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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第1幕 夏休みの終わりに
7/59

7.最後のいちにち



   ・前回のあらすじです。

   『あおいが、あかねを追いかけようとする和泉いずみを、つかまえる』





 夏休(なつやす)み、最後の一日(いちにち)

 やすみの中盤(ちゅうばん)までは、仕事でよその地域に遠征(えんせい)し、帰還後その(ろう)をねぎらうという名目(めいもく)で、【学院(がくいん)】の古参(こさん)からたまわった半分(はんぶん)だけの夏休み。

 十日以上(いじょう)もゆっくりできたんだから、いいじゃないか。

 と和泉(いずみ)はじぶんにいいきかせるも、最後の一日(いちにち)でドッとつかれたら、とても損した気分になるのはなぜかしらん。と、(あたま)のなかで天使と悪魔(あくま)がレスリングする。

 そんな彼の胸中(きょうちゅう)を知ってか知らずか。史貴(しき) (あおい)――【学院】の最高権力(けんりょく)者は、よどみなく言った。

「あなたにおねがいがあります」

 ――。


 (やま)中腹(ちゅうふく)(きず)かれた、学術施設。どちらかといえば『(まち)』に近いつくりの、広大な土地。

 敷地内(しきちない)のいこいの()として機能(きのう)する【森林庭園】にそびえるのは、何千万(なんぜんまん)冊もの蔵書(ぞうしょ)(ほこ)る【図書館塔(としょかんとう)】。

 塔のむこうには【(おもて)】(魔術(まじゅつ)のない世界)に実在する、有名(ゆうめい)な城をまねた建物(たてもの)屹立(きつりつ)する。一万(いちまん)人ほどの【魔術師(まじゅつし)】を養成(ようせい)する【学舎(がくしゃ)】が、この、ゴチック調(ちょう)の城だった。

 内部(ないぶ)の空間が【魔術(まじゅつ)】によって拡張(かくちょう)されているため、外観から想像する以上(いじょう)になかの構造は複雑怪奇。なれるまでは、(なれた関係者でも)城内(じょうない)(みち)にまようことがあるのは、日常(にちじょう)的な光景である。

 もっとも、いまは夏休(なつやす)みなので、校舎を利用(りよう)する先生や生徒は平常(へいじょう)時にくらべて、かなりかぎられている。


 (なつ)の日ざしのもとに輝く城を、【宿舎(しゅくしゃ)】の男子(とう)から和泉(いずみ)はながめていた。

 現実逃避をしているのだ。

「おーい。きこえてるの? 和泉」

 ひらひら。

 シロが和泉の(かお)のまえで手をふる。彼女(かのじょ)のとなりで、学院長(がくいんちょう)(あおい)が、なにも言わずに()っている。

「あー。はい」

 和泉(いずみ)は意識を、さわやかな学校風景(ふうけい)からひきもどした。現実に。

 学長(がくちょう)にむけて、へんじをする。

「聞いてましたよ。おねがいがあるんです……よ、ね?」

 葵がこくりとうなずいた。



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