第4話 3人でのお茶会
『マイルームに飛んでも大丈夫ですか?』
そのメッセージを受けて、急いでリタくんと一緒にマイルームに戻る。それで、ヨツバくんに大丈夫だと送ろうとして、手が止まる。
……椅子がっ、椅子が足らない!
『ちょっと待ってください』
そう送ってから、リタくんに向き直る。
「リタくんって、今椅子持ってますか?」
「持ってない、けど……。あ、椅子が足らない訳ね。でも、ここに置いてあるこの二脚は?」
「俺のとヨツバくんのです」
「ヨツバさんの置きっぱなんだ……。オッケー、取り敢えずマイルームの倉庫から取ってくるよ」
…………倉庫からって、リタくんも家具を設置してないタイプなんだ。
ぐっと親指を立てながら、リタくんは目の前から消えた。……マイルームに飛んだんだろう、と思っていたら、すぐにガチャっと扉が開く。
「取ってきたよー」
はやっ。
でもこれで、安心。皆で座ってお話できるね。
『準備できました。いつでも大丈夫です』
『わかりました! 今行きます』
すぐにコンコン、ってノックの音が聞こえてきたので、ドアを開く。そこには笑顔弾けるヨツバくんがいた。今日も今日とて笑顔が可愛い美少女だ。
「初めまして、リタと申します。ヨツバさん、いきなりのお誘いに応じてくださりありがとうございます」
「いえっ、私の方こそネイビーさんのフレンドと知り合えて嬉しいです!」
わぁ……ヨツバくんの一人称『私』久しぶりに聞いた……! 新鮮だなぁ。
二人は握手をしていて、私は隣でどうしたら良いのか分からずそわそわしながら見守る。友達を友達に紹介……って、何したらいいんだろう。
……取り敢えず、座ってもらおう。
「…………ええっと、取り敢えずお二人共座ってください。俺は、紅茶を淹れてきます。……あ、リタくんはリンゴ大丈夫ですか?」
「大丈夫!」
「じゃあアップルティー淹れてきます」
紅茶を淹れるのはおかわりも合わせたら複数回にわたるけど、まだ緊張する。……ゲームでも、失敗したら不味い紅茶になっちゃうのかな?
「それで『串刺し』について聞きたくて────」
リタくんが話し始めるのに合わせて、私も紅茶の準備をしていく。まずは、カップとポットを温めて、と。落ち着いて手順を確認しながら準備を進める。集中し始めると、周りの声が入ってこなくなって、良く集中できる。
…………よし。後は、3分蒸らすだけ。
「……ええっと……ネイビーさん…………」
「ヨツバくん?」
「あぁ、良かった。……大丈夫になりました?」
「? はい」
何が、と思ったら紅茶の準備中に何度かヨツバくんに声を掛けられていたらしい。それをガン無視していた、とリタくんが教えてくれる。
「すみませんヨツバくん」
「いえ! 作業中に声をかけてしまいましたし僕こそすみません!」
「俺の方こそ──」
「…………僕?」
謝り合戦になりそうなところに、挟まれた第三者の声。
バッと、二人で振り返った。
「あっ、……り、リタさん聞かなかったことにしてください! 私は私っ、なんです!」
「…………なるほど、だからヨツバちゃんじゃなくてヨツバくんなんだ」
「……うっ、うぅ……」
……なんか、ごめんねヨツバくん。早速バレちゃった。
でも美少女の『僕』って、私の健康に良いからぜひ続けて欲しい。…………けど、これ以上は可哀想なので話を変えよう。
「コホン。……それで、ヨツバくんは何が聞きたかったんですか?」
わざとらしい咳払いでお茶を濁す。
「あ……。『串刺し』のことです! どこまで話して良いものか悩んでしまって……」
「あぁ……、リタくんにでしたら全部話しちゃって良いですよ」
「取得者についてもですか?」
「はい」
この会話を、リタくんが口角を上げてお目々もキラキラに輝かせながらわくわくした顔で見守っている。リタくん、……というかみおちゃんってこういう情報大好きだったんだね。エンジョイ勢よりは、ガチ勢よりなのは知っていたけど。
「……あ、3分経ったので紅茶淹れますね」
茶こしを使いながら注いでいく。なんとか、3人分無事に淹れられてほっと一息つく。
「アップルティーです。どうぞ」
あ、忘れてたけどお菓子もだそう。ケーキスタンドを持ち物から取り出して、クッキーを乗せていく。みんなの前に取皿も置いたら準備完了。
お茶会の始まりです!
「……ネイビーが凄い満足げ。こんな素敵なお茶会の様相で、物騒に『串刺し』の話をして良いか悩んじゃうよ」
そう言いながら、アップルティーを飲んだリタくんが「美味しい」と声を漏らして、嬉しくなる。良かった!
「クッキーもどうぞ」
「ありがと〜。こういうのも楽しいね。……それでヨツバさん、どうしてネイビーに『串刺し』について聞いたんですか? ……まさかとは思うんですが……」
「はい、そのまさかです。……もうバレたので僕って言いますが、僕は『串刺し』を取得していません。僕が杖で『ラビットベア』を吹っ飛ばしたところを片手剣で貫いたのがネイビーさんです」
「わぁお……。ネイビーってば……知らない内に物騒になっちゃって…………」
めそめそ、とリタくんが泣き真似をする。
「っ物騒なのは、モンスターを吹っ飛ばしたヨツバくんでは……?!」
「ひ、酷いです。僕のはたまたまです。事故です」
「それを言うなら俺も事故です」
私達の言い合いを楽しそうに見ていたリタくんが口を挟む。
「──でもネイビーは、モンスターに刺さった片手剣を杖でぶっ叩いて、更に突き刺したもんね。あれは故意だからな〜やっぱり物騒だよ」
「!? ネイビーさん凄い事しましたね!」
「……うっ、確かに……した、けども…………」
私はそれ以上何も言い返せず、黙ることにした。……うん、アップルティーは今日も美味しいね。リンゴジャムクッキーを食べると更にリンゴに包まれて幸せだ。あ、リンゴジャムの手作りもしたかったんだよなぁ。
よし、『料理』スキルを取得しよう。必要なスキルポイントは1。『裁縫』と似た感じなら、レシピが解放されるのはスキルレベル5かなぁ。スキルレベルを上げなきゃ……でも、まずは料理道具を揃えなきゃだね。
紅茶を淹れるのでも上がりそうだけど、紅茶だけ淹れ続けるのは詰まらないから、色んな料理をしたい。
……なんて、現実逃避。
「あ。……リタさん『リービーティー』知ってます?」
「知ってるよー! というか、僕も買った」
そう言って、リタくんが腰についた『クマリボン』を見せてくれる。わ、買ってくれたんだ嬉しいなぁ。
「その店主もネイビーさんですよ」
「え」
すごい顔でじっと見詰められたので、私はそっと目を逸らした。
◇ ◇ ◇
「『串刺し』の取り方は本当だったし、それの初取得者が知り合いで、気に入った露店も知り合い……。世間は狭いなぁ……。本当『串刺し』の情報ありがとう」
クッキーをパクパク食べながらリタくんが言う。
リタくんは弓を愛用しているから『串刺し』は関係ないんじゃ……と思ったんだけど詳しく話を聞いたら、『刺す行為』に『矢が刺さる』も含まれていたらしい。
全く出たこともなかったクリティカルが、『串刺し』を取得してから出るようになったので、情報を開示してくれたヨツバくんに感謝していたそうだ。
だから、情報を出したいと決めた私と、情報の書き込みをしてくれたヨツバくんに対して、さっきから何度もお礼を口にしている。
最初の方はこっちが恐縮しちゃうくらいだったけど、クッキー片手に言われると、こっちもお礼を流すのに慣れてくる。
「あ」
「ヨツバくん?」
「そう言えば、土曜日からイベントが始まるじゃないですか! 皆さんは、どんな感じに参加されますか?」
その言葉に私は首を傾げた。
「…………イベント?」




