第13話 真っ白ふわふわポンチョのお値段
「えっと……。あのポンチョはケーキ屋を紹介して下さったお礼なのでお金は受け取れません」
それに、あのツギハギポンチョが高性能になったのって、何度も洗浄魔法をかけたおかげかな、って思うと洗浄魔法をかけたヨツバくんのおかげでもあるし、私だけの成果じゃないからなぁ。
…………正直、端の処理もしてない切りっぱなしポンチョだから、誰でも作れるだろうしお金もらいにくい……。一応、見た目だけはツギハギには見えないけどね。
「しかも、ラビの写真をたくさん撮らせてもらう、っていうお代もいただきました」
そう言いながら、私の表情は心持ちドヤ顔になってしまった。私にとってはラビの可愛いお写真は過分なお代でしたので、ね!
ゲームから外部端末に送ってログアウト後にも見返してニコニコしたんだよね。
だけど、ヨツバくんは矛を収めてくれない。
「ネイビーさん……。あの装備には、紹介と写真だけじゃ全く足りませんよ。だから絶対払います。…………払わせてくれないならポンチョを返します!」
「えっ」
それは、困る。ポンチョを付けているラビはこんなにも可愛いのに……。つけてくれなきゃ困る。可愛いは正義なので。
お金はもらいたくないんだけど、「絶対負けない」って瞳を燃やしているヨツバくんに勝てる気はしないので頭を悩ませる。うーん、どうしよう……。
「…………じゃあ、お金はもらいます。その代わり紹介と写真のお礼は別で用意します」
「エッ」
「これは絶対です」
「…………僕が言えたことじゃないですが、ネイビーさんも頑固ですよね」
「……類は友を呼ぶ、ってことですかね」
顔を見合わせて二人でちょっと笑った。ヨツバくんとは、ちょっと困ったことが起こっても険悪にならずに、するすると先が決まるから楽だ。提案が、自分のためであり、相手のためでもあると分かってるからだろうなぁ。
……それにゲームでまで喧嘩とかしたくないよね。ゲームだからこそ、ってあるかもしれないけど、私は出来るだけほのぼのと綺麗で楽しいところにだけ触れていたい。
それで、紹介と写真のお礼はハンカチです!
…………正直、プレゼントで渡したかったけど、絶対受け取ってくれなかっただろうし、丁度いいよね。
「じゃあ露店に行きましょう!」
◇ ◇ ◇
「3000G……」
マジか。自動設定の初期値段がこれって高くない?
ツギハギ切りっぱなしポンチョなんだよ!?
「じゃあ4倍の12000Gですね! キリよく15000G送っておきます」
「えっ」
キリよく、ってなに!?
4倍でもびっくりしたのに、それじゃあ5倍じゃん……! と慌てていたら、本当に送られてきた。4000いくらかだった残高に、ぽんっと15000G分増える。
「よ、ヨツバくん……3倍の9000Gじゃないんですか……!?」
「…………あれっ話しませんでしたっけ!? 今、戦闘職も安定して稼げるようになってきたので、相場がじわじわ上がってきていて、最低でも3.5倍ですし、性能のいい装備は4倍から5倍なんです」
「そう、なんですか。……いえ、でも、5倍はおかしいです。俺としては、フレンド価格……として3倍で大丈夫ですし」
「駄目ですよ!」
ヨツバくんはキョロキョロ周りをみながら小声で告げる。
「いい装備には見合うお金を払うべきですし、そもそもテイムモンスター装備を売ってるとこなんてないですからね……! ……もしどこかに頼んだら『テイム』がバレてしまいますし…………、これは口止め料も含まれてます」
口止め料、と言ったときにヨツバくんがお茶目に微笑む。しーっ、と口元に指を一本立ててる姿も可愛い。
か、可愛さに誤魔化されそう……!
因みにラビは、ヨツバくんの告げた言葉の通り『テイム』がバレないように、露店に来ないでお留守番をしている。他人のプレイヤーのマイルームでお留守番、とかも出来るんだ……と少しびっくりしたよね。
「ネイビーさん、諦めてください。それに僕、『+10』なんて初めて見ましたし」
「……それは俺の腕というより毛皮のおかげだと思います」
そう言いながら、思い出した。毛皮、毛皮だよ……。あの毛皮ってヨツバくんの物だったし、『洗浄魔法』を使ったのもヨツバくんじゃん!
そして、何故か実験に使った色んなモンスターの綺麗になった毛皮や皮も、「僕は使いませんから」ともらったんだよね。断れなかった。
…………そういうの考えたら、やっぱり私ってヨツバくんに貰い過ぎじゃない?
うん、貰い過ぎだよ。そう思って、私は無言でヨツバくんに半分……キリよく8000G送り返した。
「あ! ネイビーさん!」
「…………」
怒るように声を上げ、こっちを見てくるヨツバくんから距離を取る。譲渡にはそれなりの近い距離が必要だからね、逃げる。
「ちょ、……うわ、ネ、イビーさん!?」
────そして、マイルームに飛んだ。
パーティを組んでいるから、ヨツバくんももちろん一緒にマイルームに飛んでしまうんだけど、予告もなく突然だったから、ヨツバくんは驚いて唖然としている。因みに、一人のときは部屋の中にワープするんだけど、パーティを組んでいるときはお庭にワープする。
と、いうことで、ヨツバくんが呆然としているうちに一人マイルームの中に逃げ込む。ごめんね、ヨツバくん。
「…………ラビィ?」
お出迎えをしようとしてくれていたのか扉の近くまで来ていたラビが、ご主人なく帰ってきた私に首を傾げている。ラビもごめんね。
ふわもふな毛並みをそっと撫でたら、左に傾けていた首を右に傾けながらも大人しく撫でさせてくれる。ふわもふで幸せぇ……。
そんなことをしていたら、コンコン、と扉から音が聞こえてくる。こんな時も律儀にノックしてくれるんだね。そっと扉を開けたら、むすっと拗ねた顔をしているヨツバくん。……そんな顔も可愛いね。
「置いて行かないでくださいっ」
「すみません」
えーっかわいい。
無理矢理譲渡して逃げたことより、庭に置いていかれたことを拗ねてるんだ……。
「お金は納得いきませんが、絶対受け取ってもらえないことはあの行動で伝わりました。それより、ネイビーさんの子供っぽい行動にびっくりしました……!」
「…………えっと、重ね重ねすみません? その、実験で使った毛皮とかも頂いたので、貰い過ぎだなと思ったらつい…………」
「いえ、良いんです。驚きましたけど、ちょっと面白かったです」
「…………」
面白がられている。
まぁ私も突飛な行動に出ちゃったし仕方ないか。
だって、やりたかったんだもん。
……というか、ヨツバくんが面白がってくれたから良かったけど、喧嘩したくないと思ったすぐあとに喧嘩に発展しそうなことをする私っておばかだなあ。
【追記】いつもお読みくださりありがとうございます。
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【追追記】
2月1日更新再開予定。




