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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第4幕 魔術師の誤算(ごさん)
41/59

41.【キーワード】、どうすっかなあ・・・。



   ・前回のあらすじです。

   『和泉いずみたちが、カリオストロの被害者ひがいしゃきつかれる』








 空は日が傾きはじめていた。それでも(なつ)特有とくゆうの白々しさに燃えている。

 和泉(いずみ)永城(ながしろ)と共に、カリオストロのもとへ駆けつけた。

 【オクノ小路(こみち)】にいた金髪きんぱつ少女しょうじょが、彼らに気づく。

「そこまでだ! クラリス!」

「あーら。これはこれは、和泉せ・ん・せ♡」

「うう……。おまえなんぞに『ハートマーク』つけてもらったところで、ぜんぜん嬉しくないわい」

「もらえる時にもろとくもんやで、センセー」

 カリオストロは、和泉につづいて自分のまえであしを止めた青年せいねんを留めた。

「あら? そちらのかたは……。(すけ)()かしら」

「そうだ! 聞け、クラリス」

 びしっ!

 ゆび差され、カリオストロは怪訝(けげん)かおをする。和泉(いずみ)が彼をつれて来て、何をしたいのかが分からない。


「こいつがおまえの『秘かなおも(びと)』だろ。こいつのいのちが惜しければ、いますぐ、町人(まちびと)へのめいわく行為をやめるんだ!」

「はあ?」

 たまりかねて、カリオストロは()のぬけた声をあげた。

 ――想い人? そこの、のっぽで茶髪ちゃぱつの、ちゃらんぽらんそーなおとこが? この、わたくしの?


「せんせー。おれ人質なるなんて聞いてへんで」

「命うんぬんはジョークだ。まあ、(まか)せとけよ」

「つーか相手あいても『なに言うとんねんコイツ?』みたいなかおしてるけど」

 永城(ながしろ)にうながされて、和泉はカリオストロの表情ひょうじょうを見た。たしかに、ぽかんとしている。

 和泉は(せき)ばらいした。

「クラリス。おまえはオレが、この永城を『弟子』にしちまったのが気に()らないんだろ。史貴(しき)学長がくちょうを吹っ飛ばしたのもそうだ。この永城が、学長のことをきなのに嫉妬(しっと)して、おまえは学長に、狼藉(ろうぜき)をはたらいた」

「は?」

「え。ちょっと待って」

 永城が和泉(いずみ)につめる。

 身長(たっぱ)があるせいか、無表情むひょうじょうになった永城が近くから見下みおろすありさまは、言いようのない威圧感(いあつかん)をともなう。

(あおい)ちゃんが、ぶっとばされたん?」

(やべっ)

「このガキに?」


 和泉はとっさに自分のくちに手をやった。葵がカリオストロの保護ほご失敗しっぱいし、ダルク共々こてんぱんにされたのは、言いふらしていいものではない。

 永城(ながしろ)が和泉をしのける。

 ばきごき。

 片手のゆびを鳴らして、カリオストロのまえに出る。

「おいそれホンマやったらこのガキ(ゆる)さんぞ」

 右手みぎてに持ったままだったモップを、永城はカリオストロに突きつけた。

 木の()の先を、カリオストロの黄金おうごんひとみが、()()をしてつめる。なお、モップは『杖』とちがって魔術(まじゅつ)的な加工がないため、魔力(まりょく)を【増幅】、または【制限】する効果はない。


「よおもおれの未来みらい(よめ)さん(妄想(もうそう))をコケにしてくれたな」

「よ、よせ、永城」

 永城はすでに構成をはじめていた。

 和泉(いずみ)が止めに入ろうとするも、【魔力まりょく】はすでに()りあがって、破壊はかい現象げんしょうを、呪文と共に(つむ)ぐ。

()を渡る 栗鼠(りす)虚言(きょげん)!」

 きゅうううううん!

 突き出した永城(ながしろ)両手りょうてから、魔力まりょく波紋はもんがほとばしる。

 前方ぜんぽう放出ほうしゅつされた『なみ』を受けて、小路(こみち)を造っていた家々がゆがんだ。

 空間に()まれた【重力球(じゅうりょくきゅう)】が、せまい(とお)りを圧縮あっしゅくする。


 一定(いってい)区域を、重力の【ひずみ】によって圧壊(あっかい)する魔術まじゅつだ。

 さいわい永城のはなったそれは「半端はんぱもの」で、相手あいて粒子(りゅうし)レベルにまで握り潰すちからはなかった。

 ――がああああああん!

 圧縮によって高温こうおん(いき)に達した空気が爆砕(ばくさい)する。

 熱波ねっぱが吹きれ、かたむいた家屋かおくの外壁を()がしていく。

 和泉(いずみ)は腕で自分のあたまをかばい、降りそそぐ砂礫(されき)をしのいだ。

「【重力じゅうりょく系】か! 地味じみにいやな攻撃しやがって」


 永城に(いきどお)りながら、和泉は相手あいてを確認した。

 砂煙(すなけむり)が拡散する。

 破壊はかい中心ちゅうしん――【重力球】のそばにいた少女しょうじょが、無傷むきずで立っている。

 彼女の胸元むなもとで、『呪いの石(ブルーダイヤ)』の首飾りが、艶然(えんぜん)と輝いている。


正当防衛(せいとうぼうえい)、成立ですわねえ!!」

「あああああー! そっちもちょっとて!」

 カリオストロは、両手りょうてをのっぽのおとこけていた。呪文(じゅもん)はないが、首飾りの魔力まりょく彼女かのじょのちからを底上(そこあ)げし、業火を解きはなつ。

「なんっ――」

 永城(ながしろ)が声をあげた。

 同時に、彼の足元あしもと(あか)螺旋らせんが生まれる。

 灼熱(しゃくねつ)の『(うず)』が、天に向かって突きあげる。

 永城を、(くれない)(はら)に呑みこんで、天空へと駆けのぼる。

「んぎゃあああああああ!」

(言わんこっちゃない)


 ――ぼとっ。

 火がおさまり、永城がちてくる。

 ぷすぷす。

 弟子の青年せいねんは、全身をまっ黒に()がして(みち)にのびた。(だい)の字になって、白目しろめ()いている。

 そんな弟子をおろして、和泉(いずみ)あたまをかかえた。

「まったく。ふらちな(やから)ですこと」

 カリオストロは両手りょうてをぽんぽんとはたいて、吐息(といき)する。

「おまえ……。きな(やつ)にも容赦(ようしゃ)ないのな」

「は?」

 はと豆鉄砲(まめでっぽう)くらったみたいに、カリオストロのがまるくなる。

「いや。だからさ……。この永城(ながしろ)のこと――」

「だれですの? それ?」

「え?」

「見たこともない人ですわ」

「なにっ?」

「先生のお弟子さん、とのことですが……」

「はああー!?」


 和泉はあんぐりとくちを()けた。

「じゃあおまえ誰のこと言ってんだよ!」

「これ以上いじょう、わたくしに不名誉(ふめいよ)相手あいてをあてがわれるのも不本意ふほんいなので……。仕方ありませんわね。お(おし)えしましょう」

 ぽっ。

 カリオストロは、ほっぺをあかくした。かわいらしく、拳をかおにあてて。


「誰あろう、【リョーコ・(エー)・ブロッケン】さまのことですわ♡」


 …………。

 和泉(いずみ)は固まった。

 永城(ながしろ)が、よろよろときあがる。







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