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神様、ちょっとチートがすぎませんか? ~大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!!~  作者: ななくさ ゆう
第6章 決意の時

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53.それぞれの戦い(6)リラ

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(一人称・リラ視点)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 お師匠様の命が消えようとしていた。


 私は涙を流し、パドはうつむく。

 アル王女や教皇達も集まってきていたようだが、正直知ったことではない。


「お師匠様!!」


 叫ぶパド。

 そんな私達に、お師匠様が語りかける。


「……なんて顔をしているんだい、この馬鹿弟子どもが」


 最後までこれだ。


「どうしてよ。どうしてこんな……皆私のために。お父さんも、お母さんも、みんな、みんな……」

「僕が、僕がもっと早く来ていれば……ううん。そもそもお師匠様のところに転がり込まなかったら……転生なんて望まなかったら……」


 私達の言葉に、お師匠様は右手を挙げる。

 そして、私たちの頭をゴツン。


 いつもとは違って、ずっと力のない拳骨。


「まだそんなことを言っているのか、この馬鹿弟子ども!!」


 叫ぶお師匠様。最後の力。


「お前達の命はね、ご両親が、友達が、そしてこのアラブシ・カ・ミランテが命を賭けて護ったものなんだっ!! お前達だけのもんじゃないんだ!!」


 血を吐くように叫ぶお師匠様。


「だけど、だけど……」

「僕は……」


 パドと私の涙が、お師匠様の頬の上で混じる。


「お前達に最後の教えだ。

 自分を呪うな。それは麻薬だ。誰が否定したとしても、自分で自分を否定してはいけない。

 神託がなんだ。禁忌がなんだ。神がなんだ。闇がなんだ。

 パドの力は人を救えるし、リラは獣人と人族とを結びつける鍵になる。

 自分を肯定しろ。他の誰が否定しても、お前達だけはお前達を嫌いになってはいけない。

 わかったか!?」


 それはとてもとても厳しい言葉だった。

 4ヶ月前のあの日から、私もパドも、どこか自分を否定して生きてきた。

 自分たちさえいなければ、誰も不幸にならなかったんじゃないかと。


 だからこそ。

 お師匠様の最後の教えは。

 これまでのどの教えよりも、ずっと厳しく、そして優しい言葉だった。


『はい』


 私とパドは泣きながら頷く。


 そうだ。

 お師匠様はこの4ヶ月、ずっと私達に生きる力を授けてくれた。


 この4ヶ月の教えは難しい学問や、魔法なんかじゃかった。

 お師匠様が本当に王城の魔法使いだったというなら、そういう教え方だってできただろうに、ほとんどはもっと基礎的な、生きるのに必要な技術だけ。


 お師匠様は分かっていたのだ。

 私とパドに本当に必要なのは何か。

 足りない物は何か。


 自分を肯定すること。

 生き続けようとする意思。

 自分を卑下しないこと。


 お師匠様の教えは、つまり生きること。


 お師匠様は次に、レイクとラミサルに語りかけた。


「レイク、ラミサル、あの時は悪かったね。私は自分のことで精一杯で、お前達のことまで頭が回らなかった。

 まだガキだったお前達を王城に残して、とっとと逃げ出しちまった。

 大人の私でも嫌気がさすような場所に、お前達を残した」


 10年以上昔、私やパドが生まれるより前の話。


「今度もまた、この馬鹿弟子達を置いて逝っちまう。私は駄目な師匠だね。

 だから頼むよ。2人それぞれ立場はあるだろうけどさ。この馬鹿な弟弟子、妹弟子を助けてやってくれよ」


 お師匠様は言う。


「アラブシ先生」

「師匠」


 レイクとラミサルもお師匠様の元に駆け寄る。


「わかりました」

「師匠の最後の言葉、しかと受け取らせていただきます」


 その言葉を聞き、お師匠様は満足げに笑う。


「ああ、そうかい。 色々あったけど、最後にこうして弟子4人に囲まれて逝けるなら、私の人生も捨てたもんじゃなかったのか……も……」


 お師匠様の言葉は最後まで聞き取れなかった。

 私たち4人のお師匠様は、今、息を引き取った。


 ---------------


「うん? 皆、気をつけろ!!」


 私達がお師匠様の死にむせび泣く中、叫んだのはキラーリア。


「どうやら、まだ終わっていないようだな」


 そう言って、大剣を抜き放つアル王女。

 私もハッとなって周囲を見回す。


 いつの間にか、私達は『闇の獣』に囲まれていた。

 いや、それだけではない。

 左右両方から1体ずつ、人型の『闇』が計2体出現。

 さらに上空には『闇の鳥』とでも表現すべきものが大量に旋回している。


 まだ、来るのか。

 

 お師匠様を奪っただけでは足りないというのか。


「リラ、お母さんとお師匠様を頼む」


 パドが厳しい顔をして立ち上がる。

 いくら彼の力が凄くても、漆黒の刃の魔法とやらを持っていても、この数を相手にできるとは思えない。

 それでも、彼は立ち上がった。

 ならば、私も立ち上がらなくてはいけない。


「大丈夫、任せて」


 あたしは言う。


「我々もできる限りのことはしましょう」


 レイクとラミサルもうなずき合う。


「結界魔法は私が張ります。もはやレイク殿やラミサルは限界でしょう」


 教皇が言って、パドのお母さんを連れて駆け寄ってくる。


「キラーリア、先ほどと同じようにやるぞ」

「はい。ですが……」

「空まで囲まれては、さすがに逃げるのは難しいだろう」

「ですね」


 二人の言葉にはまだ戦う意思があった。

 だが、同時に悲壮さもうかがえる。


「待って、コイツらに剣は……」


 言うパドに、アル王女は『闇の獣』の1体をなぎ払った。


「何か言ったか、小僧?」

「いえ。じゃあ、獣タイプはお願いします。僕は、人型をやります」


 パドはそう言って、左手から漆黒の刃を出した。




 3人はよく戦ったと思う。

 アル王女やキラーリアは『闇の獣』を何体も倒したし、パドは2体の『闇』相手の奇跡的なまでの立ち回りをして見せた。

 何体か討ち漏らした『闇の獣』や『闇』の指が私達を襲うが、教皇の結界魔法に阻まれる。


 だが。


「くそっ」


 パドの顔に疲労が増える。

 ここにくるまでにも漆黒の刃を使っているのだろう。

 もう限界のはずだ。


「キリがないなっ」

「ええ」


 アル王女とキラーリアの顔にも焦りが見える。


「まずいですね、これは」


 教皇の顔にも汗が浮かぶ。

 老齢の彼にとってここまでの魔法の連続使用は体に堪(こた)えるのだろう。


 このままじゃ、ジリ貧だ。


 どうする。

 どうしたらいいの?


 私には何の力もない。

 パド達のように戦うことも、教皇達のように魔法を使うこともできない。

 このままじゃ、何もできない。


 その時、ふと、地面に寝かされているお師匠様の顔が目に入る。


 お師匠様。私はどうしたらいいの?


 

 ---------------


 業を煮やしたのか、『闇』達に新たな動きがあった。

 これまでは空を旋回しているだけだった『闇の鳥』達が私達に襲いかかったのだ。


 これによって、なんとか維持していたアル王女やパドの戦いが一気に不利になる。

『闇の鳥』自体の攻撃力はそこまで高くないようだが、無視できるほど弱くもない。

 そして、教皇の結界魔法への攻撃も激しくなる。


「くっ。皆さん、すみません。このままでは……」


 教皇の顔に焦りが浮かぶ。


 だめだ。

 このままじゃ、皆死んじゃう。


 嫌だ。

 せっかくお師匠様が護ってくれたのに。


 私の命は、私だけのものじゃないのに。


 結界魔法にひびが入る。


「ラミサル、あなたの魔力はまだ回復しないのか?」

「まだです。レイク、君の方は?」

「まだだ。だが、それでも……」


 レイクとラミサルが言い合う。


 ついに、結界が破れ、『闇の鳥』と『闇の獣』が私達に襲いかかる。


「リラ!!」


 パドの叫び声。


 私は。

 私は。

 私は。


 生きる!!


 私の中で、熱い何かが生まれる。


 声でも息でもない何かが、お腹から口へと上がっていく。


 そして。


 私の口から閃光がほとばしった。

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