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第7話 露店巡り


「おぉ……良い匂い……」

 

 露店を眺めていると一番人気は、料理を販売している露店ぽい。どこでお店を開いていても、人が集まっているなーってところは大体料理屋さんだった。

 しかも、お店で買ったものをその場で食べる人ばかりだから、辺りに美味しそうな匂いが漂っていて、それも客寄せとなっている。

 まぁ、空腹にもなるし、食べるの必須なら美味しいものたべたいもんね。

 

 因みに、露店、と言いながらも、自動取引も出来るみたいだ。その設定がしてあるお店を選ぶと売買ウィンドウが出現して、人とやり取りをせずに買うことができる。人気の料理屋とかも、お店に店主ぽい人はいるけれど、自動取引にしているみたいなので同時に何人も買い物しているのが見て取れる。

 しかも、お店に店主がいなくても、取引ができるみたいで初めはびっくりした。だからか、店主不在の露店も数多くある。便利でいいねー。

 店先には何が売られているか分かるように商品が並べられているんだけど、自動取引が設定されているお店は品物に触ることすらできなかった。店主がいるところは、触って確かめたり、とかもできたんだけどね。

 

 もちろん、どの設定にしていても、持ち物にしまうことはできないし、露店から一定以上アイテムを離すこともできない。当たり前だよね。


 

 あとは、店主がいるところは値切る人がいたり、逆に沢山買った人におまけを付け足したり、と自由な取引をしているのが見受けられるので、そう言う事が不得手な人は自動取引に設定して店先にはいないほうが良いだろう。

 

 私が露店をやるときはどっちのタイプにしようかな。常識の範囲内の値切りならわちゃわちゃ楽しいだろうし、おまけを付けたりとかもいいな〜!って思うんだけど、変な人が来たらなーと思うと自動取引かな?

 一応、自動取引にしながら店にいることも出来るみたいだから、そうするのが一番楽しいかも。雑談しながら取引とかしたいし、気が合いそうな人がいたらフレンドにもなりたい。


 

 露店は配置に決まりがないみたいで、装備屋の隣が料理屋だったりとごちゃごちゃしている。多分、登録した順とかそう言うのなんだろう。

 まず装備を買いたい、と思ってふら〜と見てるんだけど、心惹かれる装備は少ない。ここで言う心惹かれるは、性能もそうだけど見た目のオシャレさも大事にして探している。……エンジョイ勢ってさぁ、性能よりそういうの気にしちゃうよね。

 ソシャゲでも、強いキャラが出るより、見た目が好みのキャラが出る方が嬉しかったりさ。


 今のところ一番気になってるのは木彫りのリス。え、リスだよ、可愛くない? なんと、価格は500G! りんご5つ分と同じ値段だね。

 作るのに時間がかかる品物だろうし、たった500Gは安いと思うんだよねー、でも装備更新してないし生産材料もみてないのに買っていいものか。うーん。


 


「お買い上げありがとうございまーす」


 買っちゃった。

 ……だって…………、装備の更新も材料もいつでも出来るけど、この子には二度と出会えないかもしれない。またこのお店を見付けられても次のときには売り切れてるかもしれないし……、とか考えてたら、気が付いたときには買ってたよね。

 へへ、でも良い買い物しちゃいました。ほくほく。

 ……所持金残り1000Gだけど!


 早くマイルームに飾りたいなー。あと多分、このお兄さんアバターでちんまりしたリスを手のひらに乗せてるのギャップでめちゃかわだと思うんだよね。マイルームに帰ったらリスさんと記念写真撮らなきゃ(使命感)。


 …………よし、暫くは初期装備で頑張ろう。次は素材を見に行こう!



  

「わぁ……!!」

「……っ!?」


 素材を探して歩いていたら、突然間近で大きな声を出されてびくっと肩を弾ませた。ちら、っと声を出した子の方を盗み見てみると──長いロングの金髪の女の子だった。何故かこっちを見ていて一瞬目があったような気がしたけど、余りにも眼力が強くて怖かったので、すぐに目を逸らして場所を離れる。


「あの、すみません!! えぇっと、青い三つ編みのお兄さん!!!」


 …………離れ、ようとしたけど、『青い三つ編みのお兄さん』って……もしかして、私? 私しか、いない感じ??

 周りを見てみるけど、他に青系統の髪色で三つ編みをしている男は見当たらない。名指し(?)なら仕方ない。聞こえないように小さくため息をついてから振り返った。

 

「…………俺?」

「そうですそうです! あの、えっと、……不躾な質問なんですが、その……」

 

 不躾な質問、って言われると聞かれる前から既に怖いよね。どんな質問をされるんだろう。変な子に目を付けられたかも、と身構えて次の言葉を待つ。

 

「っその髪型はご自分でやられたんですか……!?」

「へ、…………そう、だけど?」


 ………………え、溜めに溜めて、髪型の話?


「わぁっ本当にご自分でやられたんですか!! すごいですねっ、素敵です……!」

「…………ありがとう?」

「それで、本題なんですが」


 褒められたー! 嬉しいー! と思ったら、本題はまだなのか。褒めるために声を掛けてくれた良い人なのかと思ったんだけど、用件の前に取り敢えずお世辞を言っとけ、みたいなあれだった?


「もし良かったらなんですけど、あの」

「…………」

「えっと、僕、……じゃなくって、私の髪の毛を結んではもらえませんか……!?」

「……!?」


 え。えっ? ……ちょっと、どういうこと??

 流石に私も、VRで他人の髪の毛を結んだことないよ。


「……やっぱり駄目ですか?」

 

 クーン、って雨に打たれている子犬みたいな顔で見詰められる。水色の瞳が水面の反射みたいに、キラキラうるうるしていて、可愛い。……私は、イケメンに弱いけど同じくらい美少女にも弱いんだよね。


 ……まぁ、この子、多分中身は男の子だけど。僕って言い掛けてたし。冷静に考えてみると、ネナベに声掛けるネカマ、ってかなり面白い。……うん、あんまり冷静じゃないわ私。


「……当たり前なんですけど、ずっと断られてて…………」

「……それは、まぁ」


 そうだろうね。


「でも、お兄さんは話を聞いてくれるので良い人です。大体怖がられてすぐ逃げられてたので、嬉しいです!」


 …………。本当は私も逃げようとしてたけどね。現実でもそうなんだよね、客引きとかナンパとか上手く躱せなくて、いつも困ってる。時にはガン無視も必要なんだろうな、とは思ってるんだけど上手くできない。


「……自分では結んでみなかったんですか?」


 そう言えば、ネイビーくんって敬語キャラ設定だったなーと思い出したので、軌道修正。


「やってみました! FJOって今日のサービス開始まで一週間あったじゃないですか? だから一週間頑張ったんですけど、僕、じゃなくて私、三つ編みすら上手く出来なくって……」

「……クリエイトモードじゃなくても可愛い髪型多くありましたよね?」

「そうですね……。そう、なんですけど、唯一の髪型にしたいなーって思っちゃって。お兄さんみたいな髪型憧れます、唯一ですよね!!」

「……それは、どうも」

「お兄さん三つ編み沢山してあるから得意そうだなーって思って声掛けたんです! あっ、勿論言い値でお金とか素材とか払いますので! ど、どうですかっ!?」


 圧。でも、お金と素材支払いかー。りんごとリスに使っちゃってお金はないし、生産用に素材も欲しかったんだよね。


「………………因みに、どんな髪型にしたかったんですか?」 

「エッしてくれるんですか!?」

「……っまずは、聞くだけ! 聞くだけですから」


 この子に会話の主導権握られてるよ〜。そのせいで、早くもネイビーくんがキャラ崩壊してきてる。もう、この子ってば会話のテンポが早い、さてはリアルコミュ強だな??

 …………それにしても、聞いて断る、なんて酷い真似出来ないだろうし数分後には請け負ってるんだろうなぁ私。


 まぁ、こういう経験も楽しいよね!

 ゲームだし、現実じゃ絶対避けることしてみるのもありかも!

 

 

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