表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第4幕 魔術師の誤算(ごさん)
39/59

39:女の子にせまる、わるっそーな男




   ・前回のあらすじです。

   『事件まえのはなし。クラリスが、あにたちから【首飾り】をもらう』


   (※視点がモブ・キャラクターに、うつります)







   〇




 ――彼女かのじょと再会したのは偶然だった。


「よお。ジュリー」

 まちの小さなストリートだ。古い喫茶店や、貸本屋(かしほんや)の並ぶ区画。

 馬車(ばしゃ)(とお)るだけの広さもない、「小路(こみち)」と呼ぶような(とお)りだ。

 彼女――『ジュリー』は、最初(さいしょ)、おれだと分からなかったらしい。声をかけても、怪訝けげん(かお)をしていた。

 無理もない。

 おれとジュリーは、小学校(しょうがっこう)卒業(そつぎょう)以来、なんの交流(こうりゅう)もなかったのだから。


 それに、十二(じゅうに)才までのおれはヒョロヒョロで、やせっぽっちで、ぼうず(あたま)だった。けれど(いま)は、身長(しんちょう)()メートル少し超えるまでにのびて、全身ムキムキ。『軍人』でもやってると言えば、誰でも信じそうな体格に、おあつらえ向きのような、クルー・カット。

 ジュリーは性質の悪いナンパに()ったみたいにおびえていた。


 でも、安心あんしんしてほしい。彼女かのじょのような女性じょせいは、どんなおとこだって声をかけたりはしないだろう。ため的に。

 ――なんて言ったら、彼女お得意の【風魔術(かぜまじゅつ)】でバラバラにされそうだから、おれはくちには出さなかった。

 ただ必死に、かつての『同級生どうきゅうせい』であることを主張しゅちょうした。懐かしかったから。


「おれだよ、ロミオ。小学生しょうがくせいん時、よく遊んだろ?」

「え……。えー!?」

「いやー。久しぶりだなあ」

 じっ、とジュリーはおれを凝視(ぎょうし)して、それからやっと、表情(ひょうじょう)を変えてくれた。

「あ、あ、あんたロミオ? ロミオ・グースタフ!?」

 びっくりしたひょうしにとしそうになった、パンの紙袋かみぶくろを、ジュリーは抱えなおす。お菓子も入っているから、きっと今日きょうのおやつにと買ってきたんだろう。

「でもロミオ。あんたほそかったじゃない! めちゃくちゃ!」

「鍛えたんだよ! おれ中学ちゅうがくは【ロジャース】のほうに行っててさ」

「あの、港町(みなとまち)の?」

「そう。そこの倶楽部(くらぶ)で、ボクシングやってたんだ。強かったんだぜ」

「ふーん。あんたがねー。立派りっぱになるもんなのね」


 感心したふうにおれをまじまじて、ジュリーが言った。

「いつ帰ってきたのよ。ずっとこっちではたらいてたの?」

「いや。このまえ大学卒業(そつぎょう)して、きのう、帰ってきたんだ。来期から初勤務(はつきんむ)。この【トリス】で」

「そうなの? なにするの? 【自衛団(じえいだん)】?」

保育士(ほいくし)だよ」

「その()()で?」

「いいだろべつに」

 ()ばかにするようなジュリーのつぶやきに、おれは苦笑くしょうした。

 ジュリーとおなじようなことをいう人はいる。ぶっちゃけ、もう言われ慣れていた。


「それより、せっかくだし、何処かでおちゃでもどうかな。ほかのやつら、どうしてる? ラッセルとか小太郎(こたろう)とか……。なんなら、みんなでもうぜ」

「わるいけど、パス」

「なんでだよ?」

「そいつらとは、もう疎遠(そえん)になっちゃってるし。わたしも帰ってすこししたら、出勤しゅっきんだし。パート・タイムだけど」

「ええーっ。いいじゃないか! 少しくらい」

「ダメだって。チーフが時間にきびしくて――」

 ――ごおっ!

 突風とっぷうが吹きあれた。おれはもろに風圧ふうあつを受け、弾き飛ばされる。

 ジュリーがやったんじゃない。『優等生ゆうとうせい』ではあった彼女かのじょだが、あくまで、「テストで百点ひゃくてんが取れる」レベル。『呪文じゅもんなし』で【魔術まじゅつ】を使うなんてことはおろか、ここまでの威力(いりょく)を出すなんてことはできなかった。

 というか、彼女も吹っ飛ばされてるし。


「ジュリー!!」

 買いものの(しな)とともに地面じめんに転がる彼女におれは駆けった。

 駆け寄ろうとした。

 どおおんっ!

 またも魔術がひらめく。

 閃光がはじけ、高熱こうねつ波動はどう()ぜる。

 爆発ばくはつは、おれを建物たてものの外壁もろとも空中くうちゅうにほうり出した。おれよりかるいジュリーは――さらに高く、放り上げられていた。

 爆風ばくふうにさらわれて、ジュリーはどこかのストリートに飛んでいく。すこし黒い、煙の()を引いて。

「ジュリー!」

 おれはすべなく、空に消えていくかつての同級生に()えた。

「ち、ちくしょう! 誰がこんな、ひどいこと――」


「おーほほほほ!」

 高笑(たかわら)いが聞こえた。

 ――そう言えば、最近このへんに、頭のへんな「爆発(きょう)」が現われるとまちの人たちがはなしていた。

 もしや、この声の(ぬし)こそが、ウワサに聞く「サイコ野郎やろう」――。


「イヤがる婦女子ふじょしをちからづくでかどわかそうとするなど、見下(みさ)()てたものですわね! そこの破廉恥(はれんち)野郎! 覚悟なさい!」

 気がつけば、路地にはひとりの少女しょうじょが立っていた。金髪きんぱつに、金色のの、割りとかわいらしい小柄(こがら)おんなの子。ひらひらドレスに子供じみたかおだちは、パッと見た感じ人畜無害(じんちくむがい)そうだが、おれの本能ほんのうが告げていた。

 こいつは「やばい」と。


「ちょっ、ちょっと、ってくれ!」

「いやですわ」

「おれとジュリー……。さっきの女性じょせいは知りあいで、」

「そんな見えすいたウソが通用つうようするとおおもいですか!?」

「ほんとなんだ! 信じてくれよ!」

「いやですわ!!」

「なんでだよ!?」

「かよわい女性にむりやりせまる、そのいかがわしい性根(しょうね)……。ここでわたくしが、叩きなおして差しあげます!」

「ちがうんだああああ!!」


 さけんだが、少女は聞くみみもたなかった。

 彼女かのじょの手のひらに、魔術まじゅつの光がまたたく。

 どおおおおおおおっ!

 轟音(ごうおん)った。破壊はかい光線が炸裂(さくれつ)したのだ。


 ――直後ちょくご

 おれの意識は、途切とぎれた……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ