第25話 露店と果物屋
やってきましたファルシュト!
ワープして出てきた場所は、ファルシュトの真ん中に位置する噴水広場でした。
まずは露店を開きたいので、西側の青空通りに向かいます。……露店に行ったのは、現実的には昨日の記憶なのに、ゲーム内では数日前だから、露店の記憶が薄れてきてるよ……。
場所だけはしっかり覚えていて良かった。まぁ、青色の屋根の青空通り、って覚えやすいもんね。
◇ ◇ ◇
青空通りを真っ直ぐ進んで、露店が集まる広場に辿り着いたので、まず真ん中にある立て看板を注視した。途端にぽんっと音を立ててウィンドウが出現する。
『露店を開くには登録が必要です。登録をしますか』
前はこれに『いいえ』を選んだけど、今回はしっかり商品を持ってきたので『はい』を選択する。
「え、露店の名前……?」
そんなのも決めないといけないの!? しかも、被りは駄目、だって。マジか~、それなら初日に登録だけはしとくべきだったかな?
うんうん頭を悩ませて、なんとか被ってない店名を捻り出す。『ネイビー』も『オリーブ』も駄目だったから、かなり大変だった。
それで、店名は『リービーティー』になりました。『ネイビー』と『オリーブ』を足したり引いたりして、何となく気に入った『リービー』と、お茶会するために開く露店なので、そこから『ティー』をプラスした。
なんとなく『リービーティー』って、もしかしたらそんな茶葉もあるかもって思わせてくれて、かなり気に入りました。
店名が決まったら、『看板に触れてください』と表示されたので、そーっとこわごわと触れた。
「わ、とと……」
触れた瞬間、突如目の前の景色が変わって、私は違う場所に立っていた。それに驚いて、私はちょっと転びそうになった。……恥ずかしい。
キョロキョロと見渡せば、商品が空の露店の中に居た。露店は、広いテーブルと小さな椅子が一つあるだけのスペースだ。
『ここがあなたの露店になります』
ウィンドウにもそう表示がされて、読み終わったのが認識されたのか、ウィンドウが消えていく。
おー! 露店を手に入れました!
「取りあえず作った10個を並べよう……」
テーブルに触れたらウィンドウが出現したので10個並べていく。並べながら、周りの露店と見比べてしまって、商品の数の差に恥ずかしくなった。10個って少なかったな……。しかも、小さいものだし……。
まぁ、いいか! 露店で自動取引に設定した商品が勝手に売れていく間に、私は生産をする、ってことがしたいからね! その方が効率的だろうし、うん!
…………売れるといいなあ。
「あ、これディスプレイ自由に出来るんだ」
テーブルに布を敷いたり、飾り物を付けたりと自由に出来るみたいだ。勿論、商品の位置も整えられる。
一番うちの店!ぽい布は青緑グラデーションの『木々のゆらめき』なんだけど、あれをテーブルクロスにするのは勿体ない気がするんだよなぁ。あと、あの布は自分の服を作るのに取っておきたい。
…………でも敷きたいなぁ。うちの店らしさが出る気がするんだもん。うん、その気持ちが強いから、自分の服を作って、その後に微妙に布が余りでもしていたら、テーブルクロスにしちゃおう。
だから、今は諦めて何も敷かない。
因みに、商品は、種類ごとに離して置いてある。全く同じ見た目で性能が違うから、分かりやすいように同じ性能は近付けて、違う性能の物は離しておいた。
あと値段ね。値段は、自動設定があったのでそれを活用してみました。こういうの苦手です。
それと自動取引に設定してるときに気が付いたんだけど、プレイヤーが商品に触れるかどうかも露店主が決められるようだ。自動取引に設定したら絶対触れないんだと思ってた。
よく読んでみても、ただ触れるだけだし、壊すことも盗むことも出来ないみたいなので、OKにしておく。
よし、露店も準備できたね。開店、を押して……と。
これで、プレイヤーに見えるようになったらしい。…………正直、私目線では変わってないんだけどね、他のプレイヤー目線では、幕が降りていて中が見えない状態だったらしい。それが、開店を押すことによって見えるようになる、と書かれていた。
うん、開店も出来たし、りんごを買いに行きましょう。
りんごは南側の朝顔通りだったね。
◇ ◇ ◇
露店から徒歩で向かおうと思ったんだけど、一度マイルームに戻ってファルシュトに飛び、噴水広場から歩いていった方が早いことに気が付いたので、マイルームを活用しました。
そしたらね、行き先に『露店』が追加されていた。
まさか、と思ってワープしてみたら自分の露店に飛べたんだよね。……マジか。便利でいいんだけど、この機能もっと早く知りたかった。それなら、登録だけしといて、そこから他の露店散策とかがいつでもできたのでは……?
ついネガティブになるけど、ゲーム開始2日目で知った、と思えば早いよね。これからはいっぱい活用したい。置き物のリスみたいな、ああいうプレイヤーメイド限定品ももっと欲しいからね。
それで、リンゴです。白い建物が続く通りが四本あって、その内の一本が朝顔通り。その通りを半ばまで進んでいくと果物屋さんがあるんだよね。
正直、どの通りだったか分かりにくい。前のときに、青空通りに行くためマップとにらめっこしながら帰ったから、ギリギリ分かるくらいで、あの時にマイルームを使って帰ってたら二度と辿り着けなかったと思う。
そのくらい難しい。…………私が方向音痴なだけ?
マップ機能があるのに迷子になりかけるの困るよねー。
因みに、今も住民には警戒されている。そんなに怖い顔かなぁ、イケメンだと思うんだけどな。確かに優しそうではないけど。
「お、目付きの悪い兄ちゃんじゃねーか。本当に、また来たんだな」
またもやご挨拶〜。でも、覚えていてくれたし声を掛けてくれるだけ良い人なのかも。良い人判定が低すぎるよ私。
「リンゴ美味しかったので、買いに来ました」
「リンゴだけか?」
「……何か、オススメありますか?」
「今の季節ならミカンが美味いぞ」
「じゃあ、それも買います。……リンゴ5つと、ミカン3つお願いします」
「おうよ!」
そう言えば、この世界って食糧事情どうなっているんだろう。リンゴやミカンが置いてあると思えば、スイカやメロンも置いてある。一通りの果物が季節関係なく置いてあるんだよね。
…………そもそもFJOって季節あるのかな?
体感で言えば春っぽい。咲いている花は多いし、寒くもなく暑くもないぽかぽか良いお天気だ。過ごしやすい気温で大助かり。
なんて考えていたら、からかいの言葉をかけられた。
「今回も食っていくのか?」
「……食べていきません」
恥ずかしいな。やっぱりリンゴの食べ歩き、は変な人だよね。そりゃあ覚えられもする。……まぁ、今は満腹度が平気だから食べないけど、またギリギリにさせちゃったら私は食べるだろうな。
「リンゴとミカンありがとうございました。また来ます」
そう言って私は踵を返した。恥ずかしいので、早く帰りたい。
少し歩いて、店主が見えなくなった位置で、マイルームに飛び帰った。




