第28話 リボンの行く末
「ふぅ、適正価格でテーブルクロスを買えましたし、僕は大満足ですっ」
「…………」
まだ納得いってません。いつもお世話になっているし、あの悪意野郎共から救ってくれたのはヨツバくんだし、だから、安くてよかったのに。というか、無料でも良かったくらいなのに。
でも、これ以上やっても時間の無駄だと分かっているので、不満げにヨツバくんを見るだけで矛を収める。
「僕もウサギリボンかクマリボン買おうかなあ……」
「それはやめてください。ヨツバくんが穢れます」
「……穢れっ、ませんが!?!」
いやいや、穢れるよ。だめだよ。聖女を目指す大事な御身でしょ。そんな穢れたブツに触れてはならん。
「ヨツバくんが欲しいなら、また作ります。…………ヨツバくんになら、リボンを『水のゆらめき』にして作るのもありですし」
「……!! 『水のゆらめき』で作ったリボン欲しいです……! と、いうか、もしかしてですけど、僕のために布も使わずにいます?! 有り難いんですけど、そこまでしなくても良いんですよ……申し訳ないです……」
しょんぼりしちゃった。別にヨツバくんのためだけって訳でも────いや、ヨツバくんのためだけだな。他に理由思い付かないや。
「ヨツバくんが魔法スキルを一番に取得できるように、応援したいので。気にしないでください」
「うぅ、期待に応えられるように頑張ります……!」
がんばれーヨツバくん。
それにしても。
「このリボン…………やっぱり売りたくないんですけど」
捨てようかな。
「えぇ、こんなに可愛いのに勿体ないですよっ」
「でも……嫌じゃないですか? 俺は、絶対に使いたくありません」
「それは……まぁ…………。僕も実際に見ちゃったので、衝撃が強くて、使いにくいですね」
「オブラートに包まなくていいです。嫌ですよね?」
「…………嫌、です……」
ほらー! 嫌じゃん!
…………ちょっと無理矢理言わせた感というか、言いにくいことを強制してしまったので、罪悪感。でもそれくらい、これを売り物として認めるの嫌なんだよね私。
どうしようかな、これ。
「あ! 生産ギルドに売るのはどうですか? 生産物の買い取りがあったはずです。ギルドポイントも溜まりますし、プレイヤーランクの経験値も貰えるので、良いんじゃないですかっ?」
「…………嫌がらせ認定、とかされませんよね?」
「そんなはずないですよっ、ネイビーさん何一つ悪くないのにっ!」
「そう、ですよね……」
そう信じたい。
持ち物に入れるのも嫌だったけど、一度リボンと、あとウサギキーホルダーを回収して、ギルドに向かうことにした。ヨツバくんも気になるみたいで、ついてきてくれることになった。
◇ ◇ ◇
生産ギルドです。
ギルドに来たのは今日で2回目。あ、トゥエも合わせれば3回目だね。
「その、……露店で嫌がらせを受けた物なんですが、納品しても大丈夫ですか?」
「あぁ……お前さんもか。納品は大丈夫だ。……というか、他には売れんだろう? ギルドで買い取らせてもらう」
おぉ? 買い取ってもらえた!
値段は、自動設定の値段よりも少し安かった。
そのまま話が続くんだけど、嫌がらせが今問題になっていて、その報告が多いらしい。生産ギルド所属の者を守るのもギルドの義務、として、被害を受けた商品は優先的に買い取るように通達があるらしい。
買い取った物は、『洗浄魔法』をかけてから売りに出すんだそうだ。
「洗浄魔法……!?」
一緒に来てくれたヨツバくんが隣でわくわくしていた。
「ん? 隣の嬢ちゃんは洗浄魔法が使えるのか?」
「使え、ません! 使いたい、です!!」
はっきり元気に答えてる。
…………そう言えば、住民から私は男だって判定されるし、ヨツバくんは女の子だって判定される。この判定はどういう風に行われているんだろう。キャラメイクで性別、なんて選んでないし、見た目からAIが自動で判断しているのかな?
これって中々難しい技術だと思うし、中性的な人だと間違える場合もない? その場合、間違えられたって怒る人も出るだろうし…………、いや、私が警戒される時点で、そういうのは住民の判断、みたいになってるのかな?
中性的な人は、住民によって男だと思われたり、女だと思われたりしても面白いなあ。
うん、考えが脱線してきた。
「魔力は……申し分ないな。よし、教えてやるよ。……まぁ、教えるのは俺じゃないが」
「エッ良いんですか」
話が進んで、商品の納品から、魔法を教えるかどうかの話になっていた。
「そっちの兄ちゃんはどうする?」
「え、俺もですか? 魔力の感知?すらできませんが……」
「そんだけ器用が高ければ、覚えるのもすぐだろ」
ヨツバくんと顔を見合わせる。魔法の取得には『魔力』だけじゃなく、『器用』も重要ってこと?
というか、器用が高いのバレるんだ。納品した物を見た感想なのか、それとも人のステータスを見れるスキルがあるのか。
折角だし、私も魔法教えてもらおうかな!
「……俺も、よろしくお願いします」
◇ ◇ ◇
むずい。むっずい、が!?
器用が高ければすぐ、なんて嘘だったでしょ。四苦八苦してる。でも、これでも魔力の感知だけは比較的早くできているそうだ。ヨツバくんに凄い凄いってたくさん褒められてしまった。
えへへ。嬉しい。
嬉しい、が、魔力の操作? 制御? なんて言えばいいのか分からないけど、魔力を上手く動かせません。ヨツバくんはこの作業を頑張っていたのか…………尊敬する。
私は飽きてきたよ、堪え性がないもので。
「る、ルゥル、ルゥ、ぅ、ルルルゥ……?」
ヨツバくんのさえずりが聴こえる。小鳥みたいに可愛らしい声だ。……これも、『ネイビーくん』と同じく声モデルのどれか一つなのだろうけども。でも、可愛い。
ヨツバくんがしているのは詠唱の練習だ。これは、『ル』じゃなくても良いらしいんだけど、講師が『ル』で発動していたのを真似て、ヨツバくんも『ル』で練習している。
「そうじゃない、ちゃんと聞け!」
「き、聞いてますー!!」
怒られたり、怒ったりの二人の掛け合いを聞きながら、ひたすら魔力を動かそうと、がんば…………れない。
やっぱり飽きてきたよー面倒だよー。もう魔法は諦めてもいいんじゃないかな、ってレベル。こういう、いつ終わるのか分からない作業って嫌いなんだよね。
よし、賑やかしに、詠唱の方に混ざろう。
えーっと、何度も講師のを聞いたからね。流石に覚えちゃった。
「こんな感じじゃないですか? ルゥッル、ルル、ルゥルッル、ルルゥ。…………って……あ…………」
「エッ……」
「おお! 筋がいいな!」
ピカーッと輝く、机。
数秒前までは、パラパラと砂が乗せられていて汚かったというのに、私が詠唱を唱えてみたら綺麗になってしまった。
〈『洗浄魔法』のスキルが解放されました〉
「………………出来ちゃった」




