30.医療(いりょう)について
・前回のあらすじです。
『和泉が【病棟】で目覚める』
(今回は、ほぼ説明だけの回です)
――【魔術】の世界である【裏】には、大きく分けて、ふた通りの医療がある。
ひとつは、科学的な――近代以降に発展した、『細菌学』や『解剖学』に重点をおく、いわゆる『臨床医学』にもとづく治療である。
『投薬』や『手術』を主な治療行為とし、これの行使には【表】の日本と同様に、『医師免許』がいる。また、手術は『外科医』以外にはみとめられない。薬をあつかうにしても、『薬剤師資格』が必要である。
【裏】で単に『医者』または『医師』と言うとき、特別な場合をのぞいて、医師免許をもつ――いわゆる、『お医者さん』を差す。先ほどのガレノスは、『医者』である。
――もうひとつは、【魔術】による治癒行為である。【魔術師】が呪文を唱え、傷痕やかるい病毒を完治させるのがそれにあたる。また、【魔法薬】を用いて、ケガや病気を治すこともふくまれる。
これらは単に【医術】と呼ばれ、免許はいらない。その理屈は、魔法のない世界であるところの【表】流にいえば、『民間療法』をほどこすのに、専門的な資格がいらないというのに近い。
「いたいのいたいのとんでけ」や、「ネギを首にまく」などが有名だが、これらが無免でやっても問題がないのと同じように、【魔術】における治療は、法的に看過されている。
【表】の〈おまじない〉とはちがって、【魔法薬】にも【呪文】にも、たしかな効果があると認められているにもかかわらず、だ。
理由としては、【魔法薬】と料理の境目が、あいまいであること(あくまで【裏】の基準である)。呪文による治療は、影響の範囲がたかが知れており、また被験者に対する『リスク』も低く、試験をおこなうほどの専門知識や技術を必要としないなどが挙げられる。
逆に、科学的……。臨床的な医療は、治療できるカテゴリがひろい分、精密な検査や設備、それらを使いこなす『知識』。なにより『技術』が求められる。
ちょっとしたのどの痛みは『しょうがシロップ』で緩和できても、肺炎クラスになると『医薬品』に頼らざるを得ない。というのが、【裏】の医療の実情だ。
――大ケガも然り。




