後継者
とりあえず、私達はどの位走ったのだろうか?
「・・・。」
「やりがいあるでしょ?」
「・・・。そうだな。」
「姉上には勝てないかもしれない。貴方が加わった所で、僅かに可能性が上がっただけ。」
「・・・。」
残念ながらその通りだ。
あの方は人であって人ではない。
人の身では遥かに及ばない、そんな気がする。
「ところで、ここは、どこか?」
「ここは今の私達が手の届く最果ての地。」
「?」
突然前方より声が聞こえ、そこに美少女が佇んでいる。
「私は永遠。義母様の命で、挨拶に参りました。」
永遠と名乗る少女は抑揚のない言葉で語りかける。
鏡もまた無感情で返すものの、日巫女とは違う感情を示している様に感じる。
「この子は姉上の後継者。その秘めたる力は姉上と同等。いやそれ以上かも・・・。」
「・・・。」
この少女もまた、人ならざる力を感じる。
まだ幼さは残しているが、なるほど後継者と呼ばれるに相応しい雰囲気を纏っている様だ。
「君も敵となるのか?」
「・・・。そうですね。ただ、今はお帰りください。あの山を越えれば、貴方方の国です。」
「戦乱の目を摘まないのか?」
「我々の運命が交わるのは、もう少し時があります。その時は容赦いたしません。」
「・・・。分かった。」
我々は足早にその場を離れる。
考えるまでもなく、時間は貴重だ。
そして、永遠はと言えば、それを見届けることなく、すぐにその優美な左腕を天へ翳す。
「黒羽。」
どの空間から現れたのか、その掌の上に一羽の漆黒の鴉が姿を現す。
「永遠様。御前に。」
「彼等の偵察をお願いします。」
「偵察のみで良いのですか?」
「それで構いませぬ。」
「承知いたしました。」
すぐに鴉は姿を消す。
「これで主要な駒は盤面に乗りました。あとはこの試練の先に、何が見えるのか・・・。」
楽しみです。
そして彼女も静かにその場を立ち去った。
「日巫女、永遠、そして剣流・・・。」
「・・・。彼女達がこの世界の鍵というのか・・・。」
最後の剣流という人物は分からない。
だが、運命を感じる。
「だが、私には貴方がいる。」
「・・・。過大評価だな。」
「いいえ。彼女達は体制が整うまでは、今しばらく時間があります。」
「どういう事だ?」
「つまり、神に逆らうには時間が必要と言うことです。」
「好き好んで神罰を受けるつもりもないとの事か?」
「その通りです。彼女達にとって、我々はあくまで最期の敵。それまでに南を固め、力を蓄えます。」
「・・・。私は何をすればよい。」
「そうですね・・・。」
鏡は頬笑む。
「ただ在ればよい・・・か?」
彼女は何も答えない。
「フッ・・・。どちらにせよ、私はそなたと在る。精一杯演じてみよう。」
「それでようございます。おっと、話しているうちに見えてきました。我が拠点が。」
「!」
私は頭を抱えた。