第31話 魔力操作と露店と死にかけと
「『魔力操作』も魔法には大事だと思いますっ! 思いますけど、詠唱練習していたのに、どうして覚えたのが『魔法』じゃなくて『魔力操作』なんですかっ!?」
怒ってる怒ってる。
顔が美少女だから、ぷんすか、って感じ。
「…………まぁ、『魔力操作』も取得はしますけどねっ?!」
分かるよ、えーって納得行かなくても魔法関係は全部気になるもんね。
「…………わぁっ、『魔力操作』はパッシブスキルですね。……わ、わぁっすごい、滑らかに魔力が動きます! スキル取得するとかなり変わりますね!! 苦労した甲斐がありました!」
「良かったですね」
私が6時間裁縫している間、ずっと魔力操作していたんだろうし、しかもその前からも練習してたんだろうから、確実に6時間以上は魔力操作を頑張ったんだろうなぁ。すごいなぁ。
私は30分も頑張れなかったのに……、尊敬しかない。
取りあえず、私は『タッセル付きシュシュ』を完成させてしまおう。何度も行っているから、タッセルを付けるのにも慣れてきたよ。
……もちろん、付け方が合っているのかは未だ分からないまま。へへ。
「出来ました」
私と同じく赤色の布と、赤色の刺繍糸で作られた『タッセル付きシュシュ』の完成です。効果は……良かった!
「『器用+4』が付きました!」
「わぁっありがとうございますっ! いくらですか?」
「お金は良いですよ」
「駄目ですっ、払います! 払わせてくれないなら申し訳なくて使えません」
…………この子、私の転がし方が分かってきたな。そのしょんぼり顔でそう言われたら、払ってもらうしかないじゃん。
「もちろん、露店の自動設定の3倍で払います」
「…………」
先回りされた。えーー安くていいのにーー。
文句を言いながらも露店に飛ぶことになりました。
◇ ◇ ◇
「え」
「わあっおめでとうございます!」
びっくり仰天。テーブルクロスが全部売れている。
10枚作って、1枚はヨツバくんに、1枚はアカドラさんに渡しので、計8枚を売りに出してたんだけど、めでたく全部売れていて15200Gの売上になっていました。……え? なんで、キリが悪いんだろう、全部2000Gだった筈なのに…………。
「あ……手数料で5%取られるんだ……」
気付いてなかった! まぁ仕方ないか。
……でも、手数料取るなら、露店の治安はちゃんと守ってほしいよね。
…………というか、テーブルクロスが売りきれるなんて思ってなかった。こんな序盤でもマイルーム用アイテム売れるんだなぁ。
えぇーっと、それで、『タッセル付きシュシュ』の値段だね。販売までは押さずに、自動設定の値段を見ていく。
自動設定のお値段、1030Gだって。それの3倍だから3090G…………キリ良く、3000Gで良いか。
「ヨツバくん、3倍で3000Gです」
「嘘じゃないですよね?」
「なんで嘘つくんですか」
「だって……ネイビーさんすぐタダで渡そうとしたり安くしようとしたりするので」
「……これは、ちゃんと3倍です」
ぎくっ、とした。だって、端数分だけだけど、ほんの少し安くできて満足してたので。でもほんと、3倍って高くない? うーん、まぁアカドラさんも今の相場はそうだって言ってたしなぁ……。
「信じますからね!」
そう言ったヨツバくんから3000G譲渡されたので、私も『タッセル付きシュシュ』を譲渡する。
「……あれ、これって……」
「…………何か不備ありましたか」
「いえ。頭装備って聞いてたんですが、アクセサリー枠になってますね」
「マジ、ですか? ……俺のは、頭装備なんですが」
「そうなんですか! 僕のはアクセサリーになってます……。どうしてなのか不思議ですが、アクセサリーなら手首につけようかなぁ…………」
「良いと思います」
なんで、アクセサリー枠になったんだろう。
……もしかして、アレか。ヨツバくんって二本の三つ編みおさげだから、片方だけにシュシュつけるのってバランス悪いな〜〜って考えながら作ったせいだったりする?
私の意志を汲み取って、アクセサリー枠になった、とか?
自動で自分の気持ちというか考えが反映されて決まるの怖すぎる…………。これって、明らかシャツなのに、頭に装備したいとか考えていたら、『シャツ』『頭』みたいな意味のわからない装備が生まれちゃったりもするのかなぁ?
それはないって、信じたい。
「タッセルが長くて可愛いですね……!」
ヨツバくんは、手首に付けてタッセルを揺らして遊んでいた。可愛い。癒やしだねえ。
…………ネカマに騙される人の気持ちが分かるよ。中身が男の子だって思ってても、抗えないくらいの可愛さがある。
「じゃあ、またマイルームに戻りましょうか」
「はい!」
◇ ◇ ◇
帰ってきましたマイルーム!
……今日だけで行ったり来たりしてばっかだね。
「そう言えば、MP回復しましたか?」
えっ、回復薬使わなくても回復するの? 疑問に思いながらもステータスを見てみたところ、半分まで回復していた。でも、HPの方は一切回復していない。
「…………半分まで回復しています。MP回復薬を使わなくても回復するんですか?」
「フィールドだと回復しませんが、セーフティエリアなら自動回復します!」
「そうなんですね。……HPは、回復しないんですか?」
「HPは回復薬か睡眠が必要ですね」
「なるほど、ありがとうございます」
ほぇ〜って感じ。
「MPが回復しているなら、洗浄魔法を使ってみて欲しかったんですが、まだ半分じゃ危なさそうですね…………スキルからならどんな感じに発動するのか気になってたんです」
私はしょんぼりヨツバくんに弱いので、今すぐ使ってあげたい。だけど、MP満タンでもHPを使ってしまったのに、もしMPとHPと足りず死に戻り、とかになったら嫌だしなぁ。ヨツバくんもそれを懸念しているんだと思う。
どのくらいの割合でHPが減るのか分かるまでは、気軽に請け負えないや。
「MPが全回復したら使ってみますね」
「お願いします!」
…………というか、『魔法』スキルの情報はまだ出ていないのに、MPが自動回復するっていう情報は出てるんだ?
武器系スキルでもMPを使う、ってことかな? 聞いてみよう。
「MPって魔法以外にも使うんですか?」
「使いますよ! 武器スキルと生産スキルの15レベで覚える技はMP消費です。…………あっ、今思い付いたんですが、『魔力操作』って、武器スキルの魔力消費も抑えられるようになったりしませんかね……」
「可能性はありそうですね」
「そうですよねっ俄然やる気が出てきました! 魔法を覚えたときにも有用でしょうし、杖スキルでも活躍してくれそうですっ」
ヨツバくんは嬉しそうに拳を握って、期待に瞳を輝かせている。
「それじゃあっ、器用のアクセサリーも頂けましたし『洗浄魔法』頑張ってみますっ!」
ふんす、とやる気に満ち溢れているヨツバくんを和みながら見守っていたが、次の瞬間、ヨツバくんは、ハッとしてそのままズーンと落ち込んでしまった。
「ヨツバくん?」
「…………あっ、あの、……僕、もう発音忘れかけてるんですけど、覚えてますか……? ごめんなさい……」
「覚えてますよ。『ルゥッル、ルル、ルゥルッル、ルルゥ』で、す……? う……」
「ネイビーさん!?」
頭が痛い。体から力が抜けて、ずるずると座り込んで、頭を抱えた。目も開けていられない。
痛い。凄く痛い。頭が、割れそうなくらい物凄く痛い。
頭がガンガンと痛んで、何も考えることができない。
「ネイビーさんっ大丈夫ですか……?!」
「……っ……」
大丈夫、って言って心配をかけたくないのに、声が出てこない。ごめん、ヨツバくん。
「ッネイビーさん……!」
バシャ、と音がした。その瞬間、体が濡れた感覚がして、痛みが遠ざかっていく。
なに……?
と思ったら、もう一度、バシャと音がして、体が濡れる。そうして、やっと、私は目を開けて顔をあげることが出来た。そこには切羽詰まった顔をしたヨツバくんがいた。
体は、何かで濡れた筈なのに、とっくに乾いていて、もう気にならない。
なに、なんだったの??
「よ、良かったぁ…………」
ヨツバくんは、安心したように体から力を抜いて座り込む。────良く分からない。良く分からないけど、またヨツバくんが助けてくれたんだろう。
「ありがとうヨツバくん」
「いえ。…………今のは僕のせいなので、ごめんなさい」
───えっ、ヨツバくんのせいってどういうこと?




