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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第4幕 魔術師の誤算(ごさん)
47/59

47.よわいものいじめ?




 ・前回のあらすじです。

あかねが、カリオストロを手ひどく痛めつける』






「こんな…………っ。よわいものいじめですわ!」


「どのくちがほざくんだよ。それに、弱いほうが『わるい』んでしょ? そして、『あく』は、打ち滅ぼされるべきだって、クラリスが言ったんじゃん」


「ですが……。それは、わたくしの哲学であって、賢者けんじゃさまのものでは――」


「だから――――、」(あかね)は杖の先に、火のたまを生む。


 加減はしてるんだろうけどな。と、和泉(いずみ)彼女かのじょの持つ、制御用杖(せいぎょようつえ)る。だが、相手あいては生徒で、茜は【賢者(けんじゃ)】。いくら最高の魔術教育まじゅつきょういくを課す【学院】であっても、クラリスは魔術師まじゅつし見習みならいにすぎない。最高実力者(じつりょくしゃ)たる【賢者】との間には、歴然(れきぜん)とした、がある。


 茜の作った火の球は、カリオストロが再びきずいた魔力(まりょく)防壁ぼうへきを、あっさりと溶かした。頭上ずじょうからちる火の(かたまり)に、カリオストロは、ただ悲鳴ひめいをあげてのたうちまわる。


(わざとだな)


 魔法まほうの壁をつくる時間をあたえているのは、和泉から見て明瞭(めいりょう)だった。黒焦くろこげになって地面じめんすカリオストロ。もう立ちがる気力(きりょく)かない彼女を、茜はそのから、動かずに見下みおろす。


「――自分でかかげた哲学(正義)で死ねるなら、本望(ほんもう)でしょ、ってはなし


 かろうじてカリオストロは、自分のかおを持ちあげた。熱波ねっぱにさらされ、黒茶くろちゃけた表情ひょうじょうは、ただただ(おび)える、しょう動物のそれ。金色の(はし)には、なみだまで浮いている。


 茜はさらにい打ちをかけようと、杖をかかげた。ぱしっ!


 和泉(いずみ)(なまり)の杖の柄をつかむ。このまま殺してしまうのではないかと、不安ふあんになったのだ。


(あかね)。人殺しはまずい」


安心あんしんしなよ、和泉。ちゃんと加減してるし。『殺すな』ってのは、おねえちゃんに再三(さいさん)言われてるんだからさ」


 和泉の肩からちからがけた。茜がちゃんと加減をしていることに安心したのではない。あねである史貴(しき) (あおい)の言いつけをまもろうとしているのが、うれしかったのだ。二人(ふたり)には、色々あったから。


「ちゃんと葵さんの言うこと、聞いてくれてるんだな」


 茜はうつむいた。おこったかとおもって、凝視(ぎょうし)する。と、


「さあ?」と彼女かのじょは肩をすくめた。「()()があるからね。これでチャラにするつもりだけど」


 ガラ……。


 地面じめんからおとがする。がれた石壁のかけらが、タイルにねた。ると、カリオストロが立っている。お人形にんぎょうみたいなドレスも、つやのあったかみも。すすと焦げで、黒ずんでいた。


 カリオストロの前には、防御ぼうぎょ壁の光があった。半透明はんとうめいだが、それは影のなかで、(おぼろ)魔力光まりょくこうはなっている。おおきなブルー・ダイヤをめた首飾りが、カリオストロの胸元むなもとで、異様いよう光沢(こな)またたかせる。


「こ……。こうなったら、わたくしの全霊を賭けて――!!」


 カリオストロは、頭上ずじょうに首飾りをかかげた。両手りょうてに支え、持ちあげられた宝石ほうせきが、あやしく光る。


 ――ぴしっ!


 中央ちゅうおうのブルー・ダイヤが、不気味ぶきみおとをたてた。またたく間にクモののようなヒビがはいり、飛び散ったかけらが、魔力光を反射はんしゃして、美しいかがやきの(こな)を散らす。ぱきいんっ!


 首飾りは、砕け散った。カリオストロの手のなかで。


 くちをあんぐり開けて、少女しょうじょが金色の見開みひらく。アクセサリーを構成していた宝石、貴金属が、あめのごとく、少女の金のボブショートに降りそそいだ。


 和泉(いずみ)(あかね)のうしろから、カリオストロにこった事態をながめていた。目を白黒させて。


「ま、まさか?」


「首飾りが、限界をむかえたみたいだね」


「……。さっきの防御ぼうぎょ壁か。おまえのちからに耐えられなかったってか? ねらってやった……んだろうなあ。やっぱ」


「ふふーん」


 茜はブラウスのむねをそらせた。和泉に、ピース・サインを振る。無防備むぼうびになったカリオストロに、制御用せいぎょようの杖の先端をける。カリオストロは、完全にい詰められたネズミの眼差まなざしで、【賢者けんじゃ】をていた。


「ってわけで、残念ざんねんだったね。クラリス」


「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ――!」


 ――白い光の熱波ねっぱが吹きれる。トリスのまち小路(こみち)にふくれあがったそれは、カリオストロを吹き飛ばした。


 どかああああああん!! おもしろいように、金髪きんぱつ金目きんめ少女しょうじょの小さな身体が、空に打ちげられた。




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