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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第4幕 魔術師の誤算(ごさん)
43/59

43.片想(かたおも)い



   ・前回のあらすじです。

   『和泉いずみたちが、いろんなあいの形を知る』






 メイン・ストリートからはずれたほそみちを、白い陽差(ひざ)しが照らしている。和泉(いずみ)羽織はおった【黒い法衣(ほうえ)】にし暑さを感じながら――しかしはずすわけにもいかず――我慢がまんした。

 道の先、薄い影になった部分にいる、ドレスすがたの少女しょうじょに問う。

「じゃあ、オレのことを敵視したのも、師匠(ししょう)関連か? オレがブロッケン女史(じょし)の『弟子』だから?」

「そうですわ」

「けど、ウォーリックは? あいつは弟子じゃないぞ」

「ああ、そいつ、おれの隣りのクラスのマザコンやろ。おれ、学校とか研究室けんきゅうしつとか……。なんならリョーコちゃんの部屋へやで、ふたりでおるのんたことある」

「まじか」

「うん。あの人けっこーかおひろいで。しょっちゅう誰かとはなししとる」


 ちょいちょい。

 と和泉は永城(ながしろ)ゆびでまねいた。と言っても、相手あいてよこにいるのだから、さほどの移動はないのだが。

 永城は和泉いずみみみをよせる。そこにヒソヒソと和泉は言った。

「これ、ブロッケン女史じょしつれてくりゃあ、クラリスもおとなしくなるって寸法(すんぽう)じゃないか」

「うーん。それ、無理むり

「やってみないと分からないだろ。オレじゃ駄目だめでも、女史の言うことなら聞きそうなもんだ。なんなら、女史に『(あたま)ぽんぽん』してなだめてもらったらちつきそうだ」

いぬねこやないんやから……」

 りょうの手の平を上にけて、永城はかぶりを振るう。

「そーやなくてね、センセー。リョーコちゃんは【学院(がくいん)】から外()たくないの」

「そうなのか?」


 和泉はサングラスの向こうで、義眼のはまった両目りょうめを丸くした。

 和泉の印象いんしょうでは、ブロッケン女史というのは、『インドア』というより『アウトドア』だ。

 【学院】という、特定の施設にしばられるのを(この)まず、すきあらば外に飛びだしていってしまいそうな――。

むかしはな。でも、あきたんやて。おれも何回なんかいか誘ってみたけど、『いやや』ってゴネてたわ。(きわ)めつけに言われたんがさあ、」

「うん?」

「『私が【学院】から出ると、世界がほろぶのよ!!』って」

「なんでそんなえすいたウソつくかなあ。あの人は……」

「そんぐらいいややってことやろ。せやから、やるんやったらあそこの(じょう)ちゃんのほうをつれてくかやな」


 のまえで()わされる内緒話(ないしょばなし)に、カリオストロはむすっと腕組みをした。

「ふたりしてなにをさっきからボショボショやってるのです?」

「ははは……」

 と和泉いずみはおべっか(わら)いでごまかす。

「なあ、クラリス。じゃあその――ブロッケン女史じょしわせてやるから、オレたちと一緒(いっしょ)に来ないか?」

「ふんっ! その手にはのりませんわよ。和泉(いずみ)先生」

 カリオストロは、和泉と永城(ながしろ)両手りょうてを突き出した。

 彼女かのじょの全身から魔力(まりょく)があふれ、【首飾り】の宝石(ほうせき)が、それを強化きょうかする――。

「わたくしの怒りの鉄槌(てっつい)、受けてあそばせ!」


 カリオストロの手のなかに、幾条(いくじょう)もの光が収斂(しゅうれん)した。

 『毛糸玉けいとだま』のようになった金色の熱塊(ねっかい)が、外縁部(がいえんぶ)にプロミネンスのごとき火花ひばなを散らす。

「なあーっ!? って! いまのなし! じゃあ、せめておまえがウォーリックを敵視するワケをおしえてくれよ! 永城のはなしじゃあ、師匠ししょうはほかにもいろんな人と一緒にいるみたいだぜ? でも、その人たちのことは、そんなに気にならないんだろ?」

「ふん。まあ、彼女に対しては、すでにお話ししたとおり、幼少ようしょうからの私怨(しえん)というのはもちろんです。が、最もゆるせなかったのは、わたくしが数えで十才の時――」

 カリオストロは魔術(まじゅつ)を引っこめた。

 ねつ急速きゅうそくめた小さな手をにぎりしめて、打ち震える。


「わたくし、お呼ばれしませんでしたの」

「なにに?」

「リョーコさまの『バースデー・パーティー』ですわ。ウォーリックはばれましたのに」

「うわ、だっさ! ハブられとる! だっさ!!」

「頼むから火にあぶらをそそぐような言動はつつしんでくれー!」

 カリオストロをゆび差して爆笑ばくしょうする永城を叱咤(しった)したが、遅い。

 カリオストロの手に再び金色(こんじき)熱塊ねっかいが生まれ、今度こそ標的(ひょうてき)を撃った。

 轟音(ごうおん)があがる。

 建物たてものもろともみちが吹き飛ぶ。

 そこに立っていた永城が、悲鳴ひめいだけをのこして空に消える。


「ああ……」

 空のかなたにとおざかっていく『弟子』のすがたに、和泉(いずみ)は自分の白い頭を片手でかかえた。

 カリオストロは「フッ」とかおをそらす。

 『薄幸(はっこう)美少女びしょうじょ』みたいな、哀愁(あいしゅう)をただよわせて。

「こんなにお(した)い申して……。かよっていた学校から【学院】に転籍(てんせき)してまでい駆けていますのに。あのかたは、なにも言ってくださらないのですわ」

「まあ、師匠は『自分(じぶん)以外にきょーみない』って人だからな」

 和泉はなぐさめるつもりでカリオストロに言った。

 形は違えど、おなじ『片想(かたおも)い』同士。気の毒になってくる。




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