32.宿題、いやや。
・前回のあらすじです。
『和泉が【災厄の首飾り】についてしらべるため、【病棟】をぬけだす』
〇
和泉は【転移の術】を唱え、【宿舎】に飛んだ。
エントランスから男子棟に折れ、階段を駆けあがる。研究室を内蔵する、自分の部屋へと急ぐ。
「クロ!」
ばん!
扉を開けるなり、和泉は使い魔の少年を呼んだ。
「あ、せんせー」
「永城!?」
「やっと帰ってきたなー」
返事をしたのは、『弟子』の永城 壮馬だった。
【学院】には、担任の下で学ぶ『教室』と、それとはべつに、『認可』を受けた学内の【魔術師】に師事し、その監督のもと教育を受けられる、『師弟』というシステムがある。
この、『師弟』においては、学院長から「分相応」の判断を受けた魔術師であれば、師匠になるのに『位』や『年齢』は関係ない。講師でも、なんなら、生徒でもなれる。
教員を上まわるちからと知識を持つ魔術師は、【学院】内においては、めずらしくないのだから。
「なんでウチに?」
和泉は目のまえの男に訊いた。茶色に染めた短髪の、のっぽの青年に。
「夏やすみの宿題」
永城は、勝手に出したのであろうスツールから立ちあがった。手にした紙の束を、パンと叩いて。
「オレ、ぜんっぜんやってへんねん。せやから今、あっちこっち先生に頼んでまわって、免除してもろてんの」
「あほか! ちゃんとやれ!」
「失礼やな。やった分もあるよ」
「ああ……」和泉は痛む頭をかかえて言った。「じゃあ、まだマシなほうか」
「金出してな。代行してもろてん」
「やりなおせ!」
肩を怒らせて、ずんずん和泉は寄っていった。永城に、ずいっと指を突きつける。
「オレは認めんぞ! そんなもん!」
「えー?」
「てゆーか、クロは!?」
「しらん」
和泉は部屋を見まわした。
「オレが来たときから、おーへんかったで」
「……。まだ帰ってきてないのかな」
自分の使い魔を探しに、別の部屋へ行く。




