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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 一方(いっぽう)そのころ 編
55/59

2.あたまにつける、金のわっか 【前編】




 ※注意です。

 ・この物語は、『とり』の書いた長編小説・『鉄と真鍮でできた指環《3》 ~災厄の首飾り~』の、番外編です。コメディです。

 ・ショート・ストーリーです。(でも、二部構成です)

 ・メタな表現をふくみます。

 ・本編の世界観や、ストーリー、キャラクターなどのイメージを、こわす可能性があります。

 ・以上の点に、抵抗のあるかたは、読まないことを、おすすめします。


 ・・・・・・・・・・


 〇登場キャラクターです。

 ・リョーコ・エー・ブロッケン:20才の魔女。【学院】で、魔法研究にはげむ、魔術研究者。

 ・メイ・ウォーリック:17才の魔女。【学院】の、高等部三年生。

 ・ノワール:リョーコの使い魔。







「なんで全っ然、やってないのよっ!!!」


 どかーん!! と大声がとどろいた。学生用の集合住宅、【寮】の一階いっかいである。問題児に与えられる、生徒間では「独房」と揶揄やゆされる一室いっしつで、彼女の怒りは、バクハツした。――友人の宿題を、手伝いに来た時のことである。


「レポート課題、ナメてんじゃねーわよ! 資料あつめくらいは、終わってると思ったのにさあ」


「初等部のころに、課題のいっさいをムシして登校したブロッケンさまに、言われたくはありませんわ」


「あれはいいのよ!!」根拠こんきょは無い。「でも、メイちゃんは、提出する気なんでしょう!?」


「ま、いちおうは」


 と、テーブルの向かいにいる黒髪黒目の少女――メイ・ウォーリックは、相変わらずの小憎たらしい態度で言った。十七才の魔女である。白皙はくせき美貌びぼうに、紫紺しこんを帯びた、黒い瞳。長い髪の一部いちぶを、左右の肩のまえにらして、赤いリボンと黄色いリボンで、ほそく結っている。


 北部の山の中にある、【学院】の敷地内にあるとは言え、夏の気温は、厚着あつぎで耐えられるものではなく、メイも、ブロッケンと呼ばれた魔女も、肩や脚を出した、夏仕様の洋服を着ている。


 それでも、暑くるしく頭を沸騰ふっとうさせているブロッケン――リョーコ・エー・ブロッケンは――自分の使い魔に横から言われて、熱の逃げ場を失った。使い魔は、こんな事を言った。


「そんなこと言ってるあいだに、できそーなトコから、片付けてけばあ?」


 黒いイブニング・ドレスに、黒いストレート・ロング、金の双眸そうぼうの女である。妙齢の色香ただようレディの風采ふうさいだが、それは本当のすがたではない。化ければ猫のすがたにもどる彼女の名は、ノワール。リョーコが「祖父」と呼ぶ男から、ゆずられた使い魔である。


「こんなの、一日で終わるワケないじゃない」


 赤いセミロングを耳元にかけて、赤い眼をやぶにらみにして、リョーコはうなった。高等部の夏休みの課題は、ここ【学院】では、半分以上がレポートで埋められる。選択した授業によっては、多少削減(さくげん)することはできるが、それでも五割を切ることは、よほど運にめぐまれた学生でなければ、あり得なかった。


 メイが窓際の……なんか、変な植物のはえた植木鉢を、指さして言う。「毎日つけてる魔法植物の観察日記なら、ありますが」


「あるんじゃないのよ。んじゃあ、それちゃっちゃとまとめて、出しちゃいましょ」


「はいはい」


「他にも持ってるんじゃないのー?」たたけば出るとばかりに、ノワールがメイの頭を、ポンポン叩く。


 ちなみに、メイとリョーコは座っているが、ノワールは立ちっぱなしである。いつでもフラリと、出ていけるためである。


「『これは受け取れない』と、つっ返されたものばかりですわ」


「いいのよ、それで。使えそうなトコ、切った貼ったして、いかにも人道的な研究っぽく見せときゃ、センセーってのは納得なっとくするんだから。極悪な人体実験だって『医学の発展のためなんです』とか言ってりゃ、やるような世界の連中なのよ」


 と、こまっしゃくれた調子で、リョーコ。


「それならまあ、なんとかなりそうですが」メイは席を立って、居間から自分の部屋へと歩いて行った。数分して戻ってきた彼女の手には、数冊のノートと、紙袋が抱えられている。「タイトル読みあげましょうか?」


「あんた、この小説、BAN(追放)させる気?」


 諸事情あって――主に、人道的な側面から――削除せざるを得ない表現のノートを、メイはバサリと、テーブルの上に置く。同時に、無造作に置かれたふたつの紙袋に、リョーコは目を留めた。


「なに、それ?」


「おみやげですわ。南部に行った時に、買ってきましたの。忘れない内に、お渡ししようと思って」


「ああ、それが言ってたやつね」


「はい」


 メイは、リョーコにふたつのおみやげを出した。袋のなかから出てきたのは、ひとつは包装された箱詰めのお菓子かし。もうひとつは、きだしのアクセサリーである。全部が金色の金属で出来ていて、どことなく、エキゾチックなデザインの。


「サークレットと、ぴよっとまんじゅうがありますが、どちらをお取りになりますか?」


「え~っ、どっちもくれるんじゃないの?」


「あたりまえですわ」


 前のめりになって不平をうったえるリョーコだが、文句を言う反面、彼女は聞きわけもいい。「じゃ、サークレットで」


「では、ぴよっとまんじゅうはわたくしが。それで、ブロッケン様」


「妙なデザインよねー。全部が金具になってるなんて」取扱説明書を読みあげようとしたメイのまえで、リョーコはさっそく、サークレットをひたいにつけた。ガチャン。





                      (【後編】につづく)





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