第2話 チュートリアル
やってきましたチュートリアル。いえーい、ぱちぱち。
……だから、作ったこの顔に似合わないんだよね。やめらんないけど。
しかも、冒険開始を押したらさっきまで目の前にあったアバターが消えて、いつの間にか自分の体が、作ったアバターになっているから顔が見えない。つまり、イケメンの自覚を持てない。そんなんだから、ついつい不似合いの言動をしてしまうのも仕方ない、って思うんだよね。
『チュートリアル1を開始しますか?』
「はーい!」
おっとと、またやらかし。しかも、声を低いイケメン声に設定してあるから、声を出すと更に違和感。ちゃんと語尾とか伸ばさず、喋ってそうな声をしているから気を付けていこう。……あれれ、こんなにガッチガチのロールプレイするはずじゃなかったんだけどな?
まぁ楽しいからいっか!
『まずは歩いてみましょう』
「はい」
うむ、今度はいい感じ。落ち着いた好青年って感じで萌えだね! 自画自賛を止めらんない。
因みに、歩くのは簡単にできた。まぁ物心ついたときからVRに触れてきた身としては今更……、って感じのチュートリアルではある。あるけど、ゲームによっては本当に体の動かし方が難しいときがあるから、こういうチュートリアルがあるのも仕方ないかなーって思う。
その後のチュートリアルも、VRゲームに慣れている人間にとっては簡単な作業が続いた。『手を上げてみましょう』だとか、『ジャンプしてみましょう』、『走ってみましょう』『スキップをしてみましょう』などなど……、それを言われるがままにこなしていく。
うん、難しいものはないね。現実との差異もないし、面白いバグも起きない。とても良いゲームだ。
『チュートリアル1が完了しました』
〈プレイヤーランクが2に上がりました〉
「えっ」
はや。早いとは聞いていたけど、こんな簡単なもので上がるんだ。そりゃあ、プレイヤーランク5になるのもあっという間だ。
因みに、プレイヤーランクのレベルとは別に、職業用のレベルもある。こっちは、オンラインサービス開始してからじゃないと上げることが出来ないから、今は関係ない。
『チュートリアル2を開始しますか? 2では、初期から解放されている武器の試用を行うことができます』
「お願いします」
『それでは、試用を行いたい武器を選んでください』
ぽん、と可愛らしい音を立てて目の前にウィンドウが出現する。初期武器は、『片手剣』『槍』『杖』『弓』の四種類のみだ。少ないな、と思っちゃうけど、FJOの場合は、最初の職業が全員『旅人』で、その恩恵により初期武器種ならば全て装備可能なのだ。
装備できる武器種を増やすには、職業クエストをこなして転職が必要になる、らしい。この辺は正式サービスがまだだから、詳しい内容は分かっていないけれど、公式サイトの説明を要約すると、沢山職業も武器もあるからサービス開始後に探してね、って感じだった。
「……片手剣からお願いします」
『片手剣のチュートリアルを開始します』
どの武器から練習するか悩んだけれど、上から順に全て行うことに決めた。
私は生粋のエンジョイ勢だから、こだわりの武器、は特になくて、その時の気持ちによって使うものを変えている。
ゲームによっては、選んだ職業によって配布の初期武器と衣装が変わるから、その時は一番見た目が好きな衣装の職業を選んで遊ぶ、とか。そう言ったことをしている。エンジョイ勢なので。
勝っても負けてもね、誰かと一緒に遊ぶって楽しいよね!
……もちろん、負けたら悔しいけど。それでも、勝つことより誰かと遊ぶことに重きを置いている。だから、そのスタンスの人としか関わらないようにしている。ガチ勢からしたら、エンジョイ勢は迷惑だったりするもんねー、仕方ない。
実は、ガチでやったこともあるんだけど、向いてなくってやめちゃった。クランに毎日挨拶するのもノルマも辛いし、そもそも負けたときに何が悪かったのか分からないんだもん。上手くなりたいとは思ってるし、直せるとこは直したいと思ってるのに、誰かにアドバイスをもらってもピンと来なくて、直せなくて、怒られる。
それの繰り返しで、マルチって難しいなぁって。
その後からは、徹底してわちゃわちゃするのが大好き!ってタイプのエンジョイ勢としか絡まなくなった。……まぁ、わちゃわちゃするのが大好きすぎるクランに入ると、攻略ガチクランよりも挨拶とかが厳しくて、それはそれで辛くてそこも向いてなかったんだけどね。だから、ぶっちゃけほぼソロ活動しかしてない。
あれ、私ってばMMORPG向いてなさすぎない??
でもやりたいんだもーん! 楽しいんだもーん!
他のMMOでやってることは、やっぱりお茶会。ワールドチャットのお喋りに混ざりながらソロプレイをしているんだけど、たまに自由参加のお茶会の開催をワールドチャットに流してくれる神様みたいな方が現れるから、そこにふら〜と参加して、そこで仲良くなれそうなお友達を作ったり、みたいな。
小さなお庭の小さいお家なら、メインストーリーを進めるだけで貰えるゲームも多いからね、お茶会を開くハードルは余り高くない。
知り合いより初対面とのほうがサクサクお話できる私みたいなタイプにはうってつけなのだ。
〈『片手剣』のスキルが解放されました〉
お、やったあ!
このゲームは、経験を積んでスキルの解放を行い、そのスキルの取得にはスキルポイントを振ることで取得可能なシステムを取っている。スキルポイントは、職業レベルを上げることで入手が可能。……って、公式サイトで読んだ。
つまり、開始前で職業レベルを上げられない今は、まだスキルポイントが手に入らない。
スキルを取得するメリットは攻撃力がアップしたり、技を覚えたりすること。でも、武器の装備自体にはスキルは必須ではないから、攻撃力は低くてもスキル無しで武器を扱うことも可能だ。
だけど、一つ注意が必要で、初期職業の『旅人』なら、初期武器の四種類はどれでもスキル無しで扱えるが、何か新しい武器種を見付けても装備は出来ない。装備が出来ないので、スキル解放までの練習をすることもできない。
しかも、スキルを取得しても、そのスキルが対応していない職業に転職してしまったらそのスキルは使えない、らしい。でも、スキルを取得することによって、転職できる職業の幅が広がったり、とかなんとかかんとか…………。
え〜っ、頭こんがらがる〜!
公式サイト熟読したけど、まだまだ理解をしきれてないから、この辺は正式サービス開始してから追々覚えていきたい。
因みに、片手剣の練習方法は、剣に沿って光の軌跡が出現していて、その軌跡を辿るように振る、って感じだった。難しいことは特にない。
しかも、この片手剣は木で出来ていたからそこまで重くなくて、体が振り回されて大変とかもなかった。
よーしサクサク他の武器種のチュートリアルも行っていきましょう!
〈『槍』スキルを解放しました〉
〈『杖』スキルを解放しました〉
〈『弓』スキルを解放しました〉
『チュートリアル2が完了しました』
〈プレイヤーランクが3に上がりました〉
……うん、槍も杖も弓も木で出来ていて、光の軌跡通りに行っていくだけだったよ。それで、全部スキル解放までできました。やったね、ぱちぱち。
『これでチュートリアルを終了いたします。
メニューからモンスター討伐を受注することが可能となっております。また、再度チュートリアルを行いたい場合もメニューからとなっております』
「はーい、ありがとうございます!」
…………あ、低い声とのギャップよ。
だって、顔見えないし、喋らなきゃ声も分からないし、イケメンなの忘れる。
「あ、そうだー」
スクショ撮ろ、スクショ。えーっと、カメラモード……ってメニューのどこにあるんだろう。こういうときこそ、脳波読み取りの恩恵、思考操作を使うとき。『カメラモードを起動する』……よし、出来た。
自分の視界を撮るモードと、カメラの位置を決めて撮るモードがあるから迷わず後者を選ぶ。カメラの位置を調整して……、よし!
……あ、撮れた。ここのアルバムに保存されるのね、なるほど。音もなく撮れたから、一瞬撮れたのか分かんなかった。
それにしても顔が良い〜〜! なんて良いアバターだ!
……お茶会には向いてないけどね!!
それじゃあこの後は、モンスター討伐を楽しむぞー! おー!