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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第1幕 夏休みの終わりに
8/59

8.爆破(ばくは)事件



   ・前回のあらすじです。

   『和泉いずみが、宿舎の廊下であおいにたのみごとをされる』






 和泉(いずみ)(あおい)のたのみを「ことわる」という選択肢はなかった。

 学院長(がくいんちょう)史貴(しき) 葵とは、おたがいが学生時代のころに、ちょっとしたきっかけで知りあった。それが少々(しょうしょう)やっかいな事件に深入(ふかい)りする契機(けいき)となったのだが、和泉は悪い(おも)い出とはとらえていない。

 だが、(あかね)の『お(ねえ)さん』に対して、苦手意識を助長(じょちょう)する結果とはなっていた。先述(せんじゅつ)の『事件』でめいわくをかけたこと、それに『史貴 葵』という人物に対して恩義(おんぎ)があるにもかかわらず、一時期(いちじき)に【学院(がくいん)(ない)で飛びかった誹謗(ひぼう)中傷(ちゅうしょう)について、なにもかばいだてしなかったということ。

 それらが(おもり)のようになって、和泉(いずみ)の内にわだかまりつづけている。

 葵とシロが、不審そうに和泉に言った。

「そうがまえないでちょうだい」

「和泉さあ……なんでうちのご主人(しゅじん)(はな)すとき、いつも戦闘態勢なの?」

 シロの言うとおり、和泉(いずみ)半身(はんみ)をまえにして腰をひいていた。【学院】では『フィジカル・トレーニング』に格闘技(かくとうぎ)を組みこんでいるが、和泉の体勢はまさに、組手(くみて)のときにおける(かま)えだった。


 警戒モードであったことに気がついて、和泉(いずみ)はとたんに背筋(せすじ)をのばす。

 (あおい)にむかって、直立(ちょくりつ)姿勢をとる。

「ちがうんです。べつに、学長(がくちょう)をこてんぱんに()してやろうとか、そういう意図(いと)はぜんぜんなくて」

「わかっています」

 葵は、視線を和泉から(ゆか)にやった。めんどうそうに。

 彼女(かのじょ)は話しをもどす。

「たのみというのは、わが校の魔術師(まじゅつし)についてなの」

「なにか問題でもおこったんですか?」

「おこしているのよ。現在進行形で。【トリス】の(まち)で、最近破壊(はかい)活動が頻発(ひんぱつ)していてね」

「はあ……」

 和泉(いずみ)は気のないへんじをした。破壊活動とは……。

(あかね)がまたなんかやらかしたのかな?)

「はいこれ。()てみ」

 シロがわきにはさんでいた新聞(しんぶん)をよこしてくる。受け取って、第一面(だいいちめん)見出(みだ)しを和泉は()んだ。


   『家出ライオンぶじ保護(ほご)近所(きんじょ)小学生(しょうがくせい)ゆうくん大活躍』


「すごいですね、小学生」

「それではありません、和泉先生」

 (あおい)がにがわらいをする。シロが半眼(はんがん)になる。

三面(さんめん)だよ、和泉(いずみ)……」

「あ。じゃあ、ちょっとしつれいして」

 葵に許可(きょか)を取り――ゆるしを()必要(ひつよう)はないのだが――和泉は新聞をひろげた。

 あけたページに、こっそりとした見出しと、ちいさな写真(カメラのような【マジック・アイテム】で撮影したものだ)がついて、掲載(けいさい)されている記事を読む。

「トリスの(まち)でまた爆破(ばくは)事件。今月にはいって()べ……一三六(ひゃくさんじゅうろっ)件!?」

 和泉は(あおい)を見た。「学長(がくちょう)もたいへんですね」とつづけようとすると、(あおい)()てついたほほえみをしていた。和泉にくぎを刺す。

「言っておきますけれど、私の(いもうと)のしわざではありませんからね」

「は……ははっ。わかってましたよ。もちろん」

 シロが和泉(いずみ)をのぞきこむ。

顔色(かおいろ)わるいよ?」

「うるせいっ!」

 ウサギの(みみ)をゆらしてにやにやする少女に、和泉は一喝(いっかつ)した。

 (あおい)が、事件の概要(がいよう)説明(せつめい)する。



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