第15話 プレゼント
それじゃあ、完成したハンカチをヨツバくんへ渡そう! ……と思ったら、少し緊張して手が震えてくる。何度経験しても誰かにプレゼントを渡すときってドキドキするし、同じくらいワクワクもするよね。
本当はラッピングとかした方が良いんだろうけど、そんな用意はないから諦めた。でも、せめてもの気持ちでハンカチを丁寧に四つ折りに畳んで、刺繍が見える面を上にする。
そうして、ヨツバくんに差し出した。
「……ヨツバくん、いつもありがとうございます。恐らく、イベントの特効装備になると思うのでもし良ければ使ってください」
「ありがとうございます……!! 特効装備ありがたいですし、特効にならなくても使いますね!」
きらきらと目を輝かせたヨツバくんが受け取ってくれて、ほっと息をつく。
「じっくり見てもいいですか?」
「はい」
「ありがとうございます!」
ヨツバくんは、早速顔を近付けてじっくりと刺繍を見ている。そんなによく見られると少し恥ずかしいし、上手く出来た自信はあるけど「ミスがあったらどうしよう」と不安も過る。
そんな不安もヨツバくんの言葉で吹き飛んでいく。
「白詰草の花束めちゃくちゃ可愛いですね! クローバーも可愛いですし……凄すぎます……! めちゃくちゃ細かくて綺麗なのでいくらでも見ていられます」
「ありがとうございます」
えへへ、褒められた。嬉しい。
恥ずかしくなってくるけど、ヨツバくんのハンカチ鑑賞はまだまだ終わらない。ヨツバくんはハンカチを広げて「わぁっ」と歓声を上げる。
「広げると更に豪華ですね! 本当可愛いです! …… この可愛さを上手く言葉で表現しきれないことが悔しいです」
「…………その、ありがとうございます。褒められすぎて嬉しいんですが恥ずかしいです」
「わ、裏まで綺麗ですね!」
「えっ。……流石に裏までは自信ないのでじっくり見ないでください」
「えぇ、綺麗なのに。……でも分かりました」
…………本当に分かってる!?
渋々頷いた感を感じる。後で見よう、みたいな副音声が聞こえてくるような顔をしている。
「どんな効果か見てもいいですか?」
「はい」
ヨツバくんに有用な効果がついているといいんだけどな……。まぁ最悪はイベント期間だけ使ってもらって、イベントが終わったら飾ってもらおう。
「えぇっと、『敏捷+4』と……エッ『幸運アップ』!?」
「えっ。……そんな効果も付くんですね。もしかして、四つ葉のクローバーだからですかね」
「そうかもしれません。……材料だけじゃなく、刺繍のモチーフによっても付く効果が変わる……のかもしれません……。それに、布が『水のゆらめき』なので魔力関係が上がると思ってたんですが『敏捷』ですし、クローバーから……なんですかね」
「なるほど……」
「……そうしたら、プラムのハンカチの魔力上昇も、プラムが魔力に関わる可能性がありますね」
「…………なるほど?」
えっと、クローバーは敏捷と幸運が上がりやすく、プラムは魔力が上がりやすいモチーフな可能性がある、と……。えっ、FJOの生産奥が深すぎて難しい。
「取り敢えず装備してみますね! ……ポッケないんですが、どこに装備されるんでしょう……?」
「確かに……」
ご、ごめん! ワンピースにポケット付ければ良かったね。
「装備しました! ……装備は、されたはずなんですが、ど、どこに……?」
ぽんぽん服の上から叩いてハンカチを探すヨツバくんを見守る。
「あ、ここ膨らみがありますね。ポッケないのに……」
「…………うわぁ!?!」
ちょ、ちょっとヨツバくん……!?
「スカートめくって確認しないでください!!」
「あ。……すみません!」
びっくりした。この子ってば、スカートをめくりあげてハンカチを探し始めたから、びっくりしちゃった。ほんと……なにしてるの……。
「つい気になってしまって……。でも、ハンカチありましたよ! ワンピースに張り付いてました」
「張り付いて…………?」
「はい! もしもポッケがあったとしたらそこに入れるだろうな〜〜って位置に張り付いてました」
「…………凄いですね……」
その言葉しか出ないよ! どうなってるの!?
まぁ確かに、他のアクセサリーも装備をすると凄い粘着力がなきゃつかないようなとこについたりするもんね。
「本当嬉しいなぁ……」
ヨツバくんはハンカチを装備から外したようで、またハンカチを手に抱えてにこにこしている。
「あの、本当に、もらっちゃいますからね……!?」
「はい」
「うぅ……嬉しいなぁ……。凄く可愛いハンカチですし『幸運アップ』がついているアクセサリーなので、もっと先に進んだあとでも使用できそうで嬉しいです!」
「良かったです」
本当良かった!
喜んで貰えて嬉しいし、ヨツバくんの役に立つ効果が付けられたことも嬉しい。
◇ ◇ ◇
「ラビッラビッ!」
ハンカチを渡したあとはそのまま雑談していたんだけど、突然ラビが立ち上がってヨツバくんの服に噛み付いて引っ張り出したことによって、会話が止まる。
「……ラビ? ど、どうしたの?」
「ラビィ、ラ、ラビッ!」
「わ、ぁ!」
無理矢理椅子から立ち上がらされたヨツバくんが、と、と、と、とたたらを踏む。
「大丈夫ですか?」
「はい。……ラビ、もしかして戦闘に行きたいの?」
「! ラビッ!」
「そっか、戦闘かぁ……」
…………ヨツバくんってばよくラビの言いたいことが分かるね!? 流石飼い主、なのかな……?
「ネイビーさん。僕、もう少し生産見ていきたかったんですが、ラビと一緒に戦闘に行ってきます。……あ、もし良ければ一緒に戦闘行きませんか!?」
「えっ。レベル差もありますし迷惑では……」
「そんなことないですよ! ……生産がしたかったら大丈夫なんですが、ネイビーさんこそ迷惑じゃなければまだ一緒に遊びたいです」
「ラビッ!」
どうしよう、と思ったらラビが私の方に来て私の服も引っ張る。えっかわいい……。
「ラビも一緒に行きたいみたいですしどうですか?」
「……俺も一緒に行きます」
「やった! ありがとうございます!」
「ラビィッ!」
ヨツバくんとラビが「やったね」とハイタッチしてる。ハイタッチできるんだラビ……。本当可愛い。可愛い、には勝てないよ……。
◇ ◇ ◇
そして、戦闘は特筆すべきことはなかった……。
だって、ヨツバくんとラビが強すぎてですね。私に合わせてヨツバくんが普段行く狩り場よりもレベルを下げてくれたのもあって、ヨツバくんはモンスターを瞬殺していくし、敏捷差もあって、全然攻撃出来なかった。
私がしたのは、ヨツバくんとラビがモンスターを倒すのを見守って経験値をいただくだけ。俗に言うパワーレベリングだ。申し訳ない。
このゲームはパワーレベリングが禁止されてないからいいけど(この先どうかは分からないけどね)、本当に何もせず経験値だけ頂いて良いのかな……、って気持ちになった。
他にしたことと言えば、泥だらけになったラビに『洗浄魔法』をかけたり……とか。モンスターの攻撃で汚れても戦闘後には綺麗になるのに、何故か泥汚れとかは残るみたいで、ラビはよく汚れてしまっていたので何度もかけた。そのおかげで『洗浄魔法』のレベル上げになった。
……見た目だけだったら美少女なヨツバくんが後ろに控えていて、私が前に出て戦闘、なんだろうけどなぁ。
それと、この場所は不人気なので人が少なく、ラビを連れていてもバレないのが良いところだって言っていた。その代わり、少しモンスターが倒しにくいそうだ。……倒しにくい? ヨツバくん瞬殺してるよね!?
そんなこんなで、私のレベルは2時間で18レベから25レベになった。ありがたすぎてめちゃくちゃ感謝したら「一緒に遊べて嬉しくて張り切っちゃいました」ってはにかみ笑顔で言われた。
……ヨツバくんってば天使かな? ほんっと聖女に相応しい可愛さだよ。……戦闘狂だけど。
──因みにヨツバくんのレベルは47レベだった。




