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VRMMOの世界で怖いお兄さんをしています〜本当はVRでお茶会エンジョイしたかっただけなのに〜  作者: 春咲 イブキ
第1章

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第39話 露店とクッキー


 露店に飛んだ瞬間、驚きの光景が目に入った。

 

「え」

「わぁおめでとうございます……!」


 いつぞや見た光景。またもや完売です。


 あんなに机の上を華やかに彩っていた筈のアイテムたちがなくなって、寂しげな机と椅子だけが佇んでいる。59個分のアイテムを販売開始してから、えーっと、ゲーム内で約12時間で、完売……?

 ……計算してみたら、意外と経っている。けど、完売するとは思わなかったよ。


「か、完売……? なんで…………」

「…………僕、理由知ってると思います!」

「え?」


 なんで、ヨツバくんが知ってるの!?!


「その、ワールドチャットでこの露店──『リービーティー』を宣伝している方がいたので…………。実際、ネイビーさん作の物は他のより性能良いですし種類が豊富ですからね」

「宣伝? ……え、性能も、良いんですか?」

「宣伝は、よくワールドチャットに出没しているプラムさん、って方がしてました。文面は『リービーティー』オススメ〜くらいでしたけど。性能は……これから、露店を巡りながら見てみるといいと思います」

「はい…………」


 プラムさんが!? というか、プラムさんで思い出したけど、折角メニュー欄から売上金を受け取れるって教えてくれたのに活用してないや。……売上金の受け取りだけじゃなく、メニューからも商品登録できたら、更に便利なのになぁ。

 

「取りあえず、プラムさんにお礼送っておきます」

「エッ、……フレンドなんですか」

「数時間前にフレンドになりました」

「凄い有名人と……流石ですね」


 やっぱりプラムさんって有名人なんだ。ワールドチャットでも秒で助けてくれたし、それを趣味、って言い切れる人だもんね。それに、可愛い猫ちゃんだし。

 人前でメッセージ送るなんて失礼なんだけど、忘れちゃいそうなのでヨツバくんに断って文字を入力していく。

 

『プラムさん、宣伝してくれたそうでありがとうございました。無事完売しました』

『完売おめでとう! 迷惑かな……とも思ったんだけど、皆にオススメしたくって! ネイビーくんの物は良いものばかりだからね、新作楽しみにしてる!』

『ありがとうございます』


 返信早いな。私のフレンドは全員、秒速返信過ぎます。

 …………まだ、二人しかいないけど。


 えぇ、本当に完売しちゃってるよ。びっくりだよ。

 また作らなきゃ……プラムさんも新作を待ってることだし……。

 …………いやいやこの生産はお茶会のためだったからね、目的は達成してるから、緩く作りたいものだけ作ろう。


 ──それで売上です。


「え、13万G…………? やば」

「やばいですねっ、おめでとうございます!」

「……ありがとうございます……」


 ぱちぱちと拍手をくれるヨツバくん。素が出ても華麗にスルーしてくれるのがありがたいよ。それなのに私は、びっくりな金額過ぎて、声が上手く出てこなくて、お礼もぼそぼそと小さな声になってしまった。

 だって13万Gだよ、13万! 余裕で『キッチン』買えちゃうし、お菓子も買えちゃうし、ティーカップとティーポットのセットをもう一式買ってもいいくらいじゃん!?


 だ、だめだよ落ち着いて私、無駄遣いはしちゃいけない。


「何か使う予定はあるんですか? 貯金ですか?」

「ええっと、キッチン、買いたくて……」

「あぁ、良いですね!」


 ヨツバくん、すぐ貯金が出てくるなんて凄いなあ。えらすぎる。私はパーッと使おうとしたというのに。


「取りあえず、クッキー屋さんに案内しますね!」



 ◇◇◇



「ネイビーさん、ここです!」

「どうも〜クッキーのクッキー屋です〜」


 ヨツバくんに案内されたお店は『クッキー』さんというプレイヤーが開いている『クッキー屋』さんだった。……分かりやすい、というべきか紛らわしいというべきか。


「ご試食どうぞ〜」


 ぽんっと音を立ててウィンドウが開く。『クッキーさんにクッキーを譲渡されました』だって。……私もよく押し付けするけど、突然送られてくると結構驚くね。

 因みにこの譲渡機能は、向かい合ってないと使えない。面白い機能だよね。


 試食、してみようかな。持ち物から譲渡された物を取り出したら、小さな袋に一枚だけクッキーが包まれていた。袋を開けた途端に香るバターのいい匂いに期待しかない。

 

「! 美味しい……」


 サクサクと小気味好い音を立てて咀嚼するたびに、口の中に幸せが広がる。食べ終わったときには、もっと食べたい、と思っていた。

 よし、買おう。

 

「美味しいですよね……! 僕、ここのクッキー大好きなんです」

「ヨツバさん、いつもありがとうございます~」


 このお店も自動取引に設定されていたので、勝手に売買ウィンドウを開いて商品を見ていく。『クッキー』『チョコクッキー』『紅茶クッキー』『リンゴジャムクッキー』『イチゴジャムクッキー』と並ぶクッキーたちを見ながら全部欲しいなぁと考えていたら、一番下に『5種類クッキーセット』があったので、それを即決。

 悩んで、2袋買いました。クッキーはいくらあってもいいと思うの。……そう思って、『リンゴジャムクッキー』も買い足した。リンゴ系のお菓子はいくらあってもいいと思うの。えへへ。


「たくさんお買い上げありがとうございます〜!」


 ほくほく。使ったお金は7000Gほど。

 早速使いすぎかな……? でも欲しかったんだもん。


 よし、お気に入り登録をぽちっとな。



 ◇ ◇ ◇ 

   


「え、ケーキスタンド……!?」


 クッキーを買ったあとも、ヨツバくんと一緒に露店巡りをしていたら、3段ケーキスタンドが目に飛び込んできて足を止める。え、欲しい。忘れてたけど、お茶会にケーキスタンドは必須だよね。買おう。

 露店に近付いて行ったら、露店主の男性がこちらに気が付く。

 

「おっ、お客さんお目が高いっ! これは陶器製のケーキスタンドでしてとてもオシャレでしょうっですので買ってくれませんかお願いしますお金がないんですお願いします、どうか買ってください」


 そう早口に言った彼は流れるように───。

 

「……土下座…………」

「……わぁ土下座だぁ……初めてみました……」


 ──土下座した。

 

 私も初めてみたよ土下座。そして、地面に土下座した彼は、机と被って見えにくい。覗き込まないと見えない。


「買ってくださいぃぃ……」


 土下座で唸っているので、どうしたらいいか分からない。……分からないので、売買ウィンドウを出してケーキスタンドの情報を見ていく。

 ……これで自動取引じゃなくて、対面取引のみだったら困って、逃げ帰ってるとこだったな。

  

「……あ、2万G。思ったより高くない。買いますね」

「!? か、神よ…………!!」


 両手を合わせて拝まれている。やめてほしい。


「やめてください。あと、立ってください」

「……分かりました。神の言うことは聞きます」

「…………ネイビーさん、この人変ですね」

「しっ」


 ヨツバくんははっきりと言わない!


「──ちょっと聞いてほしいんですけど、俺、ケーキスタンド作ってみたくて頑張っちゃったんですよね。そうしたら出来上がった時には素材はないしお金もない、しかもケーキスタンドは売れない、で凄く困ってたんですよ。俺って貴重な陶器師の筈なのに誰も助けてくれないし……、ほんっと買ってくれてありがとうございました! 感謝の気持ちでオマケでも付けたいんですけど、何もなくて申し訳ないです」

「……いえ」

「それにしても、美少女が買いに来たのかと思ったら、購入者は怖いお兄さんの方でびっくりしました。でも、買ってくれたのであなたは神です。本当にありがとうございます! 俺救われました! これでまた生産ができます! ではっ、俺は材料を買いに行きます!!」


 そう言って目の前から消えた。マイルームに飛んだんだろうなぁ……。嵐みたいな人だ。嵐何号目???


 でも、ケーキスタンドはとても素晴らしい出来で、模様もオシャレだった。腕は良いのだろうし、彼の作る陶磁器が気になるのでお店をお気に入り登録しておこう。


「凄い人でしたねぇ……。それにしても、あの人が陶器師だったんですね。前に『陶器師に就職した!』って呟きをワーチャで見掛けたんですが、それ以降音沙汰がなかったので、本当なのか嘘なのか気になってました」

「そうなんですか。……就職……したほうがいいんですかねぇ…………」

「どうなんでしょう。今のところ、弟子入りくらいしか見付かってないんですよね。生産職に就職すると、サブジョブでもSPを集められるのはメリットなんですが、中々。……ほら、FJOは手作業が多いので…………PSがないと弟子入りを断られるそうです。辛いですよね」


 ヒィ……ゲームなのに世知辛い。

 弟子入りね……今は裁縫ばかりしてるけど、私は色んなことを自由にしたいなぁと思っちゃうから、弟子入りって向いてない気がするんだよね。

 弟子入り以外で就職方法が見付かってから、かな。

 

 そう言えば、メイン職業も旅人のままだ。


「あの、旅人から転職できた人っているんですか?」

「いないです!」

「……そうなんですね」


 まだなんだぁ……。 

 

 

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