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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 一方(いっぽう)そのころ 編
56/59

  あたまにつける、金のわっか【後編】





 ※注意です。

 ・この物語は、『2.あたまにつける、金のわっか【前編】』の、つづきです。コメディです。

 ・本編のストーリーや、キャラクター、世界観などのイメージを、こわす可能性があります。

 ・以上の点に、抵抗のあるかたは、読まないことを、おすすめします。


 ・・・・・・・・・・


 〇登場キャラクターです。

 ・リョーコ・エー・ブロッケン:20才の魔女。魔術の名門・【学院】で、魔術の研究をやっている。

 ・メイ・ウォーリック:17才の魔女。【学院】の、高等部三年生。

 ・ノワール:リョーコの使い魔。








 ~前回のあらすじ~



 『リョーコが、メイの持ってきたおみやげを、意地きたなくも全部もらってこーとするけど、ちゃんといっコにしぼった。そして、それを身につけた』



 ・・・・・・・・・・



 金のわっかをつけたリョーコに、メイは説明書を読みあげた。


「なんでもそれは、さる高名な道教の達人がつけていたものを、したもののようでして」


「おおっ、道教ってったらアレでしょ? 中国の魔法みたいなやつ。おふだ使うんだっけ」


 テーブルに身を乗り出して、色めき立つリョーコ。元々おでこが広いせいか、金のひたいかざりが、よく似合っている。


「高僧って、誰かしら? 三蔵法師?」メイの持っている紙切れをのぞき込みながら、ノワール。


「惜しいですわね」


「おっ、けっこーサマになってんじゃないのよ」


 壁にかかった鏡をのぞきこんで、立ってポーズを取るリョーコ。メイは、赤毛の友人――リョーコを見やりながら、


そん悟空ごくうとかいう、仙人かなんかでして」


「サルじゃないの!」


「バカねえ、リョーコ。サルはサルでも、妖仙ようせんよ?」


「だからナニ!?」


 サルはサルじゃ! とわめいて、リョーコはサークレット――緊箍児きんこじはずして、床に叩きつけようとした。がっ!!


「はっ……、はずれ、ない?」両手で両側をグイグイ引っぱっても、頭から抜けない。「な、ん、で、外れないのよ~っ」


「元が聞きわけのない暴れザルを調教するためのものですからね」


「どあはははっ! じゃあやっぱり、リョーコにぴったりじゃない!!」


「てめーっ!!」ノワールにつかみかかろうとすると、足で顔面を受けとめられた。屈辱くつじょく


「んで? ひょっとしたら、緊箍児きんこじをあつかう真言しんごんも、書かれてんじゃないの?」


 ひょい、とメイから説明書を取り上げて、ノワールは呪文をさがす。


「なんか、最後の方に、へんな字が書いてありましたわ」


梵字ほんじね。サンゾーは、仏教の人だったかしら? ま、読んでみるわね」


 ムニャムニャムニャ…………。


「ぐえええっ!!」


 とたん、金の輪が、えげつないちからでコメカミを圧迫し、リョーコが床に、もんどり打ってころがる。


「あはは! 効果テキメンね。再現度たかーっ」


「笑ってないで、はずすの手伝ってよ!!」


「んーなこと、言われてもねえ」涙目でうったえるリョーコに、ノワールはおもしろ半分、流し目をやった。グラグラ。三人の足元が揺れる。「地震かしら?」


 ノワールが、窓から外をのぞいた。地鳴りは、外で遊んでいたほかの学生も感じたようで、三人の気のせいではない。メイが、ノワールの手元から、説明書をひったくる。


「……。ノワール様。そのわっかを、はずしてあげてください」


「えー、つまんなーい」


「いえ、ジョウダンではなく。わたくしも、今知ったのですが、この緊箍児きんこじのレプリカ、装備者の魔力を、完全に封じるちからも、あるようでして」


 グラ、グララ……。


「くっ……、そんなヨケイな効果さえなけりゃ、こんないいオモチャないのに」


「こっの……! 後で見てなさいよ」


「育ての親は、大事にするものですわ。ブロッケン様」


 メイは嘆息した。ノワールはしぶしぶ、解呪の真言を唱える。リョーコの魔力がコントロール不能になると、世界全体に影響が出るのだ。


 ――からん。緊箍児きんこじが、リョーコの頭からひとりでに外れた。地震が止まる。


「はあ……ひどい目にあった」


「さっきの揺れで、地盤沈下くらいは起こったかもねー」


 のんきに窓のかまちに肘をついて、山林をながめるノワールに、いたしかたなしと、メイが首を振る。リョーコが、痛むおでこをさすりながら、


「メイちゃん。やっぱこれ、返品するわ。ぴよっとまんじゅう、ちょーだいよ」


「えー」


 眉根をよせてうめくメイに、


「そこまでイヤがることかしら……いっコでいいから、ちょうだいよ」


「………………わかりました」


 食いさがるリョーコに、メイは折れた。ノワールが奥の間へと、きびすを返す。


「じゃあ、私、お茶淹れてくるわね」


「すみません。うちの使い魔(リリン)が、不在なものでして」


「あの子、どこ行ってんのよ」台所に向かう黒髪の使い魔を見送りながら、テーブルの席に座って、リョーコが訊いた。


「母と会合ですわ」


「ふーん」


 ほどなくして、ノワールが戻ってきて、三人はお茶とあいなった。




 ぴよっとまんじゅうは、おいしかった。


 嚙むたびに、「ぎゃああ!!」「死にたくないピヨー!」という断末魔が聞こえる仕様でなければ、いくつでも食べることが、できただろう。





          【おわり】





 読んでいただき、ありがとうございました。



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