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神様、ちょっとチートがすぎませんか? ~大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!!~  作者: ななくさ ゆう
第3章 闇の襲来

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28.お前は、絶対に許さないっ!!

 僕は右拳を『闇』の顔面にたたき込む。

『闇』を地面に押し倒し、めり込ませる。

 アベックニクスの時を遙かに超える大きさのクレーターができあがる。


 それでも、『闇』は砕けない。

 ニヤニヤした顔すら絶やさない。

 漆黒の顔に浮かぶ白い歯が浮かべる笑みがむかつく。


 僕はさらに左拳も振り上げ、『闇』の顔面に叩きつける。

 それでも『闇』は笑ったまま。


 違う。

 僕が見たいのはこんなヤツの笑顔じゃないっ!!


「やっと、やっと笑ってくれたんだぞ!! お母さんは、やっとっ!!」


 叫ぶ。

 叫んでさらに拳を繰り出し続ける。

 右拳、左拳、右、左、みぎ、ひだり、みぎ……


 感情の暴発に任せたまま、僕は『闇』の顔面を殴り続けた。

 クレーターがどんどん深く、大きくなっていく。

 もう、地上から5メートルは沈んだか。


 それなのに。

 力(チート)を全て使って殴り続けているのに。


『闇』は笑顔をやめない。

 血の1滴も流さない。

 僕の攻撃の効果があるのかどうかもわからない。


 それがたまらなく、僕の感情を逆なでして。


「お前は、絶対に許さないっ!!」


 叫んだ僕の上半身に何かが巻き付く。

 『闇』の指?

 お母さんを貫いた時のように、ヤツの指が伸び、僕の体に巻き付いていた。

 そのまま僕は持ち上げられ、クレーターの外へと投げ飛ばされる。


 ちくしょうっ!!


 僕は心の中で毒づきながら、宙に投げ飛ばされた。




 僕が投げ飛ばされた先は、ちょうどテルやジラ達年少組が集まっていた辺りだった。

 皆腰が抜けたのか、その場で膝を突いたり倒れたりしている。


 いや、違う。

 腰が抜けたのではなく、立っていられなかったのだ。


 その理由は周囲を見回せば分かる。

 村の中央に開いたクレーター。それを中心に、村の家が倒れ、木が倒れ、たき火が吹き飛んでいた。

 地面も大きくひび割れしており、大人も子どももとても立っていられなかったのだ。


 その原因は僕だ。


 僕が感情にまかせたまま、『闇』を力(チート)で殴りつけたから。

 まるで大地震でも起きたかのような被害を村に与えていた。


 テル達が転がる僕を遠巻きにする。


「パド……」


 僕に向けたキドの声には怯えが混じっていて。

 キドだけじゃない。

 テルもスーンも村長もアボカドさんもナーシャさんも、村中の皆が僕を困惑と恐れの入り交じった目で、遠巻きに見ている。


 それは、僕が産まれて7年ずっと恐れていた状況で。

 自分の力(チート)のせいで村の皆から怖がられる、そんな恐ろしい想像が現実になっていて。


「う、うぅ、うぇぇぇぇん」


 サンが泣き出し、スーンがまるで僕からかばうように彼を抱きしめた。


 僕は。

 僕はなんてことを。


 お母さんを攻撃されて我を失って。

『闇』がやったより何倍も村に被害を出して。

 よく見てみれば、大人達の中には怪我を負った人もいる。

 もしかすると家の下敷きになった人もいるかもしれない。


 それに。


 お父さんとお母さんは!?

 僕が跳びたった時、その場にはお父さんと怪我をしたお母さんがいた。

 その場所の地面を崩したのは僕だ。


 見ると、お母さんを抱きかかえたお父さんが、僕が作った穴からはい出しつつあった。


 何をやっているんだ、僕は!?


 後悔に襲われる僕に、ジラが叫ぶ。


「パドッ!! まだだ。アイツっ」


 ジラが上空を指さす。

 上空1メートルほどの場所には『闇』が浮かんでいて、指を構えていた。


 まずいっ!!


『闇』の指が再び伸びる。

 今度の狙いは僕か。


 避けられるか!?

 いや、そもそも避けたら他の子達が危ない。


 だったらっ!!

 こうなったら仕方がない。


 あの日、ブシカさんに禁じられたけど。

 今は他に手がない。


 僕はルシフからもらった結界魔法を発動した。




 僕と、ジラ達を黒いバリアーが覆う。

 さすがの『闇』の指も、この結界魔法を貫く力はないらしくはじかれる。

 だが、闇は10本の指を振り回し、僕の作り出した漆黒の結界を叩き続ける。

 結界を叩かれるたびに、意識が遠のきそうになる。


 ブシカさんは言っていた。

 僕の体内には溢れるほどの魔力があるけれども、1度にたくさんの魔力を使えば身体の方が持たないと。

 闇の攻撃は苛烈で、油断したらすぐに結界を破られてしまいそうだ。

 叩かれるたびに僕は結界魔法へ送る魔力を高め、それ故にどんどん辛くなっていく。


 あの時、崖から飛び降りた直後のように、意識が飛びそうになる。


 ダメだ、今気絶するわけにはいかない。


 僕の後ろにはテルやジラ達がいる。

 結界魔法が破られたら、僕だけでなく彼らもお母さんと同じ目に遭うかもしれない。


 だけど、どうしたらいい?

 結界魔法を使えるうちは防御できるけど、こっちから攻撃できない。

 このままじゃいつか……そう遠くない間に、僕の魔力か体力か精神力が尽きる。


 そもそも、僕の拳はヤツには通じなかった。

 ダメージがあったのかすら怪しい。

 僕にはアイツを倒す方法がない。


 逃げようにも、結界魔法を張ったままでは動けない。

 結界を解いたらたぶん犠牲者が出る。


 この状態は膠(こう)着(ちやく)ではなく、僕が追い詰められているんだ。


「くそぉっ!! どうしろっていうんだよぉっ!!」


 僕の叫び。

 それに答えるかのように。


『また、ボクの助けがほしいのかい、お兄ちゃん?』


 僕の頭の中に響いたのは、ルシフの声だった。


「ルシフ!?」

『助けてほしいんだろう、お兄ちゃん。だったらそう言いなよ。ボクが助けてあげるから』


 ルシフの甘く、ねっとりとした声。


 ブシカさんは言った。

 頼るべき相手を間違えてはいけないと。

 そして、ルシフは頼ってはいけない相手だ。


 だけど。


 じゃあ、他に誰を頼れというのか。

 村の大人達に『闇』と対抗する力なんてない。行商人のアボカドさんも同じだ。

 あるいはブシカさんなら何かアイツに対抗する術(すべ)を知っているかもしれないけど、今、この場にいない。

 だから僕はうなずくしかなかった。


「わかった」

『うん? 何が分かったのかな、お兄ちゃん?』


 ルシフはうれしそうに言う。


「助けてくれよ。今すぐ」

『OKっ!!』


 ルシフがそう言うと、僕の意識はあの漆黒の世界へと再び迷い込んだのだった。

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