って、においも臭くって、変な水になっちゃうんですよ……」
「なる、ほど……?」
水に魔法を込める……。イメージが湧かないや……。
「あ、込め方は洗浄師に就職してるとなんとなく分かるようになるんです。実際にできるかというと、できないんですが……」
「話を聞いてるだけで大変そうですね」
「ほんっとにもう! 大変でした!! 失敗した水も『洗浄魔法』をかけたら綺麗な水に戻れば良いのに、ゴミ認定なのか水ごとなくなっちゃうんです。だから、なくなったら井戸から水を汲まなきゃいけなくって……重たいし……すっごく重たいし……大変でした」
「あぁ……お疲れ様です……」
「ありがとうございます」
ヨツバくんはちょっとむすっと唇を突きだすような顔をしていて、かわいい。困っているヨツバくんにそんなことを思うなんて失礼なんだろうけど、どうしても美少女だからどんな顔をしていても可愛さが勝ってしまう。
少しの間、じっと可愛いお顔を見詰めていたら、パッと表情を変えたヨツバくんが首を傾げてこちらを覗き込むように顔の角度を変える。
「あ、長話で作業邪魔しちゃってすみません。他にやることってありますか?」
「他にやることですか……。今日やっときたい作業はもうないですね。強いて言うならプレイヤーランク上げくらいです。庭の拡張をもっとしたいんですけどプレイヤーランクが足らないので……」
「なるほど! ご一緒してもいいですか?」
「えっ、逆にいいんですか? レベル的に足手まといになると思いますが」
「そんなこと気にしないでください! 僕、ネイビーさんと一緒に遊びたいです!!」
「ありがとうございます。俺もヨツバくんと遊びたいです」
「ラッラビッ!」
「わ、ラビも一緒に遊びたいって言ってます」
──と、言うわけでヨツバくんとラビと一緒にプレイヤーランクを上げにいくことになった。
プレイヤーランクを上げるにはギルドクエストをクリアしたり、メインストーリーを進めたり、前に倒した『ダークタイガー』みたいな通称小ボスと呼ばれるモンスターの討伐が必要となる。
……そう言えば、2つ目の町トゥエに行く為のメインストーリーはしたけど、他はしてないや。
「ヨツバくんはメインストーリー進めてますか?」
「進めてないですね! というか、まだ続きが見付かってないらしいです」
「……そうなんですか?」
「はい。他のゲームだと、メニューからメインストーリーの進め方……というか、行き先というか、そういうの分かったりするじゃないですか? でも、このゲームは案内がなくってですね、自分で発見しないといけないみたいです。
実装されてないんじゃ、って言う人もいますが僕は実装されていると思ってます。リリース直後といえど、メインストーリーがトゥエまでっておかしいですもん」
「確かに……そうですね」
「メインストーリー発見されたらまた一緒にやりませんか?」
「! ぜひ、一緒にお願いします」
「良かった、嬉しいですっ」
にっこり笑顔のヨツバくんが可愛い。眩しいくらいだよ。
「それで、何でプレイヤーランク上げますか?」
「……効率が良いものってありますか?」
「効率……。経験値的には小ボスが良いんですが、倒すには時間がかかりますし、貢献度によってプレイヤー経験値の配分が変わるんですよね。
速さだけなら生産ギルドに生産物納品ですが、ネイビーさん作の物を納品は勿体ないですし……。うーん、何がいいかなぁ……」
「悩ませてしまってすみません」
顎に手を当てて、ヨツバくんがうんうんと唸りながら悩んでいる。その周りをラビがくるくる回る。
「あ、園芸屋さんで教えていただいた魔法ギルド見に行って見ませんか? もしかしたら、面白いギルドクエストがあるかもしれません!」
「確かに……良いですね」
「じゃあ魔法ギルドに向かいましょう!」
そうして私達は、ファルシュトへと飛んだ。
◇ ◇ ◇
マイルームからファルシュトの噴水広場にワープしたあとは、てくてくと目的地に向かって歩いていく。マップを見ながら、教えてもらった地点へとひたすら進む。
まず冒険者ギルドに向かって……、その脇にある道を進んでいくと魔法ギルドはあった。
「ここですか……。よし行きますよ」
「はい」
ヨツバくんが気合いを入れるようにぐっと握り拳を作ってこちらを見る。それからガチャリと扉を開けた──。
「──旅人か!? ちょうど良いところに! 急ぎの荷物があるんだ。これをシュマリエの魔術師ギルドに運んでくれないか? お礼は弾む……!」
開けた途端、ボサボサの髪の毛にぐるぐるメガネをかけた男性が駆け寄ってきて、そう言った。そして、システム通知。
〈メインストーリー『シュマリエ』を開始しますか?〉
視界に選択肢が浮かぶ。選択肢は『はい』と『いいえ』と『自由回答』の3種類。
戸惑っていたら隣から感嘆混じりの声が聞こえた。
「わぁ……流石ネイビーさん……」
──ちょ、ヨツバくん!?
魔法ギルド教えてもらったのはヨツバくんの手柄だよね!?




