あたまにつける、金のわっか【後編】
※注意です。
・この物語は、『2.あたまにつける、金のわっか【前編】』の、つづきです。コメディです。
・本編のストーリーや、キャラクター、世界観などのイメージを、こわす可能性があります。
・以上の点に、抵抗のあるかたは、読まないことを、おすすめします。
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〇登場キャラクターです。
・リョーコ・A・ブロッケン:20才の魔女。魔術の名門・【学院】で、魔術の研究をやっている。
・メイ・ウォーリック:17才の魔女。【学院】の、高等部三年生。
・ノワール:リョーコの使い魔。
~前回のあらすじ~
『リョーコが、メイの持ってきたおみやげを、意地きたなくも全部もらってこーとするけど、ちゃんと一コにしぼった。そして、それを身につけた』
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金のわっかをつけたリョーコに、メイは説明書を読みあげた。
「なんでもそれは、さる高名な道教の達人がつけていたものを、模したもののようでして」
「おおっ、道教ってったらアレでしょ? 中国の魔法みたいなやつ。お札使うんだっけ」
テーブルに身を乗り出して、色めき立つリョーコ。元々おでこが広いせいか、金の額かざりが、よく似合っている。
「高僧って、誰かしら? 三蔵法師?」メイの持っている紙切れをのぞき込みながら、ノワール。
「惜しいですわね」
「おっ、けっこーサマになってんじゃないのよ」
壁にかかった鏡をのぞきこんで、立ってポーズを取るリョーコ。メイは、赤毛の友人――リョーコを見やりながら、
「名を孫悟空とかいう、仙人かなんかでして」
「サルじゃないの!」
「バカねえ、リョーコ。サルはサルでも、妖仙よ?」
「だからナニ!?」
サルはサルじゃ! と喚いて、リョーコはサークレット――緊箍児を外して、床に叩きつけようとした。がっ!!
「はっ……、外れ、ない?」両手で両側をグイグイ引っぱっても、頭から抜けない。「な、ん、で、外れないのよ~っ」
「元が聞きわけのない暴れザルを調教するためのものですからね」
「どあはははっ! じゃあやっぱり、リョーコにぴったりじゃない!!」
「てめーっ!!」ノワールにつかみかかろうとすると、足で顔面を受けとめられた。屈辱。
「んで? ひょっとしたら、緊箍児をあつかう真言も、書かれてんじゃないの?」
ひょい、とメイから説明書を取り上げて、ノワールは呪文をさがす。
「なんか、最後の方に、へんな字が書いてありましたわ」
「梵字ね。サンゾーは、仏教の人だったかしら? ま、読んでみるわね」
ムニャムニャムニャ…………。
「ぐえええっ!!」
とたん、金の輪が、えげつないちからでコメカミを圧迫し、リョーコが床に、もんどり打って転がる。
「あはは! 効果テキメンね。再現度たかーっ」
「笑ってないで、外すの手伝ってよ!!」
「んーなこと、言われてもねえ」涙目でうったえるリョーコに、ノワールはおもしろ半分、流し目をやった。グラグラ。三人の足元が揺れる。「地震かしら?」
ノワールが、窓から外をのぞいた。地鳴りは、外で遊んでいたほかの学生も感じたようで、三人の気のせいではない。メイが、ノワールの手元から、説明書をひったくる。
「……。ノワール様。そのわっかを、外してあげてください」
「えー、つまんなーい」
「いえ、ジョウダンではなく。わたくしも、今知ったのですが、この緊箍児のレプリカ、装備者の魔力を、完全に封じるちからも、あるようでして」
グラ、グララ……。
「くっ……、そんなヨケイな効果さえなけりゃ、こんないいオモチャないのに」
「こっの……! 後で見てなさいよ」
「育ての親は、大事にするものですわ。ブロッケン様」
メイは嘆息した。ノワールはしぶしぶ、解呪の真言を唱える。リョーコの魔力がコントロール不能になると、世界全体に影響が出るのだ。
――からん。緊箍児が、リョーコの頭からひとりでに外れた。地震が止まる。
「はあ……ひどい目にあった」
「さっきの揺れで、地盤沈下くらいは起こったかもねー」
のんきに窓の框に肘をついて、山林をながめるノワールに、いたしかたなしと、メイが首を振る。リョーコが、痛むおでこをさすりながら、
「メイちゃん。やっぱこれ、返品するわ。ぴよっとまんじゅう、ちょーだいよ」
「えー」
眉根をよせてうめくメイに、
「そこまでイヤがることかしら……一コでいいから、ちょうだいよ」
「………………わかりました」
食いさがるリョーコに、メイは折れた。ノワールが奥の間へと、踵を返す。
「じゃあ、私、お茶淹れてくるわね」
「すみません。うちの使い魔が、不在なものでして」
「あの子、どこ行ってんのよ」台所に向かう黒髪の使い魔を見送りながら、テーブルの席に座って、リョーコが訊いた。
「母と会合ですわ」
「ふーん」
ほどなくして、ノワールが戻ってきて、三人はお茶とあいなった。
ぴよっとまんじゅうは、おいしかった。
嚙むたびに、「ぎゃああ!!」「死にたくないピヨー!」という断末魔が聞こえる仕様でなければ、いくつでも食べることが、できただろう。
【おわり】
読んでいただき、ありがとうございました。




