第35話 金曜日の朝
今日は金曜日。朝です。
今日は何をするか……、は決めてある。
トゥエの町に布を買いに行こうと思います!
包帯があと一つしかないからね。包帯に良さそうな布が欲しい。それに、裁縫が楽しそうな布も買いたい。なんて言ったって、今の私は大金持ちだからね。
3人のお洋服に刺繍をしたおかげで、今のお金は13万をこえている……! 3万くらいパーッと使っちゃう!?
──いやいや、調子に乗っちゃだめだよね。折角お金が手に入ったなら、お庭を広げる資金にしなきゃ……! でも、オシャレな布いっぱい欲しい……。いくらあっても足りない。生成りの布も少なくなってきたから買っておきたいし、『ゆらめきシリーズ』もまた買いたい気持ちがある。『ゆらめきシリーズ』売ってるかな?
取り敢えず、まずは包帯だー!
◇ ◇ ◇
「包帯かい? 俺も詳しくはねぇなあ。……というか、洗浄魔法がかかっていれば布は何でも良いんじゃないのか?」
わ、ぁ……マジか。この世界の包帯ってそんな感じなんだ。
「包帯なんて消耗品だろ? この布なんて安くて量も多いぜ!」
そう言って見せられたのは、青地に黄色の柄が入った布だった。これを……包帯にする……!?!
実際には巻かないし、『応急処置』に使ったらゲームシステムのどこかに消えていってしまうけど、流石に青地に黄色の布は嫌すぎる。
「……白がいいんですけどないですか?」
包帯といえば白! でしょ!
清潔感もあるし……。派手な絆創膏ならまだしも派手な包帯は嫌だ……。
「白は高いぞ」
なるほど。
「じゃあ、生成り……?」
「分かった、いくつか安いの出してきてやる」
そうして出てきた棒に巻かれた大量の布たちを見るのは壮観だった。生成りって、染色せずさらしてもいない布地のことだから、厳密な色の決まりがない。だから、私の目の前には、微妙に色味が違う黄色みがかった白色の布が並んだ。
わぁ……たくさん……!
「一番安いのが一巻き200Gだ」
「えっ安くないですか!?」
「こんなもんだろ」
棒に巻き付けられている量はかなり膨大で、しばらく包帯に悩まなそうな量だというのに、値段はリンゴ2個分……!
私は200Gの布の中から、一番肌触りが柔らかそうな物を包帯用に選んだ。安いって魅力的……!
裁縫用の生成り色の布も少なくなっていたから、裁縫用に質が良くて色がきれいな物──1000Gした──を買った。じっくり選ばせてもらえて楽しかった。
お次は、ゆらめきシリーズをまた買えるか聞かせてもらおう。前に買ったのもこのお店なんだよね。だから、愛用させてもらってる。……もしかしたら他のお店でも買えるかもだけど……。
「あの、名前にゆらめきが付く布はありますか?」
「ゆらめきぃ? ──それは、自分の目で探してみな」
「! わかり、ました」
簡単には買わせてもらえない、と。自分で探し当ててこそ、なのかな。
このゲームは買って持ち物に入るまでは、その品物がどんな名前でどんな物なのかは分からない。買いたいと思って手に取れば一般名称と値段が表示されるだけなのだ。今の状況なら『布』『200G』みたいな感じ!
こういう時、鑑定スキルみたいなものがあればズルができたのに、って思っちゃう。
でも、『水のゆらめき』だって自分で見付けたものだもんね! よし、頑張ろう!
◇ ◇ ◇
ふふん、良いもの買えちゃった!
ゆらめきのために頑張ろう、なんて思ったけど早々に諦めて、自分が裁縫したら楽しいだろうなって布をひたすら買い漁ることに目的を変更した。そのおかげですっごく楽しい買い物になりました!
トゥエ柄が美しいものもたくさん買った!
……本当にトゥエ柄、という名称かはわからないけどね。また聞くの忘れちゃった。結構原色の派手な柄が多いんだけど、今回はパステル系も見付けたので買った。可愛い。
そして、今回の一番の掘り出し物は、桜みたいな花びらの透かし模様が美しい薄ピンクの布。すっごく綺麗で、一目見て買うことを決めた。俗に言う一目惚れってやつ。
そして買ってから確認したら『透かし桜』という名前の布で、『この布を纏うと気配が薄くなる』と書かれていた。わーい、絶対レアだ!
だって、普通の布だと、○○色をした布、くらいの素っ気ない文章しか書かれてないんだもん。私が勝手にトゥエ柄、と読んでいる布も『青と黄色の布』が名称で、説明まで『青と黄色の布』だったりする。素っ気ないよー。
でも、ゆらめきシリーズは見付けられなかったけど、見た目が素敵で効果も強そうな布を手に入れられたのがすっごく嬉しいし、それ以上にこの世界にも桜があるんだー! って嬉しくなっちゃった!
お庭にも桜植えたいなぁ。……あ、でも、植えたら和風なお庭になっちゃうかな。洋風なお庭にしようと思ってたんだけど悩んじゃうね。
あぁ早くこの『透かし桜』の布を使いたい! と思うけど、使い道はちゃんと考えたいから、今日やることは包帯作りです。
包帯……5センチ幅くらいで切って、洗浄魔法かければいいかな? そう言えば、もらった包帯どのくらいのサイズなんだろう。それを参考にしてみよう。
……と、持ち物から出してみたところ、包帯はランチーフにでもなりそうな長方形の布だった。色は私が買った布に似たような色をしている。
長方形でいいんだぁー。固定観念壊されていく。
え、でも、もらったものが長方形だったとしても、細長い物が包帯じゃないとは言われてないよね? 包帯になるか試してみよう。
生成りの布の端から5センチ程に『直線』機能を使いながら線を引いたら、裁断。端処理もせず洗浄魔法をかける。ルルルと歌うたびに、馬鹿してぶっ倒れたことを思い出す。あの時はヨツバくんにも迷惑かけたなぁ。
よし、終わり。一度持ち物にしまって確認を……。
おぉ! 包帯になってる!
長方形の包帯もしまってみたら、同じ枠にしまわれた。包帯×2になった。……形違うけど同じとこにしまわれるんだぁ……。
それじゃあ、包帯量産と洒落込みましょう!
作業を始めてすぐ気付いちゃったんだけど、テーブルより絶対床の方がやりやすいじゃんと気付いてしまって、床で作業することにした。靴のままでも泥一つ持ち込まないシステムだからできること。
お洋服作りも床でやったから、床が懐かしいよ。
そうして、私はひたすら5センチ幅ずつ線を引き続けた。大量に引き終わったら『裁断』で一気に切り離す。
なにこれたのしい……!
そこからは無我夢中で作り続けた。線を引くのも『直線』機能で簡単だし、『裁断』で一気に切り離せるのが楽しすぎて夢中になってしまった。
私は、できた包帯──洗浄魔法をかける前のもの──がこんもりと山になって、確実に100個以上ありそうな量になってから、手を止めた。
つ、作りすぎた……。
まぁいいや、いつかは使うことでしょう!
では、洗浄魔法をかけていこう。
「ルゥッル、ルル、ルゥルッル、ルルゥ!」
なにか杖でも振って魔法使い気分に浸りたくなる。『木の杖』は持ってるけど、あれは魔法使い用の武器ではなく、打撃武器だからそれなりに大きくてごつめなんだよね。小さくてオシャレな杖が欲しいなぁ〜。
よーし、洗浄魔法かけ終えたぞ!
……おぉ? 量が多かったからか、MP20も消費した!
さっき消費したMPは10だったから2倍だ。あ、でも……さっきは1個だったのに、今回はそれの推定100倍だから2倍の消費MPで済んだのは軽く済んだほう? ……下手してたらまたぶっ倒れ案件起きてた!?
あっぶな〜……。
胸を撫で下ろしながら、洗浄魔法をかけてしっかり包帯になっているだろう布達を持ち物にしまっていく。……うん、包帯になっているね。数は、99の枠が一つと、32の枠が一つ。つまり包帯131個です。わぁ……いっぱいだぁ……。
「……そう言えば、毛皮なら洗浄魔法がかかったものが大量にあるのに、それは包帯に含まれないんだなぁ……」
包帯を作る、って気持ちがなかったからシステムに包帯認定されなかっただけかも、と思い試してみることにした。だけど、包帯にする、と強く思いながら洗浄魔法をかけてみたけど、毛皮は包帯にはならなかった。
……まぁ、毛皮の包帯は柄物より嫌か。
それもそうか、と納得した。柄物でも大丈夫らしい、と聞いちゃったから毛皮でもワンチャンいけるかもとか考えちゃったよ……。
ピピッ。
気付けば1時間経過していた。そのことにセットしていたアラームにより気付く。……セットしておいて良かった。
それじゃあゲーム内睡眠です。
一眠りしたらお仕事頑張ろうー!




