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神様、ちょっとチートがすぎませんか? ~大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!!~  作者: ななくさ ゆう
第5章 新たなる戦いの始まり

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36.彼方よりの襲撃者

第2部スタートです。

 お師匠様に魔法の契約について聞いた翌日の午前中。

 いつもとは違って、僕はリラと共に森深くへと立ち入っていた。


 目の前には倒したばかりのグレッドリーの死体。

 グレッドリーは2本の角(つの)が生えたピンク色の熊みたいな獣。


 目的はその角(つの)で、なんでも削って粉にしたあと、さらに煎ると、熱冷ましの薬になるらしい。

 薬は必ずしも草のみではないのだ。


 必死な顔で、ナイフを使ってグレッドリーの頭蓋骨から角(つの)を切り離そうとしているリラに、僕は声をかけた。


「ねえ、やっぱり僕も手伝おうか?」


 僕の力なら、そもそもナイフもいらないと思うんだけど。


「パドの力だと角(つの)が砕けちゃうでしょ」


 まあ、そうかもしれないけど。


「どうせ、粉にするんじゃなかったの?」

「割ると、そこから痛みやすくなるらしいの。だから、できるだけ傷付けずに切り離せってお師匠様が言ってた」


 そっか、じゃあしょうがないね。

 僕はリラを見守りつつ、お師匠様が昨日話してくれたことを考える。


 ルシフは僕の心に何を書き込もうとしていたのだろうか。

 ヤツが僕に近づいた理由は、まず間違いなく200倍の力か魔力だったのだろう。

 あるいは転生者であることも関係あるかもしれない。

 それ以外では僕を狙う理由が思いつかない。


 例えば、僕を操って世界を滅ぼそうとしたとか。

 しかし、そもそもルシフに世界を滅ぼす動機があるだろうか。


 正直分からない。

 考えるにしても材料が足りない。

 ルシフの言葉にヒントがあるはずと思い出そうとするのだが、細かい部分まではどうしても覚えていない。

 出会った2回とも、僕は動揺していたし、怒ってもいた。

 要するに冷静ではなかったのだ。

 おそらく、ヤツの狙い通りに。


 いくら考えても、情報が少なすぎて想像どころか、妄想すらできない。

 だが、いずれにしても、今度ルシフが接触してきても、絶対に相手にしてはならないだろう。


 そんなことを考えていると。


「ふう、切れたわ」


 リラは満足げにそう言うと、角(つの)を掲げて見せた。


「じゃ、帰ろうか」


 僕はそう言って、グレッドリーの前足を握る。

 さほどおいしくはないそうだけど、これも食肉になる。

 薬になる角(つの)だけでなく、肉も持って帰らないとね。


 って、あれ?


「ねえ、考えてみたら小屋に戻ってから角(つの)を切り取っても良かったんじゃない?」

「……そういえばそうね。まあ、変に引きずって角(つの)に傷がついてもなんだから、いいんじゃない」


 それもそっか。

 僕はグレッドリーを引きずり、リラは角(つの)を背負って歩き始めた。




 それはあまりにも唐突だった。


 歩き始めた直後の僕らの頭上に、拳大ほどの石が大量に突然現れたのだ。


「え?」


 石は一気に僕らに向かって落下。

 まずい!

 何故かひたすら頑丈に体ができているらしい僕はまだしも、リラはあんなのが頭に当たったらっ……


 とっさに僕はグレッドリーの足を投げ捨て、リラを抱えて横っ飛び。


「パド、痛いっ」

「あ、ごめん」


 最近は大分マシになってきた力加減だったが、今はとっさだったこともあって少し力を入れすぎた。

 僕が掴んだお腹をリラは痛そうにかばっている。


「大丈夫?」

「なんとかね。それより、今のは?」

「わからない。だけど……」


 どう考えても自然現象ではない。

 まず間違いなく、僕らを傷付けるために誰かが放った攻撃だ。


「まさか、獣人!? 私が生きていることがばれた?」


 リラが言う。

 空を飛ぶ獣人からの攻撃かと考えたらしい。


 確かにその可能性もあるが、むしろ今のは……


 と。


 今度は前方から赤い球――火炎の球が飛んでくる。


「なんだっ!?」

「なんなのよ、これ!?」


 僕は右に、リラは左に。

 反射的に跳ぶ。

 2人とも炎は避けた。


 避けたのだが、僕とリラとの間に距離ができてしまった。


「やっぱり、魔法!!」


 最初の石はまだしも、今の炎の球はどう考えても魔法だ。

 魔法使いが僕らを狙っている!?

 一体何で!?

 獣人の魔法使い?

 それとも……


 分からないことが多すぎる。

 相手がどこにいるのか、一体何者なのか、そもそも何故いきなり襲われたのか。


 どうする?

 魔法の飛んできた方向を中心に僕は周囲をうかがう。


「パド、あそこっ!!」


 リラが指さした方向。

 木の陰に誰かいる。

 ソイツはリラの声を聞くや否や、身を翻した。


 くそ、いったいなんだってんだ!?

 いや、今は迷っている場合じゃない!!


 僕は大地を蹴って跳ぶ。

 地面にまたクレーターを作ってしまったが、ここは一気に距離を詰める必要がある。


 跳んだ先にいたのは、青い服を着て杖を持った2人の青年であった。

 杖といっても足の悪い人が使うモノではない。

 むしろファンタジー世界の魔法使いが使いそうな、赤い宝玉がついた小さなロッドみたいな物だ。


「ちっ」


 青年の1人が舌打ちし、もう1人が僕にロッドを構えて叫ぶ。


「炎よ!!」


 叫んだ青年のロッドから炎の球が僕めがけてとんでくる。

 避けられないっ!!


 とっさに腕で顔は防いだが、炎が僕の全身を包む。


「パドっ!!」


 リラの叫び声。

 とてつもない熱が僕を苛(さいな)む。

 全身火傷しそうだ。


 青年達も僕を倒したと思ったのだろう、追撃はなかった。

 それが、甘い!!


 僕は炎に包まれたまま、2人のロッドを掴む。


「なっ」


 驚きの声を上げる青年達。

 対処する暇なんて与えない。

 僕はロッドの宝玉を握りしめた。

 

「馬鹿な、私の火炎を喰らって動けるだと!?」

「悪いけど、他人より頑丈にできているんだ」


 もっとも、服はほとんど焼けてしまっている。髪の毛もチリチリ。

 もちろん、漫画みたいにズボンだけ都合良く焼け残るなんてこともないので、色々と丸出しである。


 いずれにせよ、ロッドから炎を出したということは、それを壊せばもう魔法は使えないだろう。たぶん。


「一体、あなた達は何者なんですか? なんでいきなり攻撃なんて……」


 尋ねる僕に、青年2人は苦々しげな顔。


「これが神託にあった、世界を滅ぼしうる力か」


 シンタク?

 世界を滅ぼす?

 何の話だ?


「ここはいったん引く。が、神の恩名(おんな)において、お前はいずれ天へと送る」


 青年達はそう言って逃げ出した。


 追うべきか?

 いや、しかし。


 僕はまず、リラに駆け寄った。

 どうやら、擦り傷程度のようだ。


「パド、大丈夫なの?」

「まあ、火傷はしたけど」

「それですむのがすごいわね……」


 青年達の言葉を信じるなら、普通の人間ならあの炎を喰らったらただではすまないのだろう。実際、すごい熱だったし。僕の体って、熱にも頑丈だったんだね。

 なんにせよ、リラに当たらなくて良かった。


「っていうか、追わなくて良かったの?」

「他に敵がいて、リラを襲っても困るし」


 リラは普通の子どもだ。戦いなんてできない。


「ごめん、私、足手まといだったわね」

「いや、別にそれは良いけど」


 そもそも、僕もリラも戦闘することを前提に暮らしていない。


「ところで、パド」

「なに?」

「できれば、それ、隠してくれない?」


 リラが指さした先は、ズボンが燃えて色々まるだしになってしまった僕の股間だった。


「うわっ、ご、ごめんっ!!」


 慌てて両手で……隠そうとして、左手がないことを思い出して右手で隠す僕。


「ああ、もう、とりあえずこれでも巻いておいて」


 リラが薬草を入れるための布袋を強引に僕の腰に巻き付ける。

 うん、なんとか大切なところは隠れたかな。


「で、これからどうするの?」

「とりあえず、お師匠様のところに帰ろう。角(つの)は僕が背負う。肉は持って行くのはやめておくか」


 あまり動きを阻害する荷物は持たない方が良いだろう。


 しかし、本当になんだったんだ?

 魔法を使う相手。

 魔法の契約は教会が管理しているはず。

 まあ、ルシフみたいな『そんなの関係ねー』なヤツもいるみたいだけど。


 いずれにせよ、僕らは周囲を警戒しつつ、お師匠様のいる小屋を目指すのだった。


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