第31話 転職先
「『平和な旅人』……」
目の前に1種類だけ表示された職業を選択すると、説明が表示された。えぇっと。
「『攻撃スキルを持たず仲間に守られ平和に旅してきた者』」
なる、ほど……?
確かにヨツバくんに守られながら戦闘をしたし、トゥエに行けたのもヨツバくんのおかげだから、全部あってるかも。ヨツバくんのおかげで私は常に平和である。
その一文が大きく表示されていて、下に小さく他の文章も書かれている。それを読もうとしたら、声が聞こえてきたので読むのを中断した。
「平和な旅人、ですか。面白いですね」
「ね、面白いね! やっぱり武器スキル……というか、攻撃スキル? なしだと別職業あったんだねー! ちょっと前の私ナイス〜!」
「わかるぅ。僕も一つくらい取っちゃいなよ、とか言って取らせてたら終わってた!」
「ほんとね!」
わいのわいの喋るみんなの声にハッとして後ろを振り向く。自分の世界に入り込んでみんなを忘れていた。みんなを見ていたら、「あ」と声をあげたリタくんがこちらに近付いてくる。そうして、神官様に話し掛ける。
「転職って、今すぐしないで一度やめて、よく考えてから選ぶ、とかもできますか?」
「もちろん、できますとも。職業を決めてしまいますと夜を跨がないと神は応えてくれなくなりますが、決める前であれば関係ございません」
「なるほど。その場合、もう一度神官様? に声をかけて、って感じでしょうか?」
「いいえ。一度啓示を受けたあとであれば、あちらの神像からいつでも転職が可能となっております。……ですが、道が増えていたとしても、啓示を受けなければ神像に道は増えません」
「分かりました。詳しくありがとうございます!」
「俺も啓示をしてくださりありがとうございます」
頭を下げたリタくんと一緒に私もお礼を告げておく。転職先を示してもらったのに、お礼がまだだった。
「良いのですよ、神の子は等しく家族なのですから」
にっこり笑ってそう言ってくれる。優しいお爺さんである。それにしても、訂正がなかったということは神官様であっているのかな?
なんて、考えている間にリタくんに腕を掴まれて、ぐいぐいとみんなのところまで引っ張られる。
「ネイビーくんおかえり〜」
「……ただいまです」
「ネイビー、まだ転職先は出てるの?」
「出てますね」
「そっか、一度やめれそう? 僕は神像からの転職試してみてほしいなーって思う。あと、転職前にステータスのスクショも取っておいてほしい」
「なるほど。……転職をやめる、選んじゃっていいですか?」
「うーん、……あ、平和な旅人のスクショ? 欲しいなぁ」
「分かりました。……スクショしました」
「ありがとう〜。みんなは何かある?」
「私も平和な旅人のスクショが欲しいくらい!」
「僕もです」
ということで、一度転職をやめて……と。それで、スクショをみんなに送付したら、リタくんからは私が啓示を受けてる最中のスクショが送られてきた。神官さまとネイビーくんのアバターの周りをキラキラしたエフェクトが舞っていて幻想的で綺麗だ。……キラキラ私からは見えなかったなぁ……。
そんなことを考えていたら素っ頓狂な声が聞こえてくる。
「エッ、ね、ネイビーさん本当に転職するんですか!?」
声の主はヨツバくんである。
「折角なのでしようかと思ってますが……」
「この職業、武器スキルが取れないみたいですよ!? 武器スキルを抜いた攻撃スキルは取れる、みたいですが違いがわかりませんしこれって辛くありませんか……」
「わぁお本当だ、姫プ職かな??? でも、武器スキル取れないってことは? もしかして……!?」
「──回復職だったりして!!」
「それー!」
きゃーっ、とリタくんとプラムさんが盛り上がる。
「確かに回復職な可能性はありますね。 ……それでも、武器スキル取れないの辛くありません!?」
「もうヨツバくんってば、ネイビーにその心配はいらないんじゃない? サービス開始から6日間も武器スキル取らなかった人だよー!」
「しかも武器スキルは取れない代わりに、何でも武器装備ができる特大サービス付き……!」
この職業そういう感じなんだ……。まだ読んでなかった。ふむふむと読み進めていくとみんなが言っている通り、取得出来る武器スキルはない代わりに、何でも武器を装備できるみたいだ。それで、武器スキルを抜いた攻撃スキルは取得可、と…………。どんなスキルがあるんだろう?
武器スキルを抜いた攻撃スキルは特に載っていないから想像するしかない。一応、攻撃手段は残されてるよ、ってことなんだろうけど……。うーん、攻撃魔法、とかは覚えられたりするのかな……?
「でも……武器スキル……いつかは欲しくなりません……?」
「うーん……皆さんに迷惑を掛けてしまうかもしれませんが今は必要ないですし多分大丈夫です」
「そう、ですか……???」
「そんなにヨツバくんが心配なら『平和な旅人』から『旅人』に戻れるか聞いてきてあげる!」
そういったリタくんがサクッと話を聞いてきてくれる。そうしたら、元の職業に転職も夜を跨げば大丈夫だそうだ。それを聞いたヨツバくんは胸を撫で下ろした。
「よかった。それなら転職してみるのも良いと思います! …………でも僕、もしも聖女職が武器持っちゃいけない職業だったら諦めようと思います……」
「よ、ヨツバくん……」
「聖女にはなりたいですが、武器振れないなんて辛すぎますよ!!!」
ヨツバくんは力強くそう言った。諦めないでほしいけど、そんなにも武器は使いたいんだね。ヨツバくん、聖女になって欲しいけどなぁ……武器が得意な聖女って格好良いと思うし。
「じゃあ神像行こっか〜。ネイビー転職しちゃお!」
「はい」
ちゃんと現在のステータスもスクショした。神像でどうすれば転職画面が出せるのか一瞬悩んだけど、「転職がしたいです」と心に思い浮かべるだけで表示された。平和な旅人に転職、を選択して……と。
おぉ……。変わった、のかな……?
特にエフェクトが出る、とかもなく静かに転職を終えた。
「ステータスは変わった?」
「……変わってますね」
全員、前後のスクショが欲しいといったので全員に送る。転職後のステータスは、全体的に下がっていた。レベル1になるんだから当たり前かな?
「うーん、一応初期の旅人よりかは強いけど、って感じ。うん、正直に言うと弱いね。……まぁレベル1だし」
「特に攻撃値がめちゃくちゃ低いねー。その分なのか、防御と魔防が高め? 平和に旅するなら防御は高くないとっていう優しさとかかな〜?」
「ありえるぅ」
「…………というか、器用めちゃ高いですね」
「あ、それねー」
……わかる。私も器用の高さはいつもびっくりしてる。他の値より倍近くあるんだもん。転職前も後も器用だけ突出してる。私が取得してるスキルってそんなに器用上がりやすいんだなぁ……。




