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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 一方(いっぽう)そのころ 編
58/59

  先生もつらいよ




 ※注意です。

 ・この物語は、『3.先生はツライよ』のつづきです。

 ・ショート・ストーリーです(でも、三部構成です)。

 ・本編のほうの、キャラクターや、ストーリー、世界観のイメージをこわす可能性があります。

 ・以上の点に、抵抗ていこうのあるかたは、【もどる】をおすすめします。


 ・・・・・・


 〇登場キャラクターです。

 ・史貴しき あおい:21才の魔女。魔術の名門校・【学院がくいん】の学院長。

 ・ジョン・ダルク:30代の、男魔術師。【学院】の助教授。

 ・クララ・モリス・ビー・カリオストロ:16才の魔女。【学院】の、高等部一いち年生。ジョンのクラスの生徒。愛称あいしょう・クラリス。








(それにしても……)


 トリスの町の、メイン・ストリート。そこであおいは、戦慄せんりつしていた。自衛団じえいだんの手を焼かせている、とお魔術師まじゅつし――自称・正義のヒーローが放った爆破魔法跡ばくはまほうあとを見て。


 レンガ色の平石ひらいし舗装ほそうされた通りには、クレーターができていた。その周囲では、巻きぞえをった市民しみんたちが、ひっくり返って痙攣けいれんしている。


詠唱えいしょうが無かったわね、カリオストロ……そんなに出来る生徒せいとだったかしら?)


 クラリスのかよう学校、魔術まじゅつの名門・【学院がくいん】のちょうをつとめる葵だが、他の教授きょうじゅと同じように、いくつかの講義こうぎも受けもっている。


 クラリスの名前は、彼女が中等部ちゅうとうぶのころに選択していた授業じゅぎょうで、目にしたことがあった。生物せいぶつ系の実技科目じつぎかもく魔法薬まほうやくを作ったり、簡単な回復魔法かいふくまほう指南しなんする内容)だったと思うが、試験しけんの結果を見た限りでは、彼女は特筆とくひつすべき能力のうりょくを持ってはいない。もっとも、実力じつりょくテストのスコアが、魔術師まじゅつしの技量を全てを物語るわけではないし、あおいもそれは承知しているが、「相手のちからをしはかる時に、いくらかの指標しひょうにはなる」という点で、参考にはしていた。


「ほほほ、驚かれましたか、史貴しき先生」


 同じストリートの数メートル先から、クラリスが、嘲笑ちょうしょうを投げかける。彼女はドレスの胸元むなもとに輝く、あわいブルーの宝石をかかげた。


「これは、ブリーシンガメン。術者の魔力まりょくを、べらぼうに増幅ぞうふくさせる、マジック・アイテムですわ」


「……災厄さいやくの首飾りね」


 あおいも、聞いたことはあった。そばにいるダルク助教じょきょう――ジョン・ダルクも同様で、彼は大きなこぶしを振りあげて、胴間声どうまごえをクラリスにかける。


「こらっ、クラリス! そりゃ持ちぬしを不幸にするのと引きかえに、パワーアップさせるものだろう。危ないから、はずしなさい!」


「いやですわ」


 きっぱり拒否きょひする少女に、葵もまた、頭のいたい思いをしてうったえた。


「なんにしても、私たちと【学院がくいん】に来なさい、カリオストロさん。みんなが貴方の破壊行為はかいこういに、迷惑めいわくしているんですよ」


「ふーんっ!!」クラリスは言うことをきかなかった。


史貴しき学院長がくいんちょう……」


 と、いつのまにかうしろに下がっていた青いユニフォームの男――【自衛団じえいだん副団長ふくだんちょうの、喜多味きたみが、不安そうに眉根まゆねを寄せる。ずんぐりむっくりした――ドワーフのように愛嬌あいきょうのある彼の肩に、葵は静かに、手を置いた。


「喜多味さん、こちらは大丈夫。ちからづくでも、彼女を拘束こうそくします。なので、そちらは市民の誘導ゆうどうをお願いします」


「は、はい……」


 はしって、ほかの団員に通達つうたつに行く喜多味。彼を横目よこめに、あおいはクラリスに向き直った。ふわふわの、やや長めの前髪まえがみを、クラリスはふうとき上げて、


「ふっ……あなたとは、いずれ戦うことになると思っていましたわ」


「そう。私は思っていなかったわ」


「よく言いますわ、わたくしから、大事な人をうばっておいて!」


(大事な人?)葵には心当たりがなかった。いかんせん、付き合いのある知り合いが少ないのだ。(そこそこ付き合いのある人ってなると、リョーコか、壮馬君そうまくんだけど……)


 どちらも、他人から大事にされるような人柄ひとがらはしていない。きっと、クラリスがなにかを勝手に勘違かんちがいしているのだろうと、葵は結論した。


 クラリスはわめく。ストリートの地面で、地団駄じだんだ踏んで。


「わたくしのこのうらみ…………受け取るが、良いですわ!!」


 クラリスが、手のひらを胸のまえに組む。開いた中心から、白い高熱波こうねつはかたまりが生まれた。周囲しゅういの空気が、熱の余波よはで、陽炎かげろうのごとく、透明にゆらめいている。


災禍さいかを返す、イージスのたて!!」


 隣りから、野太のぶとい声がした。ジョンが障壁しょうへきを展開したのだ。あおいも――こちらは詠唱のない、ひばりの技法ぎほうと呼ばれる技術で、ジョンと同じ、魔力壁まりょくへきを展開する。クラリスから解き放たれた灼熱しゃくねつの魔術が、ふたり目掛けて直進する。各々(おのおの)が張った透明な壁が、葵と、ジョンを守護し――


(うそ!?)


 クラリスの放出した白い光線こうせんが、ふたりの魔力壁まりょくへきを、打ち破った。強烈きょうれつなスパークをまたたかせて、壁がはじけ飛ぶ。


 爆発ばくはつが、葵とジョンをおそった。みごとに直撃を受けて、ふたりは、熱と衝撃しょうげき爆風ばくふうにさらされる。づけば、建物のカベに背中からたたきつけられて、あおい地面じめんにへたり込んだ。


 クラリスの手に、再び破壊はかいの光がともる。追撃ついげきが来る――!


史貴しき先生!」


 体重の差により、吹っ飛ぶのをこらえたジョンが、その巨体きょたいていして、葵の前にんだ。ひばりの技法を会得えとくしていない彼が、クラリスの高熱波こうねつはの届くまでのわずかなあいだに、魔術まじゅつかべを張りなおせるわけもなく。


「ダルク先生!! 逃げてくださ――」


 あおいさけぶやいなや、光の波動はどうは、ふたりをまともに爆砕ばくさいした。





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