ドメルィと朝焼けのなかまたち!
「喰らい死ね、ドメルィ。絶命必至、ファング牙サ~ンド! いただきま~す!」
「鋼鉄棍。"つっかい棒"!」
「ガキンッ! ご、あがご……」
恐ろしく開かれた、頭に手足を生やした姿のドラゴン、ガイナズカルの牙まみれの口へと、鋼鉄のシャフトが垂直に挟まれた。
びっしりの牙トゲに長いシャフトが妙な挟まり方をして、ガイナズカルは死ぬまで口を開くことも閉じることもできなくなる。
早朝の大型ショッピングモール。入り口前のロータリー。
長い髪先を肩へ垂らした、クラシックロリィタ服の女が、壊れたトラバサミから跳んで距離をとり、小さな両手に炎の棍を展開した。
「アガガ、ガ……ガ!」
「シャフト。フレイムバトン」
「ガア~ッ! ゴガガァ~!」
おのれ、のトーンで絶叫するガイナズカルの目の前で、炎の矛先が形成される。
西洋人形ふうの格好をした女──ドメルィは、人形よりも凪いだ無表情で、両手で矛を無慈悲に構えた。
「喰らい死ね、ガイナズカル」
「ガアアアア~ッ! アアガァアアア~ッ!」
もはや意味すら持たない唸りを張り上げ、全身で怒りと悔しみを表現するガイナズカル。
彼の視界からドメルィが消え失せ、
「ガギャ!? アッガ、ガガア~!」
「"盾つらぬきの矛"」
「ガギ!? ブギャア~ッ!」
突然の敵の消失に、勝利を確信するガイナズカル。
その背後にドメルィが着地して、矛を振り終えると、無防備の頭体から炎の斬閃が噴き上がった。
歓喜から一転、断末魔をあげて塵へと還るガイナズカル。
彼が再び目を覚ますのは、12時間後の夕方だ。
「……ふんっ。ゴミが」
「ファ~……」
「んっ? 新手か」
矛を回しながら閉じ消す、ドメルィの背後。
高貴なBGMと共に、神々しい六枚羽を広げた、太いトゲが着地した。
その頭部はボウリング球。キラめく雲の首は長く、体へ行くにつれ太まっていき、円柱状の仏壇ボディに繋がっている。
背中からは白く高貴な、翼かける6。両手は太く、カギ爪を持ち、両足も太く、まるでレンガで作った丸太の見た目だ。
太い尻尾をバシンと叩きつけ、高貴宇宙人レガント獣人が、6つの穴の目をスクロール点滅させた。
「我が名はノウブレガント。人の身の分際でイキりまくった、人の子の世に神罰をくだす」
「シャフト」
「無駄だ。クラッキングヘルボール」
透明な鋼鉄棍を展開するドメルィに、レガント獣人が白く高貴な糸をまとった、巨大なビームボールを発射した。
ビームボールは純白のプロミネンスをほどきながら、轟音を立ててドメルィへと迫る。
やがて白く尊い爆炎が巻き上がり、その優雅な風景にレガント獣人は6つの穴から涙を流した。
彼の背後から、
「……エレガント」
「シャフト。生命保護バトン」
「ホワイ? 何?」
木とツタ葉の刃が、太い首を貫いた。
ボウリング球をグリグリ動かして、獣人は背後のドメルィを見る。
「う~ん。なぜ生きている?」
「"身ごもりのウロ木"」
「メキメキメキメキ……! ホワ~イ?」
ノウブレガントの体を貫いた木の矛が膨らみ、巨木へと成長していく。
やがて高貴なる翼は、空っぽの虚ろな木の穴に捻じ込められた。
「その木は生命、子の盾となる母。いかなる攻撃も、その木の肌を傷つけることはない」
「フッ。ガール、技の自慢したさに失敗したな。それはつまり、キミがワタシを傷つけられないことをも意味する」
「シャフト。フレイムバトン」
獣人のそしりには構わず、ドメルィは炎の矛を開いて回す。
幹に縛りつけられた優美な翼が、中空で苦痛に身をよじった。
「ガール、無駄なマネはよしたまえ。無駄とは貧愚……エレガントではない」
「"盾つらぬきの矛"」
「ガール……な、何!?
ガッ──」
ドメルィが矛を掲げ、怪獣人が呆れ憐れむ。
そして、洋風人形が炎を矢にして投げ放つと、唐突に木の幹が消失した。
保護盾を失った翼は空中で狼狽し、炎の槍が白を貫く。
朝焼けの空にボールの爆炎が膨れ上がり、ドメルィの周囲に羽のカケラが舞い散った。