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VRMMOの世界で怖いお兄さんをしています〜本当はVRでお茶会エンジョイしたかっただけなのに〜  作者: 春咲 イブキ
第1章

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第27話 初めての悪意


 絶対悪意ある。絶対にそうだ。


「ぶ、ブラックリスト……、ネイビーさん……ブラックリストに入れましょう……」


 声を震わせたヨツバくんがそう言う。そうだ、ブラックリスト。ブラックリストがあった、はずだ。


 目の前が恐怖なのか怒りなのかでチカチカ点滅していて、思考が定まらない。だから、思考操作も出来ないし震えた指じゃ手動操作も覚束なくて、中々上手く行かない。


「お、店主が来ちまったじゃん」

「ギャハハっ来ても関係ないだろ!」

「それもそうだな!」


 下品な笑い声に耳を塞ぎたくなる。


 

 ────それは二人組だった。

 その二人組は私の作ったリボンに触れていた。触れているだけなら別に良かった。だけど、ふざけてちょび髭の様に鼻に当ててみたり、股間に当てたりとふざけて遊んでいて、目の前が真っ暗になる。商品は舐められない、と分かっていても舐める振りもされた。最悪だ。


 穢された。

 

 ゲーム的仕様で汚れることはないけれど、私が大事に作った物たちが穢された。そうとしか思えなくて、足元が崩れていくようだ。そんな状態にされたものを誰が買ってくれるんだろう。そもそも、そんな物を売るのだって嫌だ。


 私が、火魔法みたいなのを使えていたら、この二人のプレイヤーごとアイテムを燃やし尽くしていたことだろう。私もヨツバくんみたいに魔法の練習をしとくべきだった。燃やし尽くしたい。


 もう、いやだ。


 

「……ね、ネイビーさん……」

「……!」


 ヨツバくんの手が私の肩に伸びて、だけどセーフガードで触れられないことに気が付いたヨツバくんはそっと、私の指先に触れてくる。


「だ、いじょうぶ、です……大丈夫ですよ……」


 その声は震えていた。だけど、私を気遣ってくれているのがわかって、僅かに胸が温かくなる。


 落ち着け。落ち着け、私。

 まずはメニューを開いて、それで、ブラックリストに登録を…………。


「お、なんだ、一人は美少女じゃねーか!」

「そんな奴じゃなくて、俺らと遊ぼうぜ」

「あ、遊びません! 迷惑です……!!」


 やばい、ヨツバくんにも魔の手が迫ってる。急がなきゃ、急がなきゃ。

 でも、急ごうとすると、上手くできない。ブラックリストの登録ってどこにあったっけ? あれ? どうやったら、いいんだろう。急がなきゃなのに、怖い。視界が狭まっているような感覚がして、息も上手く吸えない。

 そうして無駄に時間を使って、何もできないでいたら、ぴこんと通知が来た。今はそれどころじゃないのに。


『ネイビーさん、目を瞑って、目の前の人をブラックリスト、って念じてください』


 ! ヨツバくんからのメッセージだった。ヨツバくんも怯えてるのに、私のためにメッセージをくれた。


 目を瞑る。目を瞑ったら、少し息がしやすくなって、呼吸が落ち着いた。それで……。『目の前の人をブラックリスト』と念じた。

 そうしたら、ぽん、っと音を立てて、ウィンドウが表示された。


《プレイヤーネーム『ミーゴ』をブラックリストに入れますか》

《プレイヤーネーム『スーカ』をブラックリストに入れますか》


 はい、を連打した。早く、早くして。




「い、いなくなった…………」


 あいつらが持っていた商品がぽと……と落ちていき、地面につく前に机の上に戻ってくる。そんな面白い挙動にも今は反応することができない。


「よ、かった……です…………」


 へにゃへにゃとヨツバくんがぺたんと座り込む。繋いでいる手に引っ張られるように私もしゃがみこんだ。……私も立っているのが困難だったから、抵抗はしなかった。


「あ、はは……なんとか、なりましたね」

「…………ありがとう、ヨツバくん。わたし、ヨツバくんがいなかったら…………」


 ──上手く対処できなかった。


 情けない声が漏れた。恥ずかしい、いい大人なのに。

 素だって出てしまった。


 あぁ、私の理想の『ネイビーくん』だったら、忽然と対処したことだろう。嫌味の一つだって言っただろうし、格好良く美少女なヨツバくんの事も庇ったことだろう。

 私は何もできなかった。目の前が真っ暗になって、今にも倒れそうで、そんなところをヨツバくんに助けられた。ヨツバくんが機転を効かせてメッセージをくれなかったら、今もあの二人組が目の前にいたかもしれない。

 

「……と、取りあえず、触れないように……設定、します…………」

「それがいいと思います……」


 怖かったし、凄く疲れた。

 ……もしかして、自動取引で店主がいないところがほぼ商品に触れないように設定してあるのは、こういうのが理由だった……? ちゃんと調べてから露店を開くべきだったよ。

 ──因みに、ブラックリストにいれたらお互いの存在が見えなくなるようになるし露店も見えなくなるんだそうだ。



 

「……あの、商品見てもいいですか?」


 ヨツバくんの言葉に私は躊躇う。

 

「良い、ですけど……曰く付きですよ……」


 曰くは今、目の前で付いたのだけど。

 …………ああ、でも、見てないところでされていて、それを知らずに販売し続ける事にならなかっただけ救いか。


「大丈夫ですよ。仕様で、汚すこと、壊すことは出来ませんからね」


 そう言って微笑んでくれるヨツバくんは天使みたいだった。ううん、きっと、天使だ。そんなヨツバくんに、聖女は絶対相応しいだろうなぁ。私はその聖女様の信者にでもなろうかな。





「エッ、なんですかこれ!? 脱兎の習得速度上昇!? 初めて聞きました…………!!!」

「あぁ、やっぱりレアなんですね」


 そんなことを話していたら、近くにいた人が物凄い顔でこちらを振り向いた。怖い。また変な人だったら、秒で念じてブラックリストに入れるぞ。

 

「脱兎の習得速度上昇!? なんだそれ、俺が買ってもいいか?!」

「…………」


 購入希望だった。赤髪のイカツイおじさんってアバターの人だ。その見た目で、この『ウサギリボン』を付けるのだろうか。でもなぁ……。

 

「……先程汚されてしまいまして」

「見ていた。見ていたが、汚すことは出来ないし、気持ち悪さより性能の良さが勝つ。どうだ、売ってくれないか?」

「気にしないのでしたら…………あ、ヨツバくんも大丈夫ですか?」

「僕は買わないので大丈夫ですっ」

「そうか、じゃあ俺が買わせてもらう。お、自動取引か…………脱兎はどこだ……?」

「一番下の一番高いのですよっ」

「ありがとう。これか。……おっ、敏捷も+5、いいな。…………というか、安くないか?」

「そうですか?」


 眉を寄せて見られる。会話がなかったら、睨んでいるようにも見える顔だ。恐らく、困惑顔なのだろう。……『ネイビーくん』より怖そうな見た目の人ってレアじゃない?


「……あぁわかった。値段を自動設定にしているんだな。今の相場は、自動設定の2倍から3倍だからそうするといい。変えていいぞ」

「え」


 ……そう、だったんだ。本当調べずに始めたのは馬鹿だったみたいだ。これじゃあ金策にもならなかったね。でも、これらはなぁ……。

 なやんで、このままいくことにした。曰く付きで良ければ半額セール、ということにしよう。


「……これはこのままの値段で大丈夫です。あんなことがあったものなので、半額セールみたいな感じです。次から2倍か3倍にします」

「そうか、有り難く買わせてもらう!!」


 《アカドラさんが購入しました》


 アカドラさん…………アカドラさん!? ワールドチャットで道を教えてくれた方では? オマケっ、オマケがしたい!!


「……購入ありがとうございます。それと、ワールドチャットではお世話になりました。ええっと、……これ、もし良ければお礼です」


 赤系統のテーブルクロスを持ち物から取り出して渡した。名前に赤が入るし、髪色も赤だったので安直に赤を選びました。それと、レース付きじゃなくて、タッセル付きの方。


《アカドラさんに赤のテーブルクロスを譲渡しますか》


 表示ウィンドウにはいを選択。フフ、これで譲渡完了。押し付けとも言う。

 

「ワールドチャット…………申し訳ないがネイビー、に覚えがないんだが…………受け取ってしまって良いのか?」

「良いですよ」


 アカドラさんは少し申し訳無さそうだ。でも、色んな人の質問に答えているんだろうし、覚えていなくても当然だ。それに、こういうの憧れてたんだよね!

 落ち込むこともあったし、楽しいことして紛らわしたい。


「なら、受け取らせてもらう。オシャレなテーブルクロスだな……。ん? 待て、『器用+2』が付いているぞ!? テーブルクロスの上での作業で付与……生産職向けだな……俺じゃ使いこなせない」

「…………そう、なんですか。付いているのにも気が付いていなかったので、気にしないでください。お礼を兼ねたオマケですから」

「そう言うなら…………貰えるものは貰うが。ありがとう」

「いえ」


 アカドラさんは、元気に「脱兎を習得できたら報告に来るからなー!」と言いながら帰っていった。報告にまで来てくれるんだ。

 ふと隣を見たら、ヨツバくんと目が合う。おめめがキラキラしていて、今にも喋りたくてうずうずしている顔だ、……と思ったらすごい勢いで始まった。


「凄いっ! テーブルクロスにまで効果がついているんですか!? というか、僕も絶対使いこなせませんよ僕が買っちゃって良いんですか?!」

「……良いですよ。誰が買うかは自由ですし。もしかしたらテーブルクロスじゃなくて、絨毯?みたいに扱ってその上で魔力操作したら、器用が足されて良い結果になるんじゃないですか?」

「確かに…………い、いえ! テーブルクロスに座るなんて出来ません!! でも、テーブルの上に手を置いて、魔力を動かすのでも良いのかは気になりますね……判断が難しいですが……」


 ぶつぶつと呟きながら、ヨツバくんは自分の世界に旅立って言ってしまった。

 その間に、私はテーブルクロスの値段を調べる。相場は、自動設定の2倍か3倍、なんだよね? じゃあ、2.5倍にしよう。自動設定が800Gだったので、2.5倍で2000G。ヨツバくんに売る予定のテーブルクロス以外を、その値段で登録していく。うん、これで完了!


「ヨツバくん」

「…………あ、えぇっと、なんですか?」

「テーブルクロスの値段決まりました。800Gでどうですか?」

「や、すくありません……?! あっもしかして!!」


 ヨツバくんは売り物のテーブルクロスを発見して値段を見てる。バレちゃった。


「僕も自動設定じゃなくて、相場で払います! 2000Gですね!」


 秒で、お金が譲渡されてきた。

 それを受け取って少し考える。うん良いこと考えた。

 

「俺も送りました」 

「エッ、ちょ、……テーブルクロスだけじゃなくてお金もあるんですけど!?」


 ふっふっふっ、テーブルクロスと一緒に差額分も送り付けてやったのだ。これで、売りたい金額で売れました、ピース。


 と思ったら。


「…………」

「…………」


 ヨツバくんからも、無言でお金が送り付けられていた。私が送った分のお金だ。負けません、という顔で可愛く睨みつけられる。怖くないよ、可愛いだけだよヨツバくん。

 ……なので、私も無言で送り返した。


「…………」

「…………」

「………………」

「………………」


 その応酬が何度も続き、最終的に根負けしたのは私でした。


 


 


 

 


 


 

いつもお読みくださりありがとうございます。

ブクマ、評価、いいね、感想、誤字報告ありがとうございます!

皆様のおかげで、VRゲームの日間3位にランクインしていました!めちゃくちゃ嬉しいです!

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