第15話 ストーリー、そして次の町へ
最初のストーリーをしてきました。
…………ストーリー、だったか?
「…………ストーリーというか、クエストでしたね。良くあるお使いクエスト、ってヤツですね」
「そうでしたね……。でも、お使いクエスト結構好きなんですよね……」
「僕もです」
次の町『トゥエ』に向かうためには、お使いクエストもといストーリーを発生させていなければ行くことが出来ない。……あ、行くだけなら全然行けるんだけどね、発生させてからじゃないと町の中に入れない、らしい。
ストーリーの発生場所はギルド。
生産ギルドでも冒険者ギルドでも、どちらかに訪れると発生する。ギルドは東側に集まってたよ。
ヨツバくんは冒険者ギルドには来ていたんだけど「今は忙しいです」って断っていたらしい。……断れるんだメインストーリー。
ストーリーの内容を要約すると、『ようこそファルシュトへ。旅をするなら、ギルドに入ると良いことがたくさんあるぞ。あぁ、旅の次の目的地はトゥエにするといい。トゥエに行くなら、これをトゥエのギルドに運んでくれ』みたいな感じだった。
あと、知らなかったんだけど、今現在いる場所は『ファルシュト』って言うんだって。町、というよりかは都市という規模で大体の物は揃ってる場所なんだってね。これは、博識ヨツバくん情報。
「なんかこう……もうちょっとストーリーがあるもんだと思ってまして…………だから、後回しにしてたんですけどね……」
ヨツバくんはちょっとへこんでる。壮大な何かが始まるものだと期待していたらしい。自分たち旅人じゃないと解決できない何かが起きて、みたいな。
逆に私は、序盤だしこんなものではと思ってる。他のゲームでも良くあるよね。
「……それにしても、レア演出じゃありませんでした?」
「…………」
レア演出って、アレのことを言ってる?
私は思い出したくもないよ……この世界に降り立ってから住民とはこういうことばかり。
「ギルドの人が、『そこの目付きの悪いお前、問題は起こすなよ』ってネイビーさん指定で言うから、僕びっくりしちゃいました」
「…………ヨツバくん」
私だってびっくりしたよ。問題なんて起こすわけないでしょ。
ついついムスッとして、ヨツバくんを睨む。それはもう目付きの悪いと良く言われる顔なので、怖い顔になっていることだろう。
「わ、わぁ、すみませんっ……!! ……でもネイビーさんって怖くても顔が綺麗なので……その顔で睨まれると変な扉開いちゃいそうです…………」
「やめて」
何言ってんのこの子は!!!
「えへへ。……ええっと、気を取り直して『トゥエ』に向かいましょうか!」
「そうですね。……そうだな?」
「エッ敬語からタメ口への移行ですか! いいですね!」
ちょっと試しでやってみたら凄い食いつきようで、こっちがびっくりする。……タメ口もありかなって思ったんだけど、継続的に格好良いタメ口を喋れる自信ないな。
「…………やっぱりタメ口は難しいので敬語にします」
「そうですか? 好きなように喋ってくださいね」
「ヨツバくんこそタメ口で良いですからね」
「うぇっ僕がですか!? ……うーん、ネイビーさんにタメ口はちょっと……難しいですね…………」
何故に。
そんなことを喋りつつも、ひたすら東に向かって歩いている。トゥエは東の先にあるそうだ。道も整備されていて歩きやすいし、整備された道に沿っていけば良いだけなので迷子になることもない。……って、ギルドで教えてもらった。
そう、ギルドで思い出したけど、ギルドにも登録してきたよ。冒険者ギルドと生産ギルドの両方にね。存在をすっかり忘れてたんだけど、プレイヤーランクは、ギルドクエストやストーリーを進めることによって上げることができる。
プレイヤーランクを上げたら、マイルームの拡張機能が解放されるから、落ち着いたらランク上げも頑張りたい所存。
あと、今のところは入る気はないんだけど、クラン解放もプレイヤーランクを上げたらなんだって。
あとは……ええっと、特典はもっとあったんだけど、覚えきれませんでした!
「のどかですねぇ」
「のど、か……???」
今もワイルドウルフを撲滅したヨツバくんが言うセリフですか。軽快な音を立てて、私のレベルがまた上がっていく。町につくまでに何レベルになっているだろう。
というか、このあたりの適正レベルっていくつなんだろか。私のレベルが簡単に上がるってことはそれなりに強いところなのでは? そもそも……。
「…………ヨツバくんって何レベルなんですか?」
「……。えへ、内緒です」
「…………」
ヨツバくんは、舌をぺろっと出して斜め上を見て誤魔化してくる。自分の顔の美少女加減をよく理解してらっしゃる。可愛いから、誤魔化されてあげよう。
多分、適正レベルより上げ過ぎちゃったタイプだな。でも気持ちはわかる。私もボス前には、馬鹿みたいにレベルを上げておかないと気が済まないタイプ。
技量なんてものはないので、レベルで殴れ!
…………ヨツバくんは技量もありそうだけど。
「……あれ、あのモンスター初めて見る気がします」
「あ! ラビットベアじゃないですかっラッキーですね!」
「…………あれが、ラビットベア…………」
ラビットベアはウサギ耳もクマ耳もついていた。真ん中にウサギ耳があって、ウサギの耳を挟むようにクマ耳が配置されている。それでいて、体はボールみたいにまんまるで、ボールが跳ねるように動いている姿は、────可愛い。
「ギィシャアアアッッッ」
「!? 可愛くない!」
こっわ。
こっちを認識した瞬間、毛に隠れるようにあったつぶらな瞳が血走ったように釣り上がって、歯茎むき出しで威嚇してきた! こっわ、え、怖いんですけど……。
「倒しましょう! 経験値も素材も美味しいんですよねっ!」
振り返ったらこっちも怖かった。戦闘狂なの君。爛々とした目でラビットベアを見詰めながら、杖を揺らしていて、近くにいるだけで怖い。
……って、足はやっ。
ドン引いてたら、ヨツバくんがダッシュを決めて、ラビットベアに接近していた。その走っている勢いのまま、杖を振り被ってラビットベアをぶん殴る。──ぶん殴ったら、空を飛ぶ毛玉が生まれた。
「ギィイイイッシャアッッ」
「あ、そっち行きましたー!!!」
「ぅ、わあああっ?!」
毛玉、もといラビットベアが私に向かって飛んでくる。咄嗟に剣を構えたけど、どうしたら良いかわからない。今から避ける……は無理。怖くて、足が地面に縫い付けられたかのように固まっている。
「ひぃっ……」
怖い怖いこわい。ちょうど顔面が私の方を向いていて、むき出しの歯茎に今にも噛み付かれそうだ。怖すぎる。ちびりそう。どうしたらいいの、助けて。
そう思いながら剣を突き出した。無意識の行動だった。虫を見て棒でこっち来んな、ってやるような無意識的行動だった。
「ギィ、シャ……アァ……ァ…………」
〈【称号】串刺しを取得しました〉
刺さった。毛玉が。それはもう柄までぶっすりと。
これがゲームで良かったよ。倒されたモンスターは即座にポリゴンとなって消えていくから、剣で串刺しにされた毛玉で血まみれ、みたいなグロさにはならなかった。一瞬だけラビットベアの口内が手に触れたけど、気の所為だったってことで。
うん。倒せて良かった良かった。
血すら残らないからグロ耐性なくても大丈夫だね! ははっ……はぁ……。
「……あの、ごめんなさい。杖を振り被りすぎました。……大丈夫でした?」
「あまり大丈夫じゃないですね」
「そうですよね……。でも、倒せて良かったですっ」
「それは……、そうですね……」
わんちゃん、高速ラビットベアが顔面にぶつかっていたかもしれないし、そのまま顔面を噛まれていたかもしれない。それを考えると最良の結果だった。
「…………あと、串刺しの称号を手に入れました」
「串刺し!? 初めて聞きましたっ効果とかあるんですか?」
「ええっと…………」
ステータス欄から称号を選択して効果を確認する。……うん、予想はしてた。
「刺す行為に関してクリティカル率アップ、だそうです」
「………………槍に転向します?」
うん、私も思ったよ。




