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VRMMOの世界で怖いお兄さんをしています〜本当はVRでお茶会エンジョイしたかっただけなのに〜  作者: 春咲 イブキ
第2章

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第12話 プラムの刺繍


「わ、デザインするのに30分もかけてたんだ」


 刺繍は何分かかるかな?

 現実だったら8時間やっても終わるか分からないけど、このゲームではステータスの恩恵があるから、もう少し早く出来そうだよね。

 糸を通すのも機能で一発で行えちゃうし。


 デザインが全て入るサイズの刺繍枠を選んで、布にはめる。デザインの位置は正方形のハンカチの角の一つだ。

 赤紫の外側が見えているプラムから刺していこう。刺繍糸をサクッと『糸通し』機能で通したら、刺繍をする準備はおっけー。


 あとは、ひたすら刺していくだけ!

 

 無心でちくちくと刺していく。自分の手で布を色付かせていく作業は楽しい。途中で、もっと色を使って瑞々しいプラムに出来るかも……、と思ったのでデザイン画に色を足してみたりした。うんうん、いい感じ。

 じゃあ糸を変えて……と。

 この時も、刺繍糸から色を吸い取って行っているから、いざ刺してみたらイメージと合わない色だった、なんてことは起きない。この機能本当便利だなぁ。

 

 ステータスの恩恵もあって、プラムの一つはあっという間に刺繍を終えた。そのプラムはグラデーションがとても綺麗で、きらりと光る様は瑞々しく本物のようだ。……えへへ、自分ってば天才。

 よし次は、プラムの内側が見えている物を刺繍していこう。デザイン画の時点でどの刺繍糸を使うか決めてあるから、悩むことなく次の糸を『糸通し』で通して準備する。


 どんどんいくぞー!



 ◇ ◇ ◇

 


「ふぅ……」


 できた、んだけど……、このまま完成じゃなくて対角側の角にも同じデザインの刺繍をしたらかわいいな?と思ったので、『図案』機能に登録して『転写』をする。


 よーし、もう一度同じ刺繍をするぞー!

 と気合を入れたらぴこんと通知の音が。なんだろ、と見てみたらヨツバくんからだった。…………予想はしていたけどね。私にメッセージをくれるのって大体ヨツバくんだもん。


『今何してますか?』

『刺繍中です』

『見に行ってもいいですか』

『いいですよ。刺繍してるので勝手に入ってきて下さい』


 慣れたやり取り。現実で考えたら、まだ4日目だというのにね。ヨツバくんはいつもノックしてくれるけど、今日の私は扉を開けに立ち上がるのが面倒なので、勝手に入ってきてもらいたい。


 プラム色の糸を通した針を構えて、私は生成りの布に挑む。一度刺したデザインだしすぐできることでしょう!



 ◇ ◇ ◇

 


「できたー!」

「おめでとうございます」

「っ!?」


 すぐ近くから声と拍手が聞こえて、私は驚いて体を弾ませた。数センチ椅子から飛び上がった気がする。

 

「あはは……やっぱり気付いてなかったんですね……」

「ヨ、ヨツバくん……」


 び、びっくりしたぁ……! 体はびくっと揺れたし、心臓はばくばくと破裂しそうになっている。

 …………うん、思い出した。ヨツバくんに許可を出したのは覚えてる。……だけど、いつ入ってきたのか知らない。集中しすぎてたみたいだ……。


「一応、ノックもしたんですけど反応がなかったので勝手に入ってきちゃいました。すみません」

「いえ……こちらこそ、なんのお構いもなく…………」


 まだ、ばくばくと飛び跳ねている心臓を服の上から抑えながらヨツバくんに言葉を返す。あぁびっくりした。……というか、アバターの体でもちゃんと心臓ってあるんだね。服の上からでも鼓動を感じられる。


「それで何を刺繍してたんですか?」

「プラムです」


 興味津々な顔で身を乗り出すヨツバくんに、見えやすいように布を掲げながら言った。目を輝かせて布をじっと見詰めたヨツバくんが喜色を滲ませて声を上げる。

 

「プラム! 美味しそうですね! 小さいお花も可愛いです」

「ありがとうございます」


 ぱちぱちと完成のときにもいただいた拍手がまた送られて、嬉しさと驚いてしまった気恥ずかしさに目線をそらしながらも感謝の言葉を返す。

 そそくさと布をテーブルの上に戻して、最終調整を行う。……実はまだ、大きな布のままでハンカチのサイズに裁断してないんだよね。既に、ハンカチの形にチャコペンは引いてあるから、あとは裁断するだけ。

 裁断する前の方が刺繍枠をはめやすくて刺繍がしやすいから、まだ裁断してなかったんだよね。

 

 さくっと『裁断』機能を使って裁断を行う。


「これって、何になるんですか?」

「ハンカチです」

「ハンカチ、ですか! ……アクセサリー枠ですかね?」

「そうなると信じてます」

「なら、僕も祈っておきますね!」

「ありがとうございます」


 両手を合わせてきゅるっとした目で見上げられると、ヨツバくんのあざと可愛さに変な声をあげてしまいそうだ。今日もヨツバくんはかわいいね。

 よし、作業だ。裁断を終えたあとは、四辺を三つ折りにして縫うだけ。すいすい縫い進めていく手は高速ミシンの様に速い。……ステータスって最高。


「よし、今度こそ完成です」

「おめでとうございます! ……アクセサリー枠になりましたか?」

「えっと……。あ、無事アクセサリー枠になってます。性能は……『魔力+4』です」

「わぁっおめでとうございます!」

「ありがとうございます。…………でもこれ、プラムさんに渡す予定なんですが現時点で魔力上がっても困っちゃいますよね……」

「それは……。そう、ですね……」

「ですよね」


 私達が『洗浄魔法』を秘匿している状況だし、他の魔法の情報はまだ出てきていない。……プラムさん……良い効果を付けられなくてごめんなさい……。プレゼントなので許してください。


 

「ラッビィ!」

「っ!?」


 急に上がった声に、私はまたびくりと体を震わせた。今日は驚いてばかりだ。声が聞こえたテーブルの下をそっとみたら、ラビがヨツバくんの膝に前脚をかけていた。……ラビも来てたんだね。それにしても現実のうさぎとは比べられないくらいおっきいなぁ。でもかわいい。

 しかも昨日作ったポンチョもつけてくれていて、嬉しくなる。


「ラビ、どうしたの? ……あぁお腹減ったのか。クッキー?」

「…………」

「……果物?」

「ッラビィ!」

「果物なんだ……高いんだけど仕方ないかぁ……」


 そう言ってヨツバくんはリンゴとイチゴとモモを取り出して、ラビに見せている。ラビはふんふんと3種類の匂いを嗅いでよく吟味した上で、リンゴを選んだみたいだ。……リンゴ、美味しいよねぇ。

 と、ほのぼのと見ていたら、ヨツバくんはそっと床にイチゴとモモを置いていて、首を傾げる。行動の理由はすぐにわかった。リンゴを食べ終わったラビがまた匂いを嗅いで、次はモモに齧り付いた。むしゃむしゃと幸せそうに食べているのを眺めていたら、リンゴもモモも食べ終わったラビがイチゴに齧りつく。


「…………いっぱい、食べますね」

「そうなんですよ。なんでか分からないんですが、クッキーだと5枚で満腹になるのに、果物だと3個必要なんです……。しかも、タイミングによっては4個目も欲しがるので不思議なんですよね……確実にクッキーの方が体積が小さいのに」

「そうですよね」

「しかも僕らプレイヤーだと、満腹度の関係で果物4個も食べられないのにラビはペコペコのときなら食べられるんです。でも、僕らはクッキー5枚じゃ満腹にはならない……ラビは5枚で満腹になるのに……」

「不思議ですね。…………クッキーのときは満足?しただけで、満腹じゃない、とかはないんですか?」

「それがないんですよ! テイムモンスターのステータス欄の満腹度から数値で確認できるので確実です。だから、本当に謎で…………」


 それは、確かに謎だ。


「……正直、お金だけを考えたら、クッキーの方が安く済むのでクッキーにしてほしいんですよね。クッキーさんが売ってるあのクッキーセットってかなり大量に入ってるじゃないですか? 50枚は確実にありそうな大容量なので……その分、1つは小さめですが……」

「そうですね」

「でも、一度果物をあげたら果物しか食べなくなっちゃってですね。しかも、色んな種類が食べたいみたいで、1種類をまとめ買いしても満足してくれないんです。もし1種類で良いなら、多く買って値引きをしてもらえるのに……」

「…………値引きとかあるんですか?」

「ありますよ! 流石に詳しく調べられてないですが、10個の時はなくて20個の時は安くしてもらえました!」


 へぇぇ。……というか、1種類の果物を20個も一度に買ったんだね。すごい。



「あっラビの食糧事情は良いんですよ! それよりも大事なことがあって────」


 ラビの食糧事情も楽しく聞いてたんだけど…………それより大事なことってなんだろう。


「──ラビのポンチョです! あの後良く見てみたらちゃんと装備になっていて『敏捷+10』付いてたんですよ。強くありませんか!? 僕、オシャレ着装備かな、と思っちゃったので、こないだは納得しましたがこんな立派な装備ならお金払わせてください!」

「…………えっ」


 そんな、大層な装備になっていたの?

 あんな、ツギハギポンチョなのに…………!?






 

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― 新着の感想 ―
今日も更新ありがとうございます。感謝してもしつくせないほどの感謝……この気持ちが伝わればいいなと思いつつ、あまり重荷には感じないでほしいという強い気持ちがあります。 どうか。どうかお身体だけはお大事に…
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