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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第3幕 ホープ・ダイヤ
37/59

37.にけつ






   ・前回のあらすじです。

   『チャコが和泉いずみを殺そうとする』









「勝手に入ったのはわるかったけど……」

 和泉(いずみ)はチャコとシロのふたりに言った。「それにしたって凶器(きょうき)を投げるのはヒドイ」と(おも)いながら。

 チャコが(ゆか)を指差して、

「では今すぐ土下座してむせび()きながらびを入れてください」

「一日だけ待ってくれ」

 考える時間がほしい。

「いずれにしても、もの()りだったら今日はムリだよ。和泉」

 チャコの(よこ)から、シロが半眼(はんがん)を向けてくる。

「私らだって、()のまえの『犯罪(はんざい)』を見て見ぬフリしてやるほどお人好ひとよしじゃないんだから」

(くっ……)

 和泉は悔し気に目を閉じた。

反論(はんろん)できない!)


 和泉(いずみ)は、無断(むだん)(あかね)の家からものを持っていこうとしていた。「もの()り」と言われてもしかたないのだ。というか立派りっぱなもの盗りだ。

「てか、なんでチャコがいるんだよ」

 くちおしく、和泉は訊いた。いないと(おも)ったからこそ来たのに。

「ここは、()()()()()()()()()()()()()()()ですので」

「チャコがいるのは、自然でしょ」

 シロもあきれ顔になる。

「むしろ、家主(やぬし)のいないあいだに勝手に入ってくる、アンタがおかしいんだからね」

(くそー。シロまで……)

 和泉(いずみ)()がみした。

 なにかと世話を焼いてくれるシロに対して、彼はカンチガイをしていたのだ。彼女は自分の味方(みかた)だと。

 だが実際、シロは『あるじのお願い』で動いているだけ。フリーの時間では、基本的に誰かに肩入れすることはない。


「チャコが調べものしてるって、【病棟(びょうとう)】でダルク先生に聞いたんだ」

 和泉は弁解した。外で永城(ながしろ)が待ちぼうけているのを気にしながら。

「だからてっきり、【図書館(としょかん)(とう)】にこもってるのかと」

一度いちどは行きました」

 かつん。

 とフローリングに響く、チャコのパンプス。

「けど、めぼしい資料(しりょう)がなかったので、この【賢者邸(けんじゃてい)】にもどったのです」

「それでも進展なしだけどねー」

「なに調べてたんだよ」

「ホープ・ダイヤ」

 チャコが答えた。

巨大(きょだい)なブルーダイヤについてです」

「なにかわかったのか!?」

 和泉(いずみ)は食いついた。

「てか、どうして」

「茜さまのお(たっ)しで」

(あかね)が……)

 ()すじに寒いものを感じた。


「ひょっとして、【災厄(さいやく)の首飾り】をなんとかしようとしてる?」

「ええ」

「クラリス……。カリオストロをぶっ飛ばすため?」

「くち封じされていますので。お答えしかねます」

 和泉は聞く相手を変えた。主人(しゅじん)の言いつけとあれば、このメイドは、()()でも動かない。

「シロは、なにも聞いてないのか?」

「知っててもここでは言わないくらいの甲斐性(かいしょう)はあるつもりだよ」

(だめか)


 ちくたく。

 時計の秒針(びょうしん)が進む。

 和泉(いずみ)は時刻を確かめた。昼の『二時(にじ)』を過ぎている。

「手掛りはとぼしいですが、」

 チャコも掛け時計を見上げた。彼女はエプロンのポケットにたたんで入れていたメモを横目(よこめ)にする。

「そろそろもどらないと。ご主人さまに、愛想尽あいそつかされてしまいますね」

「あっちもあっちで、準備(じゅんび)あるんでしょ?」

 シロが気楽に言った。

「買いものしてるんだっけ」

「『(つえ)』をね。制御用(せいぎょよう)の」

 『制御用』と聞いて、和泉は首をひねった。

 魔力(まりょく)を制御する杖は、学生たちが魔術(まじゅつ)練習(れんしゅう)をしたり、授業(じゅぎょう)での『模擬(もぎ)戦闘』で利用(りよう)する。

 訓練以外の使いどころなど、(おも)いつかないのだが。

(首かざりの威力(いりょく)中和(ちゅうわ)するのかな)

 できるかどうかは不明(ふめい)だが、発想(はっそう)としてはありか。と、和泉(いずみ)はひとり納得なっとくした。


「散らかした分を片付けといて」

 チャコがシロに指示を出す。

「時間も時間だし、私は一度、【トリス】にもどるわ」

「あんた徒歩(とほ)で帰ってきたもんね」

「徒歩じゃないわ」

「あれ? そうだっけ?」

全力(ぜんりょく)疾走よ」

「………………」

 シロは、チャコから和泉に視線を変えた。

「また(はし)って行くの大変だと思うからさー、」

 隣りのメイドを(おや)指で差す。

和泉(いずみ)、つれてってやってよ」

 和泉はうけたまわるつもりだったが、

「こんなふぬけた魔術師(まじゅつし)のちからを借りるくらいなら、走りすぎで天にされたほうがマシです」

(さんっざんな言われようだな……)

「でも、」とシロがチャコをあしらう。「早く連絡できたほうがいいんでしょ?」

「……まあ。ね」

「せんせー、遅すぎひん?」


 研究室(けんきゅうしつ)(まど)から、もうひとりの(おとこ)が顔を出す。

 【飛行の魔術(まじゅつ)】をつかって、永城(ながしろ)がなかのようすを見に来たのだ。

 渡りに(ふね)。とシロが永城をあごでしゃくる。

「チャコ、和泉(いずみ)じゃなきゃ良いんだよね?」

「……。くわえて、飛行能力(のうりょく)に問題がなければ」

 チャコは妥協(だきょう)した。

 和泉が弟子に、ふたりでの飛行ができるかの確認を取る。

 複数人(ふくすうにん)の飛行をひとりがになう時は、自分以外の者にも【(かぜ)魔術(まじゅつ)】を付与(ふよ)する。そのため、単純(たんじゅん)計算で、人数分(にんずうぶん)だけ負担が倍加(ばいか)する。

 永城は「バランスがとれたら」と条件(じょうけん)をつけた。質量(しつりょう)としては増加することになるが、重心(じゅうしん)の取りやすさから、「のりもの」の使用(しよう)を求めたのだ。

「シロ。『ほうき』とか『杖』とか、人がふたり乗れるような、長いものくれ」

「これでえーんちゃうん?」

 (まど)にしがみついたまま、外から永城(ながしろ)が、『長いもの』をかかげる。先ほど落っこちてきた、薪割まきわ(よう)おのだ。

「危ないからそれは置いていこうか」

 もはや小さい子をさとす気持ちになって、和泉(いずみ)は永城から斧を取りあげた。研究(けんきゅう)室の(ゆか)に横たえる。


「掃除で使ってるモップでいいよね?」

「ああ。ありがとう」

 シロが持ってきたモップを和泉はつかんだ。かわいていて、きれいなやつだ。窓の外にいる永城に手渡す。

「てか、【テレポート】でええんちゃうん? そっちのが早いで」

 チャコに永城(ながしろ)が言って、

失敗(しっぱい)した時が怖いので、却下です」

おまえ(じぶん)、変なとこでカワイイな」

 いったん研究室に入り込んで、永城はふたり乗りの準備(じゅんび)をした。

 モップの()にまたがって、うしろにチャコをうながす。チャコは横むきに(すわ)って、永城の腰に手をまわした。

「じゃあ、あとはよろしくね。シロ」

「はいはい。でも私、片付け終わったら出てくからね」

「ご勝手に」

 シロとチャコのやりとりを最後に、和泉(いずみ)永城(ながしろ)は【飛行の魔術(まじゅつ)】を展開した。

 【賢者(けんじゃ)】の家から、みっつの人影が飛んでいく。






             (『第3幕:ホープ・ダイヤ』おわり)





















       読んでいただき、ありがとうございました。










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