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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第4幕 魔術師の誤算(ごさん)
42/59

42.あやしー



   ・前回のあらすじです。

   『カリオストロが、和泉いずみたちにきな人の名前なまえをおしえる』






 和泉(いずみ)ほおを、あせが流れる。

 (なつ)の暑さとは無関係むかんけいの、背筋につめたさのはしる汗だった。

 きあがった永城(ながしろ)横目よこめにしつつ、和泉は彼に言う。


「オレの知ってる【ブロッケン】っつったら、おんなの人しかおもい浮かばないぞ」

「奇遇やな。おれもや」

 永城はモップの()にもたれかかって、自分の身体を支えた。

 ケホッと彼は()げたくちから黒いけむりをく。

「ええ。ですから、『リョーコ・(エー)・ブロッケン女史じょし』のことですわ」

 カリオストロが、自分のほっぺをはずかしそうに両手りょうてにはさみながら(がえん)んずる。

 まち小路(こみち)にいる三人のあいだに、季節はずれの寒い風が吹きぬける。

 和泉はしばし、フリーズした。


(はっ。いかん、意識が飛んでた)

 ――どう返したものか。

 和泉(いずみ)が悩んでいると、永城(ながしろ)があきれ声を出した。

(おんな)すきになろーが(おとこ)すきになろーが自由じゆうやけどさあ」

(タフだな。こいつ……)

 弟子のこだわらない姿勢に、和泉は奇妙きみょうな感心を抱いた。

 永城は金髪きんぱつ金目きんめ少女しょうじょ忠告ちゅうこくする。

「あんなしょーもないの好きになんのだけは、やめといたほうがええで」


 【リョーコ・A・ブロッケン】は和泉の『師匠(ししょう)』にあたる。それ以上いじょうに、和泉がヘコんでいたころにいろいろと世話になった人だった。なので「しょーもないやつ」よばわりされて、和泉は内心ないしんおだやかじゃない。永城に、ひかえめに半眼はんがんをむける。

「なんだ。永城オレの師匠と知りあいなのか」

初等部しょとうぶでクラスいっしょやってん。マブダチやで」

「ふーん」

「あなたのような畜生ちくしょうが、リョーコさまと親しいわけがないでしょう!」

「けったいなやっちゃなー」

 カリオストロが、前方ぜんぽうから白い指先ゆびさき永城(ながしろ)に突きつける。

 永城はさほど少女を相手あいてにせず、和泉(いずみ)耳打みみうちした。


「せやけどセンセー。リョーコちゃんのこときや言うなら、この子が(あおい)ちゃんぶっ飛ばしたってのもなっとくやな」

「なんで?」

「あのふたり、しょっちゅう一緒いっしょにおるやん。あやしーよなあ」

「そーかあ? オレ、あんま一緒のとこたことないな」

 学院長がくいんちょう史貴(しき) 葵や、【魔術(まじゅつ)研究者(けんきゅうしゃ)】のブロッケンと、は和泉も【学院(がくいん)】の廊下や庭園、図書館としょかんなどですれちがう機会がある。けれどいずれの場合ばあいも、和泉が知る限りで、彼女かのじょたちはひとりか、彼女たち所有しょゆうの【使(つか)()】といるところしか見たことがない。

 永城が、不服そうに右手みぎてを拳にして振るう。

「おるって。学生のときなんかもう毎日まいにちやで。部屋へやもおんなじやったし」

「いかがわしいですわー!!」

「ただの『ルーム・メイト』ってだけだろ」


 ボブショートの金髪きんぱつを振りみだしてわめくカリオストロに、和泉(いずみ)は「なに想像してんだ」と指摘した。

 カリオストロはひるまない。

「『ただのルーム・メイト』というだけで、何年なんねんも同室なものですか! わたくしだって、いちどはリョーコさまと同じ部屋になったのです。けど、一年(いちねん)とたたずに半殺はんごろしにされてい出されましたわ!」

「どーせおまえが何かしたんだろ」

「スキンシップを少々(しょうしょう)」

 『しおこしょう少々』のニュアンスで、カリオストロ。

 永城(ながしろ)が和泉のよこから、彼女かのじょにぼうぜんと訊き返す。

「てか、よおそんな暴力大魔神(ぼうりょくだいまじん)すきでいられるな」

「ふふん。『(あい)』に痛みはつきものなのですわ」

「いまどき物議をかもしそうな主張しゅちょうだな……」

 めげない少女に、和泉(いずみ)頭痛ずつうがした。




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