第25話 猫にプラム
「猫にプラム……魔力酔いしなくなる……猫にプラムを与えても、その価値を知らない猫にとっては何の意味もないことから…………」
プラムさんは呆然としながら、説明を読み上げている。
「その、色々びっくりですよね」
「──ほんとにね!?」
「わ、」
プラムさんがぐいっと身を乗り出して距離が近くなる。それにびっくりして私は咄嗟に身を引いた。
「あ、ごめんね。驚きすぎちゃって、つい。……それにしても、魔力酔いか〜。パッと思い浮かぶのはMP回復薬をたくさん飲める、とか? 短時間に多く摂取すると具合悪くなるゲームとかあるもんねー」
「なるほど」
「あとは、説明通り、プラムを食べると魔力酔いするけど、この効果があれば魔力酔いしないよ、って感じかなあ。ここに来て、プラムめちゃレア疑惑…………」
「果物屋さんにも売ってないですもんね」
「だよね! あの果物屋さん種類豊富なのにな〜とは思ってたけど……、プラム自体がレアだったとは。プラムってば、魔力に関係がある果実なのかなぁ? プラム食べたら魔力上昇、とかだったら胸熱! プラム見付けてみたいなぁ……」
プラムさんはキラキラ、とお目々を輝かせて手を組んでいる。可愛いなぁ、と思ってみていたら、プラムさんは突然ハッと息を飲んで俯いてしまう。
「……はぁ……『猫にプラム』って情報流したら、このデザイン流行っちゃわない? これって、私モチーフなのに……」
「確かに…………」
「うぅん、これも秘匿かなぁ……。魔法使い志望が、みーんな猫にプラム柄の装備してたらやだもん私……」
「それは、そうですね……」
「あ、でも作ったのはネイビーくんだからね! 情報流したかったら流していいんだからね!? ネイビーくんがしたいようにしてね」
そう言われて、寸の間考える。
でも、考えるまでもないかな。情報を流す、とかあまり興味がないし、プラムさんが秘匿したいなら秘匿しようって思っちゃう。
私も色んな人が流してくれる情報で助かっているものの、全員が見付けた全ての情報を流している、とは思わないし……。
「秘匿で大丈夫です」
「そーお? オーダーメイドがバンバン入って稼げるかもしれないのに……」
「この図案はプラムさんのために考えたので、他で使う気はないので大丈夫です」
「ネイビーくん……! 良い人……!!」
うるうると拝まれる。猫ちゃん可愛い。あざとかわゆすぎる。
「それにしても、この木の腕輪も猫とプラムのデザインなのに効果が付かなくて、ネイビーくんの時はどうして効果が付いたんだろう……。不思議……」
確かに……。なんでだろう。……あ。
「もしかしたら『串刺し』のおかげかもしれません」
「あ! 『串刺し』! ネイビーくんも持ってるんだね〜。クリ率アップだから確かに可能性あるかも……。彫刻向きのクリ率アップ称号はまだ見付かってないらしいから、そうなのかも!」
「この称号があると効果が付きやすい気がします」
多分。……だって、めちゃくちゃ序盤で取っちゃったから比べようがない。運が良いだけかもしれないし、全然わからない。
…………それに、『串刺し』初めて取ったのも私だって言ってないんだっけ? ワールドチャットの報告もヨツバくんに任せちゃったし知らないのも当然かぁ。
話そう、として思い留まる。
あんな……あんなっ『串刺し』取得エピソードバレるの恥ずかしいよ……!!!
「やっぱり『串刺し』大事なんだね〜……って、ネイビーくん? どうかした?」
「なんでもないです」
首を振ると同時に通知が届く。ちらりと視線を動かして送り主を確認した。送り主は……ヨツバくんだ!
「あ、その目の動きはメッセージでしょ〜! 私に気にせず確認して大丈夫だよ」
「すみません、確認してみます」
『今何してますか?』
いつも通りのメッセージだった。多分、今日も裁縫するところを見に来たい、ってお話かな? でも、今は──。
「もしかして、遊びのお誘い? それだったら私帰るよー!」
それは、申し訳ない、というか……。どうしよう。
「……ええっと、フレンドから何してるかって質問なんですけど、多分裁縫してたらその風景を見に行きたい、って質問だと思うんですよね」
「えーなにそれ素敵! …………私もネイビーくんが生産するところ見たいなぁ、って思っちゃったけど私までいたらお邪魔かな? というか、ネイビーくんはこれから生産する予定はあるの?」
「……しようかな、とは思ってました。プラムさんは俺のフレンド──ヨツバくんって言うんですけど──一緒でも大丈夫ですか? ……あ、ワールドチャットで『串刺し』の報告をしてた子なんですけど……」
「わぁ! 『串刺し』の子! 興味あります! あってみたいなー!」
「一緒でも大丈夫か聞いてみますね」
「うん、お願い!」
よし、メッセージを返そう……、と思って指が止まる。なんて、なんて送ろう……! こういうの苦手……。率直に書いちゃおう……。
『今フレンドのプラムさんと一緒にいます。ヨツバくんがプラムさんと一緒でも大丈夫でしたら、ぜひ来てください』
こんな感じで、……って、わ、もう返信が来た。
『プラムさんと一緒なんですか!? 僕は大丈夫ですし会ってみたいです……、が、お二人のお邪魔になりませんか?』
『プラムさんもヨツバくんに会ってみたいそうです』
『わぁ、嬉しいです! ……でもそしたらラビはお留守番ですね。言い聞かせたらすぐそちらに行きます!』
『待ってます』
よし、無事に任務完了。
「ヨツバくんも来てくれるそうです」
「やったあー! たのしみ」
可愛い猫ちゃんと可愛い美少女と一緒にいる怖いお兄さん……事案かな?
「あ。……椅子が、足りません……」
「あ! も、しかして……この椅子ってヨツバさんの?」
「そうです」
「ごめんなさい」
プラムさんはスッと立ち上がって、スッと隣に椅子を取り出した。そして、座る。
「実は持ち歩いてました……! 勝手に使ってたことヨツバさんに謝らないと……」
「いえ、言ってなかった俺が悪いですから。俺が謝らないと……。なんというか、もう私物のような気持ちになってて困ってます」
「それは……でもずっと置いてあったらそんな気持ちにもなっちゃうかもね」
プラムさんと苦笑していたら、突然ガチャッと扉が開く音が聞こえた。
私とプラムさんはパッと扉の方を振り向く。
考えることは、いつものヨツバくんだったら律儀にノックをしてるのに何かあったんだろうか、なんて。そう思いながら振り向けば、黄緑色の髪の美少年──リタくんが扉を開けていた。その後ろには慌てた顔のヨツバくん。
「ネイビーきたよー! ヨツバさんも一緒ー!」
「リタ、くん……」
──そういえば、リタくんにも時間が空いたら来てほしいってメッセージ送ってたんだった……。
私のフレンド全員集合しちゃった……。




