ハイビームで走っている車はバカなのか!?
どうも。大型トラック運転手をしております、しいなです。
前に勤めていた運送会社では月に一回、安全講習がありました。教育部長のジャイアンさんがいて、全員揃った乗務員を前に、こんな質問をしました。
「基本的に、走行時に使うのは、ロービームか? ハイビームか? どっちだと思う?」
「ロービームだと思うやつ?」
手を挙げろとの指示に、私を除く全員が手を挙げました。
「ハイビームだと思うやつ?」
私だけが手を挙げました。
部長がいいました。
「正解はハイビームだ。『ヘッドライト』とはハイビームのことだぞ。ロービームの正式名称は『すれ違い前照灯』、対向車がある時だけロービームにし、基本的にはハイビームで走るのが正しいんだ」
部長は性格がジャイアンなので嫌いでした。私が一人だけ正解しても『正解しやがって』みたいに無視しました。
でもさすがに教育部長とあってよく勉強されていて、いうことはいつも正しかったです。
プロと呼ばれるトラック運転手でもこの通りほぼ全員が間違って覚えていますが、その通り、車は基本的にハイビームで走行するのが正しいです。厳密にいえば対向車のないところをロービームで走っていたら『安全運転義務違反』でお巡りさんに捕まります。まぁ、お巡りさんはまずこれを捕まえないんですけどね……。
これも今とは違う会社でアルバイトをしていた時のことですが、夜道を同僚のおじさんと並んで歩いていた時、前から車が走ってきました。公道を走る車のほとんどはロービームで走行しているものですが、その車は珍しくきちんとハイビームで走行してらっしゃいました。
並んで歩いていたおじさんがいいました。
「眩しいな! クソ!」
そして得意げに、私に向かって語りました。
「ぼくはね、ああいうクソ車が前から来たら、こちらも思い切りハイビームにしてやり返してやってますよ。いつもね」
私はいつも基本ハイビームで走行します。
そうしていて、カーブの向こうからロービームの車が来たら、出現するまで気づかなくてロービームに落とすのが遅れることがあります。
そういう時、同僚のおじさんのようにムカついたのか、延々とハイビームを食らわし返されることがあります。
こちらは気づいてから落としたんですが、あちらはすれ違い終わるまでずっとハイビームです。
ここで質問。私が対向車がカーブの向こうからやって来るのに気づくのが遅れたのはなぜでしょう?
正解は明らかです。
対向車さんがロービームだったから、出現するまで気配に気づかなかったのです。
これがハイビームにしてくれていたら、もっと早くに察知することが出来るんです。あなたが眩しい目に遭ったのは、あなたがハイビームにしていなかったからなのです。
ハイビームで走行することの理由は、主にふたつあります。
ひとつはなるべく遠くまで見えるように。
誰もいないように見えていた夜道でハイビームにしてみたら横断歩道を渡っている黒猫に気づいたりするものです。以前、国道のど真ん中に酔っ払いが寝ていて、若い子の乗る乗用車が轢き殺してしまった事故が私の身近で起きました。あれももしハイビームにしていたら轢かずに済んでいたかもしれません。
ハイビームにする理由のふたつ目は、自分の車の存在を対向車や脇道から出ようとしている車、歩行者などにアピールする目的です。『眩しい』ということは『存在を気づかれている』ということです。
よく『歩行者が眩しいだろうからハイビームで走ることはしない』と仰る方をネットなどで見かけますが、何かおかしくはないでしょうか?
歩行者だって安全タスキを着けて存在をアピールしますよね? それが安全だから。
車もハイビームにすることで自分の存在をアピールするのです。これは自分の安全のみならず、周囲すべてのものの安全を守るためです。
ハイビームの車が前から来たら眩しいです。眩しければ歩行者は下や左を向いて目をそらすことが出来ます。無灯火の自転車を気遣う義務など車にはありません。
安全を損ねてまで誰をも眩しくしないことにどんな意味があるのでしょう? 安全よりも大事なものがあるというのでしょうか?
ただ、ここで肝心な問題がひとつあります。
私の印象では、公道を走っている車で、ハイビームにして走っている車というのは一割もいません。
その中でも『ちゃんとハイビームを使えている車』というのは、ほとんどいらっしゃいません。
前述した通り、ヘッドライトとはハイビームのこと。そしてロービームの正式名称は『すれ違い前照灯』です。
対向車とすれ違う時は、ロービームに落とさないと当然のこととして対向車の大迷惑になります。
これを単純に、警察のポスターに『走行時はハイビーム!』って書いてあったからと思うのか、対向車とすれ違う時にもハイビームのままの方がよくいらっしゃるんですよね。
車の多い街中なんかではハイビームで走れる状況はほぼありません。そんなところでずっとハイビームのまま走行していたら大迷惑です。
対向車が来たらサッとロービームに落としましょう。
対向車のひとも、早めに気づいてもらえるように、きちんとハイビームで走行しましょう。
ネットを見ていると、制限速度や一時停止違反に厳しい方でも、かなり多くの人がハイビームに反対派のように思えます。
理由はたぶん『眩しいから』。
もちろん対向車がすれ違いの時にもずっとハイビームで走って来るならその通りですが、気づいてロービームに落としても、相手が気づくのが遅れたらキレて、延々と復讐ハイビームで相手を危険にさらしているようです。
自分がハイビームにしていないから相手はロービームに落とし遅れたのだとしても、そんなことは知ったこっちゃないようです。
ちなみに私も昔は基本ロービームで走っていました。
理由は対向車が来てもボーッとしていて、ロービームに落とすのをよく忘れるからです。
癖にすればいいだけのことです。今では対向車に気づいた瞬間にロービームに無意識に落とせるようになりました。たまーにハイビームに戻すことを忘れていてパッシングをしてしまうことはありますが。
『対向車がロービームでも気づけ!』『ガードレールとかにライトが当たれば気づくだろ!』と仰る方も多いです。
でもガードレールがなかったりしたら本当に直前まで、あるいは出現してくれるまで気づかないほどにロービームは遠くを照らしてくれません。
何より対向車に自車の存在を知らせるには、眩しいハイビームのほうが間違いなく『早めに気づいてもらうこと』が出来ます。
ずっとハイビームで走っている車はバカですが、きちんとハイビームで走っている車はバカではありません。
むしろ安全を最重視しているのです。
自車の存在を周囲にアピールし、道路のど真ん中で寝ている酔っ払いがいても轢かないように、安全運転をしているのです。
ハイビームで走行する『癖』をつけましょう。