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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第4幕 魔術師の誤算(ごさん)
40/59

40.したじき




   ・前回のあらすじです。

   『まちで再会した男女だんじょが、【魔術師まじゅつし】の少女しょうじょに、爆撃ばくげきされる』


(※視点が、和泉いずみ(主人公)に、もどります。)






   〇



 すとん。

 和泉(いずみ)は【トリス】のまちの路地に降りた。うしろでは、永城(ながしろ)も道路をみ、モップの後部に乗せていたチャコを下ろす。

「では、私は主人しゅじんのところへ急ぎますので」

 チャコは一礼(いちれい)してきびすを返した。『職人しょくにん街』のほうへ行く。

「何処おるかわかんの?」

 永城(ながしろ)はチャコの背中せなかに言った。チャコは振り返らずに答える。

(つえ)の専門店ですわ。『フルカネリ』っていう」

「はーん。おれ知らんとこや」

「小さいみせだよ。初心者用(しょしんしゃよう)から、玄人くろうと用までそろってる。『学生割引き』してくれるしな」

 和泉が説明せつめいして、とおりをすすもうとした。チャコはもうみちれてえなくなっている。

 永城が和泉(いずみ)についていく。モップを杖みたいに持って。


「ほんで? おれはどこ行ったらええん?」

「『クラリス』ってやつんとこ」

「クラリス?」

「知らないか?」

「誰やねん」

「……。ったことくらい、あるんじゃないか?」

「しらーん」


 住人じゅうにんのまばらな通りをあるきながら、ふたりははなした。

 和泉(いずみ)は、クラリス――カリオストロが、永城(ながしろ)に好意を持っていると勝手に考えていた。だからカリオストロに犯行はんこうをやめさせる説得のために、彼をつれて来たのだが。

(クラリスが一方的(いっぽうてき)に、こいつのことを知ってるだけなのかな?)

 おもいながら行く。

 どおおおおお!

 爆音ばくおんがした。

 近所きんじょの地区だ。

 何度なんど轟音ごうおんと、地響きがする。

 ひゅーん。と、空からなにかが降ってくる。


「あ。人や」

 永城が言った。

 ――べしゃっ!

 和泉(いずみ)のまえに、人がちた。タイルりの舗装路(ほそうろ)に、潰れた()()()みたいにへばりついている。

おんなの人だ。大丈夫だいじょうぶですか?」

 若い女性じょせいだった。二十にじゅう代の前半くらい。ながい栗色のかみに、トリスの女性がよくにつけているワンピース・ドレスを着ている。全身は焦げていて、かおも「ミディアム」くらいにけていた。さっきの爆発ばくはつで飛ばされてきたのだろう。


「う……。うう……」

「あ、生きとるわ」

 うめき声に、永城(ながしろ)が女性をのぞきこみながら応えた。

「せんせー【回復魔法(まほう)】かけたったら?」

「うん。おまえは担架(たんか)手配てはいしてくれよ」

「わかった。ほな、行ってくるわ」

 弟子を見送みおくって、和泉(いずみ)は女性のそばにひざをついた。手をかざして呪文じゅもんとなえる。

「ほころびを(つむ)ぐ、医神の(はふり)

 女性の身体からやけどが引いた。服のやぶれや、燃えあとも消える。だが彼女かのじょは気絶したままだった。

 とおりの向こうから、担架を持ったふたり組みが来る。【自衛団(じえいだん)】のおとこたちだ。


「へいへーい。自衛団ですよー」

今日きょうの怪我人はなんじゃらほい」

「このあんまりかわいくないお(ねえ)ちゃんや」

「おまえってやつは……」

 ちてきた女性じょせいのへちゃむくれなかおゆび差して、永城(ながしろ)

 弟子の言いかたに、和泉(いずみ)は「こらっ!」と半眼はんがんを向ける。

 団員のひとり――担架の前方ぜんぽうをかついでいるほうの若者が、「ん?」と、片手で制帽せいぼうを上げる。


「こいつは……。ジュリーじゃないか」

「なんだ、小太郎(こたろう)。おまえの恋人か?」

 団員同士でしゃべりあう。「小太郎」とばれた若い団員が、

「友達だよ。小学校しょうがっこうのころの。卒業そつぎょうしてからは、ぜんぜんえてないけどな」

「ほーん」

 言いながら団員たちは女性――『ジュリー』と言うらしい――を、てきぱき白いぬのの上にのせた。それから、

「えっほ。えっほ」

「ほいほーい。怪我人のおとおりだよー」


 来た時とおなじように、駆けあしで去っていく。都市内としない病院びょういんにつれていくのだ。

「『同窓会』とかいんかいな」

「さあな」

 それより急ごう。

 と、和泉(いずみ)女性じょせいの飛んできた方角ほうがくはしりだした。辿たどっていけば、爆発ばくはつこした【魔術師まじゅつし】――カリオストロにえるはずだ。


「ぐおっ!」

 どすんっ。

 また人がちてきた。今度はおとこだ。むきむきのマッチョで、巨体きょたい。ちょうど落下地点に来てしまった和泉を下敷きにして、彼は仰向あおむけに激突する。

今日きょうはやったら人が降ってくる日やなー。天気予報てんきよほうには『れ』としか書いてなかったのにな」

「しょーもないこと言ってねーで、たすけてくれよ」

 両手りょうての拳を地面じめんに打ちつけて、和泉はきあがろうともがいた。男の体重たいじゅうは一〇〇キロは(ゆう)にあるらしく、ひとりでは持ちあげられない。

「うんしょ、うんしょ」

 永城(ながしろ)が和泉の手を引っぱる。それでどうにか引きずり出せた。

「う……。ううん」

 男はをさました。

 和泉(いずみ)はしたたかに打ちつけた背中せなかをさすりながら、身を起こす。

 和泉の【黒法衣(くろほうえ)】をるなり、男はがばっと立ちあがった。


「その法衣は、【学院(がくいん)】の先生!?」

 ひざをついたまま、男は和泉にすがりつく。

たすけてください! なんか、変なのにおそわれたんです!!」

「あー……」

 和泉はまさに、その『変なの』と対峙(たいじ)するつもりだったので。

「わかっています。彼女かのじょ保護ほごするために来ました」

「せんせー……」

 永城が、小さく挙手(きょしゅ)して言う。

「ひょっとして、おれもその『変なの』んとこ行かなあかん感じ?」

「そのつもりだよ」

「えーっ」

「だーいじょうぶ。そんな(だい)それたことにはならんさ。たぶん」

「『やばい』っておもったら逃げるからな。おれ」


 永城(ながしろ)はふてくされて宣言した。和泉(いずみ)了解りょうかいして、クルー・カットの大男おおおとこきなおる。

「どこでその魔術師まじゅつし遭遇(そうぐう)したか、分かりますか?」

「【オクノ小路(こみち)】だ。『古本屋ふるほんや』とか『貸本屋かしほんや』が結構ある……」

「わかりました」

 最後に回復魔術(まじゅつ)おとこにかけて、和泉は近くの路地をれまがった。永城ながしろもつれていく。




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